人生100年時代を謳歌するブルースマン! ワットさんの「音」と「場」が育む生涯現役の音楽活動
「定年後」について考えたことがありますか?様々な役割を求められる忙しい50代、日々に追われ、定年後のことを考える余裕などないかもしれません。しかし、人生100年時代と言われる現代、定年後の時間は新たな可能性に満ち溢れています。
そこで、50代から定年後の生き方を考える活動を「T活(ティーかつ。定年活動)」と名付けました。このコラムでは、SBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」と連動し、T活を通してユニークな定年後を謳歌している方々を紹介します。諸先輩方の生き方を知り、定年後の夢を膨らませてみませんか?
今回は、静岡市を拠点に活動するマルチミュージシャン、ワットさん(64歳)「自称弟子」でドラマーのジョルジュさんをお迎えし、音楽を通じた充実した日々について伺いました。
静岡のデルタブルースの伝道師! マルチプレイヤー「ワットさん」の音楽ルーツ
本日登場いただいたワットさんは、静岡市出身、静岡でミュージシャン活動をされている64歳の男性です。ギタリストでありながら、ドラム、ベース、鍵盤、ブルースハープなど、多岐にわたる楽器を演奏するマルチな才能の持ち主です。
その音楽ルーツは「デルタブルース」にあり、ロック、ファンク、ポップス、ジャズなど、あらゆるジャンルをこなします。ご自身をプロのミュージシャンと紹介してほしいと語るワットさんは、まさに「静岡のロバート・ジョンソン」と称されるほどの雰囲気を持つ人物です。
番組では、ワットさんが持参した珍しいドブロギターの演奏を披露。その音楽の原点であるデルタブルースについて「元々ミシシッピ川のデルタ地域で、黒人たちが強制労働させられる中で、労働歌として歌い始めたのがブルースの原点」と説明します。
そして、デルタブルース、すなわちミシシッピブルースが「全てのブルースの原点」であり、ひいてはロックンロール、エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ジミー・ペイジ、エリック・クラプトンといった現代のロックミュージックの源流であると強調しました。
ワットさん自身、小学校低学年からギターを始め、年をとればとるほどブルースの良さが深く分かってきたそうです。
60歳を過ぎてから開いた「ライブスタジオ Free Cafe What?」:音楽継続の拠点
このスタジオは、彼にとって音楽を継続するために最も重要な場所であり、自由に楽器を演奏できる拠点となっています。当初は自身の練習のために始めたスタジオですが、地元や他所から訪れるミュージシャンが自然と集まるようになり、常連ミュージシャンとのマンスリーライブも開催されるようになりました。
スタジオは、利益目的ではなく、利用者が場所の存続を願い、備え付けの貯金箱や電子決済によるドネーション(寄付)という全国的にも珍しいシステムで運営されています。
スタジオは静岡市のセノババスターミナル南口のスクランブル交差点角にある「プチリベールビル」の地下に位置しており、セブンイレブンの前という分かりやすい立地にもかかわらず、隠れ家のような雰囲気です。
スタジオ内は、パーカッションやピアノが設置され、ライティングにもこだわった非常におしゃれな空間です。定期的にコンサートも開催されており、次回のコンサートは2025年9月13日に予定されています。コンサートでは、来場者からのドネーションも受け付けています。
「弟子」ジョルジュさんが語るワット流ブルース伝承:テクニックよりもフィーリング
番組には、ワットさんの演奏にパーカッションで参加したジョルジュさんも登場。彼は常連メンバーであり、静岡市の飲食店オーナーでもある一方で、ワットさんの「自称弟子」のドラマーです。
ジョルジュさんは、九州出身で、高校時代にロックバンドでドラムを演奏していましたが、静岡でワットさんと出会い、ブルースの世界へと導かれました。当初はブルースについてほとんど知らなかったジョルジュさんが「教えてください」と頼むと、言葉で説明するだけでなく、実際に叩いて間違いを正してくれる実践的な指導スタイル。
ブルースは「基本3コード」とシンプルだから、誰でも入りやすく、自由な音楽であるからこそ「見て、感じながら覚える」ことが重要だと、ワットさんから学んだそうです。
「死ぬまでやれる音楽」ブルース:年齢を超えた自由な表現の喜び
ワットさんはブルース(音楽)は「死ぬまでやってていい」と表現しています。60歳を過ぎてから楽器を始めることは遅くないと力説し、時間的余裕がある今が最適な時期だと語ります。
彼のスタジオには、70歳を超えても毎日数時間練習するドラマーがおり、若い頃に音楽を中断していた人がスタジオをきっかけに再開してくれることが、スタジオを始めた喜びだと述べています。
ワットさんは、音楽は「テクニックよりフィーリング」が重要であり、「楽しむことが大切」という考え方を皆にも共有しています。音楽が「空気みたいな存在」になることを自らの理想としています。
健やかな人生100年時代へ! ワットさん流「T活」のススメ
最後に、ワットさんはこれから定年を迎えるリスナーへ向けて、T活のアドバイスを贈りました。それは、「体を鍛えましょう、皆さん!」というシンプルながらも力強いメッセージです。具体的には、健康的な食事(タンパク質や炭水化物や良いオイルをしっかり摂る)を心がけ、「体が資本」であることを強調。さらに、「テストステロンをちゃんと出さないと音楽に情熱を注ぎ続けられない」と健康維持における活力の重要性にも触れました。
ワットさんにとって、ブルースはこれからも「常に」彼の人生にあり続けるもの。音楽は年齢に関係なく、本当に死ぬまでできる素晴らしいものであるというメッセージで、今回のT活コーナーを締めくくりました。ワットさんとジョルジュさんの音楽への情熱と、年齢を重ねてもなお輝き続ける生き方は、多くの人々に勇気とインスピレーションを与えることでしょう。