まもなく新紙幣の発行スタート!でも使い終わった紙幣はどうなるの?
来週の水曜日、7月3日から新紙幣の発行がスタートします。これまで使われてきた紙幣は役目を終えると、どんどん入れ替わっていくのですが、この「使い終わった紙幣」はどうなるんでしょう?
少し気になったので調べてみると、意外なことが分かったんです。
紙幣の寿命、どれくらい?
そこでまずは街の皆さんにこんなことを聞いてみました。「紙幣の寿命、どれくらいだと思いますか?」
「寿命はないんじゃないんですか?え~、30年!」
「紙なんで最低でも5年くらいだと思いますけどね」
「15年? 考えたこともなかったです!」
「25年くらい? 自分が生きてきて、そんな劣化したお札見たことないから」
では、答えを知った皆さんの反応は?
「えっ!短っ!!そんなすぐダメになるんですか?もったいないな~って」
「ビックリしました。なんでこんな短いんですか?」
「そうなんだ、銀行に勤めてたんだけど(知らなかった)」
千円札の寿命は1~2年!
日本銀行(日銀)に聞いたみたところ、千円札と五千円札の平均寿命はなんと1~2年! おつりなどでやりとりされることが多く、傷みやすいんです。一方で、一万円札は4~5年もちますが、毎年かなりの量の紙幣が役目を終えているのがわかります。
日銀には日々いろんな金融機関からお金が持ち込まれていて、そのなかで日銀が「流通に適さない」と判断した紙幣は回収されて、代わりに新品のお札(今までなら新しい福沢諭吉さん)が流通します。
では回収された紙幣はどうなるかというと、日銀の本店や支店で細かく裁断されちゃいます。裁断されたくずは一般廃棄物として、地方自治体の焼却施設で処分されるのですが、一部はトイレットペーパーなどにリサイクルされています。
実は、紙幣はトイレットペーパー以外にも、身近なものにリサイクルされています。
お札の「第二の人生」は身近なものだった!
株式会社横田(静岡県焼津市)の代表取締役社長・大森常男さんに聞きました。
「これは今から15年くらい前なんですけど、地元の製紙会社さんが日銀さんからシュレッダーされたお札のくずを『何かに使えないか』と相談を受けていると聞きまして。自分たちがせっかく現金袋を作ってるから、『現金のくずが入った紙で現金袋を作ったら売れるんじゃないかな』っていう発想から、始まったんですけどね。
封筒用は千円札を使って、現金袋は一万円札を使うっていう使い分けをしてるんですけどね。前評判はかなり良かったですからね。『これは面白い』って話で。採用していただいたお客さまはやはり満足していただいていると思います」
株式会社横田では、紙幣から作った「金剛」という紙を作って、この紙で封筒や名刺などを作っています。資源を再利用できると惚れ込んで使っている企業さんもいるそうです。
実はこの「現金から作った現金袋」はみなさんの身近なところででも使われています。コンビニの「ファミリーマート」などに、「イーネット」というATMがあるんですが、そのATMの横に置かれているのがこの現金袋なんです。
封筒の裏には「この封筒は紙幣をリサイクルして作ったものです」と書かれています。真っ白な封筒ではなく、よく見ると、お札の色やかすかな粒が残っています。漂白剤などの薬品を使わず、お札と水だけで繊維を取り出しているので環境にもやさしいとのこと。
開発には苦労あり!「採算考えたらやってない」
私たちにも身近なこの「紙幣から作った封筒」。でも、かなり開発が大変だったようなのです。
株式会社横田の代表取締役社長・大森常男さん
「かなり手ごわくてですね。紙質自体があまりにも丈夫で、普通の紙と同じようなことをしても繊維を取り出すことができないんですよ。普通の古紙は大きな釜でゆでたような形ですると溶けちゃうんですけど、お札の紙はまったく溶けないんですよね、とにかく。それで参っちゃったんですよね。
どこへ持っていっても『ちょっとこれは無理じゃないか』っていう話がずっと出てたんですよ。あちこちあたってる間にですね、機密文書をシュレッダーかけた紙を最終処分をする機械を作っている会社が『もしかしたらできるかもしれない』っていうことがあったものですから、開発を一緒に始めました。
実際に機械メーカーと打ち合わせして1年くらいだと思うんですけど、完成してやっとこの事業が進められるまでこぎつけました。採算考えたら今だったらやらなかったと思うんですけどね、当時は夢があったものですから」
とにかく繊維を取り出すための機械を作ってくれる企業を探すのが大変で、機械を作ったあとも試行錯誤を何回も繰り返して、1年かけてやっと作れるようになったそうです。
苦労してこの事業を続けてきましたが、ここで気になるのが来週から始まる「新紙幣」。偽造防止用のインクやホログラムなど、いろいろとパワーアップしています。
新紙幣にも対応できるのか大森さんに聞いたところ、「やっぱり一番影響が大きいのが紙質、紙の丈夫さ。発表されている情報では紙質に大きな変更はないようなので、おそらく大丈夫」とのことでした。
大森さんたちの苦労が詰め込まれた封筒、ファミリーマートのATMを使うときはぜひ封筒をチェックしてみてください。