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【グラマラス・ロック列伝】2代目ボーカルはGackt!MALICE MIZERが魅せる壮大な世界観

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1998年03月18日 MALICE MIZER のアルバム「merveilles」発売日

最も激しい紆余曲折を経たMALICE MIZER


90年代のグラマラス・ロックの隆盛を振り返る際、最も激しい紆余曲折を経たバンドとして、MALICE MIZERの名は忘れられない。ビジュアル面の奇抜さと、演劇的なパフォーマンスを取り込んだステージング。活動期間は1992年8月の結成から2001年の活動休止までの10年。しかし、メジャーでのフルアルバムはわずか1枚のみという、その登場から終焉までが、疾風の如き鮮烈な印象となって焼き付いているのである。

また、活動当時はビジュアル面や独特のパフォーマンスに注目が集まり、加えてボーカルの交代が相次ぐたびに、音楽面での変化が訪れたため、彼らの芯となる音楽性にロックファンが気づくのは、なかなか難しかった。音楽面がステージパフォーマンスと一体化したことは、彼らを孤高の存在にしたと同時に、一見さんお断り的な印象もあったのだ。

熱狂的なファンを獲得、演劇要素を加えたライブパフォーマンス


MALICE MIZERは1992年、バンドリーダーのManaと、Köziを中心に結成。この2人がバンドの楽曲のほとんどを初期から手掛けており、2人ともギターとシンセサイザーを扱う、いわばサウンド面の両軸であった。この2人にベースのYu〜Ki、ボーカルのTetsuが加わり、93年にはドラムの神村右狂がサポートメンバーを経て正式加入(Kamiと改名)、本格的に活動を開始する。

バンド名は MALICE=悪意、MIZER=悲劇、を意味する。歌詞面はもとより衣装や舞台セットまで中世ヨーロッパの世界観を取り入れ、耽美で幻想的、かつ演劇要素を加えたライブパフォーマンスで、熱狂的なファンを獲得していた。

MALICE MIZERの活動期間は、歴代ボーカリストの在籍期間で区切られており、第1期は、ライブで配布した3作のデモテープを経て、94年のミニアルバム『memoire』発表、そして初代ボーカルTETSUの脱退までを指す。ことに『memoire』はManaの音楽性の原点とも言えるナンバーが数多く収録され、パイプオルガンとバンドサウンドを合体させ、さらに変拍子や柱時計のサンプリング音などゴシック要素を強く取り入れた「記憶と空」、バイオリンを起用しつつポップセンス溢れる「魅惑のローマ」などMana作曲のナンバーが目を惹く。

極め付けは翌年発売の『memoire』DX盤に追加収録された7分半の大作「バロック」。変拍子やワルツ、「エリーゼのために」の挿入など、ロックとクラシック音楽の融合を試みた第1期MALICE MIZERの集大成的な作品となった。

Gacktが加入した第2期MALICE MIZERの音楽性


だが、方向性の違いからTETSUが脱退。2代目ボーカルとして加入したのがGackt.C(以下、Gackt)だった。

ここからがMALICE MIZER第2期となる。まず95年12月10日発売のマキシシングル「麗しき仮面の招待状」は、Gackt加入後初のスタジオ録音作品で、ライブでも演奏をせずパフォーマンスのみで表現するため、打ち込み主体で作られた。

さらに96年6月9日には、バンドにとって初のフルアルバムとなる『Voyage〜sans retour〜』を発表。吸血鬼の物語をベースにしたコンセプトアルバムで、収録曲「Madrigal」では「トルコ行進曲」を引用したり、Gacktの弾くピアノが採用されたインスト曲「〜前兆〜」、ボサノバを取り入れたKözi作曲の「Claire〜月の調べ〜」、同じくKözi作曲の、オルゴールやシンセベル、チェンバロを導入したワルツの「偽りのmusette」など、音楽性は多彩になった。これに2代目ボーカルGacktの、低めの声質と強力なビブラートが、楽曲にドラマチックな官能性を与えている。

