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川崎フロンターレを愛し、愛される街。強さの秘訣はノリのよさにあった?

さんたつ

アートボード 1川崎フロンターレ

J1リーグを初制覇した2017年以降、国内で最もタイトル獲得数が多い川崎フロンターレ。さらに、地域密着度合の面でもリーグ屈指という、輝かしい成績を収めている。そんなクラブの強さと人気の根源を、ホームタウンで探った。

Jリーグ実施の調査で、10年連続で地域貢献度ランキング第1位にもなった川崎フロンターレ。市内18の商店街に選手が繰り出し、お店を訪問する「新年ご挨拶回り」を20年以上続けていることでも有名だ。今回は、スタジアムにもほど近い、武蔵小杉〜新丸子のフロンターレを熱烈に応援する3軒に伺った。

お話を伺ったのは……

『鉄板焼 でんすや』店主 石本和幸さん

「高井選手は、必ず海外に羽ばたく選手。でも今年(2025年)は等々力で見たい(笑)」

[今季のイチオシ]
高井幸大選手

『小杉らぁめん 夢番地』店主 大野陽平さん

「ウチも2025年で20周年。20番のエースは20点を!」

[今季のイチオシ]
山田 新選手

『SHIBACOFFEE』店主 柴田 剛さん

「ピッチで躍動する姿を今年もたくさん見たい!」

[今季のイチオシ]
小林 悠選手

寒いギャグも楽しむノリがサポーターの輪を広げる

『小杉らぁめん 夢番地』の店主・大野陽平さんは「フロンターレが生まれた頃(1997年)から試合を見ていた」と語る地元育ちのサポーター。メニューにもフロンターレの影響が。

「定番の煮干鶏白湯らぁめんは、元々2018年の2連覇時にクラブが出した『煮干し(2つの星)』グッズに乗っかったものでした。対戦相手にちなんだ期間限定メニューも、磐田戦の『いかわた醤油らぁめん』とかフザけた名前のものが多かったです。クラブがそういうノリが大好きで、サポーターもギャグに耐性がありますから(笑)」

『SHIBACOFFEE』の柴田剛さんがフロンターレにハマるきっかけにもそんなノリが関わっていた。

「2016シーズン末に、小林悠選手が男気の契約延長を決めてくれたことがフロンターレを好きになったきっかけでした。そのとき、小林選手の愛称“アンパンマン”にちなんで“フロサポあんのパンまつり”というムーブメントが起きたんです。街のお店で突如(とつじょ)あんぱんが完売したのも、当時ウチにあったあんこトーストを『この店にもあんぱんがあるぞ!』とサポーターが広めてくれたのも楽しかったです」

以前は「ビジネスサポーター」と常連さんにネタにされていた柴田さんだが、そんなノリにもひかれ熱いフロサポに。フロンターレをイメージして作った「俺の青ブレンド」は今や定番商品だ。

『でんすや』の店内にはヘラを持った中村憲剛氏との写真も。

同じくお店の開業後に熱いサポーターになったのが『鉄板焼 でんすや』の石本和幸さん。2019年のルヴァンカップ決勝時は「PK戦になって帰るに帰れず、開店が1時間半遅れた」との逸話も。以来、ギリギリの観戦は控えるようになったが「今は“みんなが監督”状態のお客さんのサッカー談義が楽しい」そう。「サポートショップ向けの激励会で、鉄板のヘラを持って選手と撮影するようにしたら、フロンターレが優勝し始めたのもハマるきっかけになりました」。

対・名古屋戦用に開発したまぜそばが人気となったため、まぜそば専門店も展開する『夢番地』。

やはり、地元のお店との楽しい交流を大事にするクラブの姿勢は、着実にサポーターを増やしているのだ。「挨拶回りも体験してからは『クラブがこういう活動を続けてきたからこそ、私もフロンターレを好きになれたんだな』と感じます。昔の川崎はヴェルディが大人気で、だからこそフロンターレは地道な活動を大事にしてきたと聞きますから」と、柴田さん。

「車屋ドリンク」と呼ばれるアイスカフェオレ。

なお『SHIBACOFFEE』では、車屋紳太郎選手が飲んだカフェオレが「車屋ドリンク」と呼ばれ人気になり、それをSNSで見た大阪牧方の弁当店『車屋』と懇意になるという“らしい”交流がその後も発生。『夢番地』では、対戦相手にちなんだ限定メニューを復活予定だ。地域と人を巻き込む楽しいノリは、今後もサポーターを増やしそうだ。

この道30年超のヘラさばきも見もの『鉄板焼 でんすや』

黒毛和牛(宮崎牛)ステーキ3960円、明石産の活タコ1400円。コースは6000円~。

大阪の鉄板焼き店出身の石本さんが、産地直送の旬の魚介、肉料理、関西風の粉ものなどを手ごろな価格で提供する。豚玉1100円はふっくらとおいしい本場の味で、お好みで関西人溺愛の辛口の「どろソース」を。肉や魚介はライブ感のある鉄板調理と焼き加減が見事で、素材の旨味を堪能できる。

17:00~24:00、不定休。
☎044-722-7422

店内にはユニフォームがずらり『小杉らぁめん 夢番地』

煮干鶏白湯らぁめん900円(写真は1300円の特製)。麻辣担々麺、黒胡麻担々麺もあり。

醤油、塩、煮干と3種の味を用意する鶏白湯らぁめんは、自家製の香味油などを使うことで濃厚で奥行きのある味わいに。トッピングの刻みタマネギの清涼感もよく、女性客が多いのも納得のおいしさだ。近隣に系列店の『小杉つけ麺 夢番地』『まぜそばは文化』も展開する。

11:00~23:00(日は~15:30)、無休。
☎044-739-0921

スペシャルティコーヒー豆の専門店『SHIBACOFFEE』

ドリンクのテイクアウトは50円引き。俺の青ブレンド(左)は、100g1250円。

世界10以上の産地の最高品質のコーヒー豆を、直火式焙煎機で毎日ロースト。「そのおいしさを気軽に味わってほしい」と、店内提供のホットコーヒーはどの豆でも680円に設定。産地のことから保存方法まで、丁寧に説明する様子から熱いコーヒー愛が伝わる。

12:00~20:00(土・日・祝は11:00~)、木休(不定休あり)。
☎044-863-7223

取材・文=古澤誠一郎 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2025年4月号より

古澤誠一郎
ライター
1983年埼玉県入間市生まれ。東京都新宿区在住。得意なジャンルは本、音楽、演劇、街歩きなど。『サイゾー』『週刊SPA!』『ダ・ヴィンチニュース』などに執筆中。

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