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国宝・重要文化財が40件以上集結 全ての作品が見どころの『相国寺展』レポート

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『相国寺承天閣美術館開館40周年記念 相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史』展示風景

2025年3月29日(土)から5月25日(日)まで、東京藝術大学大学美術館 本館(東京・上野)にて『相国寺承天閣美術館開館40周年記念 相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史』が開催中だ。

室町幕府三代将軍・足利義満(1358~1408)の発願(ほつがん)によって開かれた相国寺は、鹿苑寺(金閣)、慈照寺(銀閣)を擁する臨済宗相国寺派の大本山。640年あまりの長い歴史を持ち、雪舟、狩野探幽、伊藤若冲、円山応挙といった高名な芸術家と親交が深く、数多くの美術品を収蔵・保護してきた。相国寺・鹿苑寺・慈照寺が所有する作品は、相国寺境内にある承天閣美術館で公開しているが、本展覧会は、相国寺承天閣美術館開館40周年を記念し、相国寺派の名品を中心に東京・上野にて鑑賞できる貴重な機会となる。

国宝・重要文化財40件以上、全てが見どころの絢爛豪華な内容

本展は160点以上もの展示品の中に、国宝・重要文化財40点以上が含まれる、極めて豪華な内容である。会場は「【第1章】創建相国寺―将軍義満の祈願」「【第2章】中世相国寺文化圏―雪舟がみた風景」「【第3章】『隔蓂記』の時代―復興の世の文化」「【第4章】新奇歓迎!古画礼讃!―若冲が生きた時代」「【第5章】未来へと育む相国寺の文化 ―“永存せよ”」の5章構成だ。

展示風景 「【第1章】創建相国寺―将軍義満の祈願」より

第1章は相国寺創建期を代表するコレクションを紹介し、第2章は雪舟らの水墨画などを展示、第3章にて近世復興期の相国寺の逸品を展覧し、第4章では相国寺の文化に貢献した若冲らの作品などを公開、第5章で数々の什物(じゅうもつ:仏教教団が所有する日用品や生活必需品)を展覧するという内容で、ほぼ時系列順の内容である。展示品は絵画・書・衝立・茶器など非常に幅広く、いずれも保存状態が良いので、大切に保管されてきたことが伝わってくる。

展示風景 国宝《玳玻盞散花文天目茶碗》吉州窯 中国・南宋時代 12-13世紀 相国寺【前期展示】


相国寺の歴史の流れを伝える内容

相国寺の歴史は、足利義満の「吾れ、新たに小寺を建てんと欲す」という一言に始まる。本展は建立を提案した義満や、実際に建立した夢窓疎石(むそうそせき)の肖像画など、相国寺の歴史に関連する品を多数紹介する内容だ。歴代の住持や人間関係を示す美術品の数々は、640年あまりの時の重みを今に伝える。

展示風景 左:重要文化財《足利義満像》伝 土佐行広筆 足利義持賛 室町時代 応永15年(1408) 鹿苑寺【前期展示】

展示風景 右:《夢窓疎石像》夢窓疎石賛 南北朝時代 14世紀 相国寺【前期展示】

三代将軍・足利義満が築いた鹿苑寺を中心とする北山文化と、八代将軍・足利義政が建立した慈照寺を舞台に展開する東山文化においては、中国の美術品である唐物が珍重され、東山御物と呼ばれた。会場には、義満遺愛の絵画や義政が愛用した茶入や文房具など、将軍たちの愛好した名品が多数ある。相国寺が美術品を庇護してきたことを実感できるだろう。

展示風景 中央:《唐物小丸壺茶入(唐物青貝四方盆添)》茶入:中国・南宋−元時代  13世紀 盆:中国・明時代 16-17世紀 慈照寺

戦国時代に荒廃した相国寺を復興した西笑承兌(せいしょうじょうたい)の跡継ぎである鳳林承章(ほうりん じょうしょう)が綴った日記《隔蓂記(かくめいき)》や、鳳林が狩野探幽に依頼した《花鳥図衝立》も展示されている。《花鳥図衝立》の優美で端正な筆致は、探幽の確かな画力と鳳林との信頼関係を今に伝える。

