『スター・ウォーズ』なぜルークは隠居したのか?マーク・ハミルの考える「裏設定」が暗すぎる ─ 「子どもが事故死、妻が自殺する」
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』では、サーガの英雄ルーク・スカイウォーカーが自暴自棄な老人となり、ジェダイとしての道を諦めているという設定が取り入れられた。ヒーロー像を覆す大胆な解釈に、演じたマーク・ハミルは納得していなかったというのは有名なエピソードとなっている。
ハミルは出演最新作『The Life of Chuck(原題)』のため応じた現地で、『最後のジェダイ』製作当時にライアン・ジョンソン監督と意見を戦わせ、独自のバックストーリーを考案していたことを新たに明かしている。何があっても諦めないルーク・スカイウォーカーが隠遁老人になったのには、非常に暗い事情があったからと考えようとしていたのだ。
故郷を離れ、出会った仲間たちと力を合わせ、自身もジェダイとしての力を身につけながら、命懸けで帝国軍を滅ぼしたルーク・スカイウォーカー。しかし『フォースの覚醒』(2015)の頃には姿を消しており、『最後のジェダイ』ではかつてジェダイ・オーダー再建に挫折し、ジェダイは滅びるべきとの思想に至ったことが明かされる。
『最後のジェダイ』では、ライアン・ジョンソンが単独で脚本を手がけた。ルークの解釈について、ジョンソンは「あなたのジェダイ・アカデミーは全滅した」と、ハミルは「僕は惑星丸ごと滅ぼされるのを見たんだ。むしろ、ルークは逆境に直面してこそ決意を固めるんだ」と意見を違わせた。
そこでハミルは、自分を納得させるために「どうして彼がああなったのか、自分でバックストーリーを作っていいか?頭をぶつけて脳に損傷を負ったとか、そんなことはやりたくない」と確認。ジョンソンが「ええ、どうぞお好きにしてください」と答えたことで、次のような暗い背景を考案したという。
「僕が考えていたのは、いったい何があれば、本質的な宗教への献身を捨て、ジェダイであることをやめさせられるのか?ということ。それは、女性への愛でしょう。
そう、彼はある女性と恋に落ちるのです。だからジェダイを捨てたのです。彼らは子どもをもうける。ある時、その幼児が、放置されていたライトセーバーを拾い、ボタンを押して起動してしまい、即死してしまう。妻は悲しみに暮れ、自殺してしまう。そういう話を考えていました。
なぜなら、実際に子どもが放置されていた銃を見つけて、それで死んでしまったという恐ろしい話を耳にしたからです。この話が私の中で深く響いたので、あり得るのではないかと……。
しかし、彼(ライアン・ジョンソン)にはそこまでの背景を語る時間がなかった。彼は簡潔な説明を求めたのです。私にとって、それは正当化できなかった。」
映画の中でルークが女性と婚約する展開は描かれていないが(ジェダイは恋愛禁止だ)、レジェンズ(非正史)ではマラ・ジェイドというキャラクターが有名だ。皇帝の側近としてルーク暗殺の使命を帯びていたが、やがて恋に落ちて結ばれる。ファンの人気は高いが、ジョージ・ルーカスが毛嫌いしているという裏話もある(ハミルは「会ってみたいなぁ」とだ)。
どうにかして、『最後のジェダイ』でのルークの設定を納得しようと試みたハミル。「これは彼にも伝えました。僕としては、ルークが選んだ君の決断に賛同できない。それでも、僕は全力の限りを尽くして、君の脚本ができるだけ良い形になるように務めると。これに関して一つだけ残念なことは、僕がライアン・ジョンソンを嫌っているとファンが話しているらしいこと。それは全くの誤解です」と、ファンの間で信じられている対立劇の真相を話している。
「はっきりさせておきたいのですが、ライアン・ジョンソンは僕がこれまで一緒に仕事をした中で最も才能のある監督です。親しみやすく、現場でも楽しく、頭が良い。素晴らしい映画を作りました。最後のカイロ・レン、アダム・ドライバーと私の対決シーンの演出は、すごく巧みだったと思う。僕が実際にはそこにいないという伏線が張られています。アダムが雪を払うと赤い地表が見える。僕が雪を払うと、ただの雪が残る。あれはとても繊細です。」
ハミルが説明するのは、塩の惑星クレイトでのルークとカイロ・レンの決闘だ。カイロは積年の恨みをぶつけるようにしてルークに挑むが、実はルークはその場におらず、遠く離れた惑星オク=トーからフォースの奥義によって分身を投影していた。ここでルークはレジスタンス脱出の時間稼ぎを演じ、力を使い果たすと死亡する。
ハミルは、ジョンソン監督が手がけた『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)『BRICK ブリック』(2005)『LOOPER』(2012)が大好きだと称賛。「ルークが自殺願望を持つ隠遁者になった動機に不満を抱いていることを公にしてしまったことは、もしかしたら心に留めておくべきだったのかもしれない」と、不要な対立説を生んでしまった後悔を語ったのだった。