岡田有希子「Love Fair」新時代の傑作シングル!キーマンはムーンライダーズのかしぶち哲郎
岡田有希子デビュー40周年!7インチシングル・コンプリートBOX 発売記念コラムvol.7
A面:Love Fair
作詞:かしぶち哲郎
作曲:かしぶち哲郎
編曲:松任谷正隆
B面:二人のブルー・トレイン
作詞:竹内まりや
作曲:杉真理
編曲:松任谷正隆
ファンの間でも高く評価されている「Love Fair」
デビューから約1年半、岡田有希子の7枚目のシングルとなった「Love Fair」を傑作と推す声は多い。ファンの間でも高く評価されている作品である。キーマンは間違いなく作詞・作曲を担当した、かしぶち哲郎。かしぶちは1985年3月にリリースされたセカンドアルバム『FAIRY』に「森のフェアリー」と「ポップ・アップ・リセエンヌ」を初提供した後、同年9月のサードアルバム『十月の人魚』でも「Bien」を作詞・作曲し、翌10月に出されたのがこの「Love Fair」だった。
かしぶちが起用されるに至ったのは、同じムーンライダーズの白井良明と岡田徹が、ファーストアルバム『シンデレラ』(1984年9月)に楽曲提供していたことからの流れであったろう。アルバム曲を3曲書いた後、満を持してのシングル曲。複雑なメロディで高音も要求される難しい曲を、歌唱力も表現力も著しく向上していた岡田有希子は見事に歌い上げた。当時大流行していたマドンナを意識したであろう松任谷正隆のアレンジも秀逸だった。
「哀しい予感」に続く絶妙な位置づけの作品
竹内まりやが手がけたデビューからの三部作、「ファースト・デイト」「リトルプリンセス」「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして」が、オールディーズ調のアイドルポップスとして群を抜いていたため、その後の展開には苦労したと思われる。尾崎亜美が手がけた「二人だけのセレモニー」と「Summer Beach」は巧妙にその路線を継承しつつも、次のステップへの模索期。再び竹内まりやが起用された「哀しい予感」は失恋をテーマにした良曲ながら、当時の岡田にはまだちょっと早すぎたような気がした。それはチャート動向にも反映されたことは否めない。85年組の台頭、特にレーベルメイトとなったおニャン子クラブの活躍は少なからず影響を及ぼしていただろう。
「Love Fair」は決して派手な曲ではなかったものの、若干の立て直しを図らなければならなかったこの時期の岡田にとって、絶妙な位置づけの作品になったのではないか。何より前作で見え隠れしていた迷いが払拭され、前向きな歌唱になった。チャートは最高5位に留まるも持ち直し、次なる大仕掛けを迎える体勢も整った。誰よりも作品を毎回熱心に追っていたファンはこの曲を好意的に迎え入れたのだろう。おそらく送り手側もその人選が間違っていなかったことを確信したはずである。
岡田有希子のメイン作家になった かしぶち哲郎
ファンのみならず、業界内でも本曲が高く評価されたことで、Seiko(松田聖子)× 坂本龍一のコンビに委ねられて初のチャート1位を獲ることになる次のシングル「くちびるNetwork」(1986年1月リリース)ではかしぶちがアレンジを担当し、カップリング曲「恋のエチュード」の作詞と編曲も。さらに1986年3月に出された4枚目のアルバム『ヴィーナス誕生』では「ジュピター」と「愛のコロニー」を作詞・作曲、「水晶の家」を作曲した上に、全曲のアレンジを手がけている。そして5月に9枚目のシングルとして発売されるはずだった「花のイマージュ」は作詞・作曲・編曲と、かしぶち哲郎は正しく岡田有希子のメイン作家となっていった。
運命は変えられないが、「花のイマージュ」もヒットして、この後もかしぶちによる楽曲提供が続いていたなら、さらなる傑作が生まれていたんだろうな、などつい夢想してしまう。大ヒットしながらも結果的にラストシングルとなってしまった「くちびるNetwork」の前にこの「Love Fair」が存在していたことは、岡田有希子のディスコグラフィーを眺める度に深い意味が感じられて胸に染みるのだ。竹内まりや作詞、杉真理作曲によるカップリング曲「二人のブルー・トレイン」も、冬の情景が描かれた佳曲であった。
美しい高音を聴かせながら、真摯に曲世界の表現に挑んでいた彼女の姿は、並み居るアイドル達の中でも特別な輝きを放っていた。
幻のラストシングル「花のイマージュ」の初アナログリリース含む、全7インチシングル9枚を収録したコンプリートBOXセット。各ディスクに、別カラーを使用したカラーヴァイナル仕様でリリース!詳細はこちらから。
2024年8月22日発売
品番:PCKA-18
価格:¥19800(税込)
限定生産商品