展示風景 右:《隔蓂記》鳳林承章筆 江戸時代 寛永12–寛文8年(1635–1668) 鹿苑寺 

展示風景 右二基:《花鳥図衝立》狩野探幽筆 江戸時代 慶安元年(1648) 相国寺

相国寺の美術品を象徴するものの一つに《鳴鶴図(めいかくず)》がある。こちらは中国・明時代の画家である文正(ぶんせい)の手による花鳥画の一つで、相国寺六世の絶海中津(ぜっかいちゅうしん)が中国から帰国する時に持ち帰ったもの。この荘厳で美しい作品を拝見するために鳳林へ依頼を出し、模写して自分の表現を加えた狩野探幽の《飛鶴図》は本展第三章で鑑賞できる。

展示風景 重要文化財《鳴鶴図》文正筆 中国・元–明時代 14–15世紀 相国寺【前期展示】


伊藤若冲、円山応挙など 高名な作家の名品が勢ぞろい

相国寺の文化を考えるにあたって重要な人物として、中世は雪舟、近世は伊藤若冲が挙げられるだろう。室町水墨画の巨匠とされる雪舟は、相国寺の画僧であり足利将軍家の御用絵師であったという如拙(じょせつ)や、如拙の後を受けて活動した周文を師と仰ぎ、相国寺第三十六世の春林周藤(しゅんりんしゅうとう)のもとで修行した後、明に渡って水墨画家としての地位を築いた。本展は雪舟関連の作品や、雪舟も見たであろう美術品が多数展示されている。

展示風景 中央:重要文化財《墨梅図》伝 如拙筆 絶海中津賛 室町時代 15世紀 正木美術館【前期展示】

独自の絵画世界を展開した伊藤若冲は、相国寺の僧・梅荘顕常(ばいそうけんじょう)と長く交流があり、相国寺にある中国絵画を見て学んだという。そして専業画家になって間もない時期、顕常の推薦で金閣の中にある大書院の襖絵を描く絵師に抜擢された。本展第四章で見られる《鹿苑寺大書院障壁画》は、若冲の伸び伸びとした筆致と高い技巧が堪能できる逸品だ。

展示風景 左:重要文化財《鹿苑寺大書院障壁画 四之間 双鶏図》伊藤若冲筆 江戸時代 宝暦9年(1759年) 鹿苑寺

展示風景 重要文化財《鹿苑寺大書院障壁画 一之間 葡萄小禽図》伊藤若冲筆 江戸時代 宝暦9年(1759) 鹿苑寺

本展は若冲作品が豊富で、伝 李公麟《猛虎図》と若冲が描いた《虎図》を元にした《竹虎図》や、亀や箒といった独特の画題や構図を堪能できる《亀図》《厖児戯帚図(ぼうじぎほうず)》など、個性豊かな世界をたっぷり鑑賞できる。

展示風景 左:《亀図》伊藤若冲筆 聞中浄復賛 江戸時代 寛政12年(1800)頃 鹿苑寺  右端:《竹虎図》絵:伊藤若冲筆 賛:梅荘顕常筆 江戸時代・18世紀 鹿苑寺

ほか、風になびく萩やススキ、野菊を緻密で繊細な情緒で描いた長谷川等伯の《萩芒図屏風(はぎすすきずびょうぶ)》、写実性に目を見張る円山応挙の大作《七難七福図巻》など、日本美術史に名を残し、現代も高く評価されている大家の名品がずらりと並ぶ。

展示風景 『萩芒図屏風』長谷川等伯筆 桃山時代 16-17世紀 相国寺【前期展示】

展示風景 右:重要文化財《七難七福図巻》円山応挙筆 江戸時代 明和5年(1768) 相国寺

約150点もの展示品の中に国宝・重要文化財40件以上を含む『相国寺承天閣美術館開館40周年記念 相国寺展―金閣・銀閣 鳳凰がみつめた美の歴史』。2025年5月25日(日)まで、東京・上野の東京藝術大学大学美術館 本館で開催中。

文・写真=中野昭子

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