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【実例あり】高齢者の「見守り」「居場所づくり」の取り組みとは?

ささえるラボ

【実例あり】高齢者の「見守り」「居場所づくり」の取り組みとは?

住み慣れた地域に、高齢者にとっての「居心地の良い居場所」はありますか?

執筆者/専門家

羽吹 さゆり

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/7

高齢化の進行で「自助努力」が求められるように

2025年、日本では団塊世代の方々が後期高齢者になり、高齢者人口が増加する一方、子どもの出生数は、70万人を割ることが予測されており、「超少子」「超高齢」となる現象がさらなる進行を見せています。※

超少子・超高齢社会の中で懸念されるのが、社会保障等の医療や介護の課題です。出生率が下がれば、高齢者を支える社会保障費をはじめ、介護を担う人材不足は顕著になります。当然、公的扶助から相互扶助、自助の時代へと流れが早まっていきます。

介護を社会全体で支える「介護保険」が施行されて25年経ちましたが、人口の変動に応じた改正が行われる一方で、施行当時に比べて介護保険サービス利用者は増加し続け、サービス内容の制限も以前と比べると厳しくなっているのが現状です。

2022年には、政府はセルフメディケーションの推進、ヘルスリテラシーの向上、インセンティブ付けなどを通じた、 予防・重症化予防・健康づくりの推進、利用者負担見直しを含む介護保険の持続性確保を明言しました。これからの時代は「さらに自助努力ありきの時代」になっていくと言っても過言ではないのです。
※出典:厚生労働省令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況

自助努力を重ねても、高齢者の孤立化が課題に

2000年に施行された「介護保険」は、介護が必要になった場合に「介護保険サービス」でサポートを受けながら生活を続けられるという認識を広めました。しかし、現代ではそのままの意識では不十分であり、将来設計を見直す必要があります。

このように介護保険サービスを利用できる基準の厳格化などが進むと、介護を必要としない高齢者や、なんとか自分で生活することができる高齢者(フレイル高齢者)の孤立化が問題となります。

高齢者の孤立化が進むと、生きがいの低下、消費者被害や高齢者による犯罪、孤独死などといった社会課題が増加してしまいます。これらを防ぐために、周囲ができることは地域全体で高齢者を「見守り」、「居場所づくり」を行うことです。

ここから、私が実際におこなっている地域と連携した、高齢者の居場所づくりを紹介します。

【実例あり】地域密着型介護予防サロンで高齢者に居場所づくりを

出典:https://mynavi-kaigo.jp/media

試行錯誤のうえ始まった「介護予防サロン」

私は3年前から市町村内で介護予防サロンを運営しています。市町村も初めての取り組みということや、担当者の入れ替わり、主催者側の高齢化などが重なり、3年経った今でも、試行錯誤の中運営を行っています。

しかし、このような公的な場所で実施した介護予防サロンの経験から、「介護の人材育成の専門家」として、民間レベルで、もっと自由に、もっと柔軟に、もっと楽しく、シニアが本当に手に入れたい「介護予防サロン」ができないかを考えました。その結果、2年半前にオープンしたのが地域密着型介護予防サロンの「街角ときめきサロン@白楽」です。

きっかけは、「常連のお客様の居場所になりたい!」

美容室で開こうと思ったきっかけは、サロン運営者自身も50代後半となり、常連のお客様の高齢化対応に悩んでいたことでした。これをきっかけに、美容室の定休日である火曜日に「街角ときめきサロン@白楽」をすぐにスタートしました。

サロン運営者である美容師さんには、介護予防に関わる医療的な知識(高齢者の心理や身体、病気、薬、栄養、認知症)を弊社が運営する講座で「介護予防コンシェルジュ」(※街の介護予防の専門士の資格)を取得してもらい、介護予防に関する知識を身につけた状態で運営に携わってもらいました。

口コミで常連以外のお客様にもサロンが広まった!

今では、介護予防コンシェルジュの仲間の協力を得て、シニア向けの「椅子ヨガ」をはじめ「足の爪ケア」「ケアエステ」「ネイル」「トールペイント講座」「椅子フラメンコ」等を毎週開催しています。

最初は美容室の常連さんへの声掛けからスタートしましたが、今では口コミで美容室利用者以外のシニアのお客様も増えています。さらに、地元の地域包括支援センターや社会福祉協議会の担当者、地元新聞社の取材依頼も受けるようになり、「毎週火曜日といえば、介護予防サロン<街角ときめきサロン>」が定着しつつあります。

具体的な実施内容

椅子ヨガで全身の筋力低下を防ぎ、足の爪ケアでは「爪切り」で巻き爪予防、トリートメントでは足指や足底筋の筋力低下を防ぎ自分自身で立つ・歩くを持続可能にし、暮らしのお手伝いをしています。

また、ケアエステでは美しくなるだけではなく、眼輪筋の低下予防を始め、眼瞼下垂症の予防や誤嚥予防、ヘッドマッサージでは頭の血流を良くすることで認知症の予防へも考えた手技を提供しています。トールペイントや椅子フラメンコはイベントとして開催していますが、日頃の自分の予防ケアの効果を確認する機会ともなっています。

お客様と一緒につくるサロンに

料金もケアをするのに、年金生活者の方が持続可能な料金を破格値で設定しました。

しかし、お客様側から、お値段を釣り上げる提案をしてくださるなど、私たちだけで開催しているのではなく、ありがたいことに、お客様と共にサロンをつくっていると感じます。

お客様と作ったサロンは、「自分たちの居場所に」

大雨や台風などの悪天候が予想される日には開催を迷うこともありますが、「家に一人でいると不安だから開催してほしい」という声もあり、基本的には無休で運営しています。

椅子ヨガに関しては予約制ではありませんが、休む場合にはお客様自ら欠席の連絡をしてくださるほど、サロンが「自分たちの居場所」として根付いているようです。

最後に:高齢者が「行きたい」と思える居場所づくりを

今年の初回に参加した際、「このサロンは私たちの居場所です。作ってくださってありがとう」と涙ながらに感謝の言葉をいただきました。その瞬間、介護予防サロンがシニア高齢者の希望を照らす場所であり、自分主体で生きるための拠点となっていることを実感しました。

これからも、お客様ご自身が「行きたい」と思える場所づくりを、お客様と共にこれからもつくり続けていきたいと考えています。

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介護予防は筋力向上だけじゃない!~自信を持った老後生活を送るために~ | ささえるラボ

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