特に「追憶の破片」は、静かなピアノのイントロに始まり、バロック音楽風のフレーズをツインギターがハモりながら弾き続けるという、耽美的で格調高い、彼らの世界観を体現した楽曲となっている。

MALICE MIZERで最も知名度の高い「月下の夜想曲」


97年にはコロムビアとメジャー契約を結び、97年7月19日にシングル「ヴェル・エール〜空白の瞬間の中で〜」でメジャーデビュー。そして、彼らがブレイクを果たす契機となった、メジャーでのシングル3作目「月下の夜想曲」が98年2月11日にリリースされる。タンゴのリズムを取り入れた、ノスタルジックでメロディアスなサビの展開など、荘厳な音作りで、MALICE MIZERで最も知名度の高い曲であろう。

この曲に顕著だが、Gacktの加入によって、バンドは音楽性を拡げ、それまで中世ヨーロッパのゴシック的な閉じられた世界で完結していたMALICE MIZERに大衆性をもたらした。明快で官能的な声質のGacktの存在が、バンドにポップセンスを与え、J-POP興隆期の音楽シーンと合致したのだ。

この曲を収録した、メジャーでの唯一のアルバム『merveilles』が98年3月18日にリリースされる。ロックとクラシックの融合というバンドの基本姿勢は変わらないものの、「ILLMINATI」や「S-CONSCIOU」で見せたインダストリアルなサウンド、モータウンビートを取り入れた「au revoir」、フレンチベースのデジタルダンスビート「Ju te veux」などで新境地をみせた。

また、『memoire』収録の「エーゲ海に捧ぐ」をリメイクした「エーゲ〜過ぎ去りし風と共に〜」での大幅な歌メロの改変は、オリジナルと聴き比べると第1期と第2期の差異が明確にわかる。

さらに、Gackt作曲のロッカバラード「Le ciel」では変拍子を取り入れたバンドサウンドに、シンセパッドや木管楽器を加え、ポップでありつつ彼ら独特の凝りまくった音世界を追求している。従来のMALICE MIZERらしい曲調は、Yu〜ki作曲の「Syunkiss〜二度目の哀悼〜」や「Bois de merveilles」に見られる壮大なオーケストレーションによるワルツで、第1期の彼らを継承・発展させた楽曲と言えるだろう。

日本武道館公演成功、Gacktの脱退、MALICE MIZERは第3期へと突入


この時期、彼らは98年4月1日に日本武道館での公演を成功させるなど、動員も飛躍的に伸びて行ったが、99年1月にはGacktが脱退。ここからMALICE MIZERは第3期へと突入するが、6月にはドラムのKamiがくも膜下出血により急逝。残された3名でボーカルレスの活動を余儀なくされる。

99年9月には日本コロムビアとのメジャー契約が終了、再びインディーズに還った彼らはボーカル不在のままシングル「再会の血と薔薇」を発表。続いて2000年7月発売の「白い肌に狂う愛と哀しみの輪舞」で、サポート参加したKlahaがそのまま3代目ボーカリストとして加入。同年8月には3枚目のフルアルバム『薔薇の聖堂』を発表する。ここで表現された荘厳なクラシカルロックの世界は、パイプオルガンや聖歌隊の導入によって、オペラ的要素も組み込まれ、第1期に回帰したイメージがあった。逆にGackt脱退の影響もあって、ポップス的な要素は大きく後退。ゴシックアートとしての拘りを徹底追求した内容である。

そして、2001年いっぱいを持ってMALICE MIZERは活動を停止した。フルアルバムはわずか3枚に留まるものの、ベースにあったロックとクラシックの融合、それを目指した数々の実験的な楽曲は、彼らのパフォーマンスと一体化したものだった。故に打ち込みもあればバンドサウンドもあり、クラシックオペラ由来のオーケストレーションまで、これを1つのバンドが表現するのは到底不可能であったはずだが、MALICE MIZERは演劇的要素の濃いステージと一体化することにより、それを可能にしたのだ。この壮大な世界観は、今聴いても全く古びることはなく、90年代の音楽シーンに大きな爪痕を残したのだった。

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