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2024年、福岡でつけ麺人気が爆上がりのワケ

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舎楽 つけ麺

よく耳にするようになった“非豚骨”という言葉も示している通り、どんなに博多ラーメンのジャンルレス化が進もうと、比較基準となるのはやはりどっしりと鎮座する“豚骨ラーメン”。台頭する新勢力は時代と共に移り変わっていますが、常に「豚骨vs何々」という構図があるからこそ、福岡のラーメンシーンはよりおもしろいのだと思います。昨今のニューウェーブの中でも特に二郎系や横浜家系が強いのは間違いないですが、もう一つ。かつての人気が再燃し、見過ごせない存在となっているのが「つけ麺」です。
「2024年は福岡つけ麺復活の年だ!」。僕がここで声を大にして言う理由は、今年に入り「つけ麺 舎楽 博多本店」(西月隈)、「つけ麺 魚雷 天神店」(渡辺通)といったつけ麺推しの実力派が立て続けにオープンしたことが第一。そして、その他の新店もラーメンに次ぐ二番手メニューとしてつけ麺を掲げていたり、既存店も限定麺などでつけ麺を打ち出すところが増えてきたことも挙げられます。つまり、以前より圧倒的につけ麺にふれる機会、選べる味の種類も多くなってきたんですね。順に解説していきます。

「つけ麺 舎楽 博多本店」より提供

「博多一幸舎」の系列「つけ麺 舎楽 博多本店」は2024年1月にオープンしました。“一幸舎”“つけ麺”と聞くと、福岡つけ麺シーンの一時代を築いた「博多元助」を思い出すラーメンファンも多いのではないでしょうか。「博多元助」は2008年から2019年まで営業し、途中味わいの異なるさまざまな“元シリーズ”を展開するなど、福岡でつけ麺人気を広げたパイオニア的存在です。カウンターのみの小バコ、各席に備えたIHヒーターで締めに雑炊をセルフで作れるなど、元シリーズはどちらかというとコアなラーメンファンに向けたものでしたが、より間口を広く、気軽に楽しめるつけ麺を提案するのが「つけ麺 舎楽」です。西月隈のロードサイドに入りやすい駐車場を備え、広々とした店内にはボックス席も完備。つけ麺のジャンルは「元助」時代と同じ“豚骨魚介”ですが、老若男女、ファミリーにも多く利用してほしいという思いからライトな濃度に仕上げ、「製麺屋 慶史」謹製の麺も極太ではなく、啜りやすい中太に仕上げています(上、先方提供画像)。また、つけ麺以外のメニューも豊富にそろっているのも特徴です。

「つけ麺 魚雷 天神店」より提供

一方、2月にオープンした「つけ麺 魚雷 天神店」は熊本発祥。約13年の歴史のあるつけ麺専門店が満を持して福岡に進出しました。
渡辺通エリアの小道にあり、客の波が途切れない人気ぶり。麺は、同じく熊本の「富貴製麺」謹製、小麦「はるゆたか」を使った太麺を使用しています(上、先方提供画像)。スープのベースは濃厚豚骨魚介で、辛味が効いた「魚雷つけ麺」(上写真)はじめ、カレーソース付きの「つけ麺」で楽しむこともできます。さらに残ったスープを、ほぐし身チャーシュー、卵黄、魚粉がのった「魚雷めし」にかけて楽しむスタイルが好評です。

これら2つの新店のつけ麺のジャンルは、これまでの王道でもある“豚骨魚介”ですが、さらなる新味も続々とお目見えしています。

「中華そば ひかり」より提供

例えば「中華そば ひかり」(名島、2024年3月オープン)では、味変用の野菜おろしを別皿に添えた“醤油系のつけ麺”(上写真)、また「あんゆう亭」(箱崎、2023年12月オープン)では“塩系のつけ麺”を販売中(下写真)です。

「あんゆう亭」より提供

さらには「立ち呑みとラーメン れんげ」(天神、2024年1月オープン)では、スパイスを多用した「鶏白湯ハニーマスタードつけ麺」も用意(下写真)。ラーメンと同じくつけ麺も選べる幅が広がっています。

撮影:上村敏行

このように勢いがます福岡のつけ麺ですが、なぜに今人気がリバイバル? これは僕の意見ですが、特に先の“元シリーズ”が活躍した2008年から2019年の間(代表格の『博多元助』のオープンから閉店まで)に、福岡でつけ麺ファンは確実に増えていて、現に僕の周りでも、“元助ロス”的な人はたくさんいたという印象です。もちろん、2013年から輝きを放ち続ける「兼虎」の存在はあるのですが、ラーメンに比べて店の選択肢があまりに少なすぎるという状況が続いていました。そんな潜在的な“つけ麺難民”たちの存在を肌で感じていた作り手、経営側が改めてオンリーワンの味わいで勝負をかけてきたのが昨今。そして、福岡のラーメンが多様化してきた流れの中で、新しい麺メニューを積極的に試してみたいという食べ手の意識の変化も、つけ麺人気リバイバルの理由にあげられるでしょう。
また、作り手にとって「麺の自由度」が広がってきたことも大きいと思います。自家製麺であれ、地元の製麺所への特注麺であれ、関東の製麺所に頼らなくとも、自分好みのつけ麺用の麺を、事細かに表現しやすくなってきたことも背景にあると思います。

つけ麺専門店だけでなくラーメン店のメニューで“つけ麺”を見つけたら試してみてください。その店の“麺へのこだわり”をよりダイレクトに実感できるはずです。

上村敏行
1976年鹿児島市生まれ。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。ラーメンライターとしての活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介。

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