松本潤初参加のNODA•MAP新作、『正三角関係』(作・演出:野田秀樹)が遂に開幕【観劇レポート】
NODA・MAP 第27回公演『正三角関係』(作・演出:野田秀樹)が、2024年7月11日(木)、東京芸術劇場プレイハウスで初日を迎えた(東京公演は8月25日(日)まで)。続いて本作は、9月5日(木)~9月11日(日)の北九州公演(J:COM北九州芸術劇場)、9月19日(木)~10月10日(日)の大阪公演(SkyシアターMBS)を経て、最後は、10月31日(木)~11月2日(土)のロンドン公演(サドラーズ・ウェルズ劇場)を以て全行程を完了する。本作は、松本潤、長澤まさみ、永山瑛太を主軸に描く、『カラマーゾフの兄弟』をモチーフにしたNODA・MAPの新作だ。SPICEでは、初日に先だって行なわれたゲネプロ(最終通し稽古)の観劇レポートをお届けする。
【ゲネプロ観劇レポート】
NODA・MAPの新作『正三角関係』がついにヴェールを脱いだ。衣類や靴が無造作に散らばっていた舞台上は、ザ・カーナビーツの「好きさ好きさ好きさ」が大音量で流れると瞬く間に法廷となり、父親殺しの罪に問われている花火師一家の長男・唐松富太郎の裁判が繰り広げられていく。そこで証人たちが語る過去の場面や回想シーンと行ったり来たりしながら。なおかつ、空襲警報による中断を余儀なくされながら……。
富太郎役の松本潤は髭をたくわえ、ワイルドな花火職人を体現。13年ぶりの舞台出演とは思えない貫禄で、鬱屈を抱えたエネルギッシュな長男を演じていく。永山瑛太は、真っすぐな唐松家の次男・物理学者の威蕃をシャープかつピュアに表現し、長澤まさみが演じる聖職者の三男・在良はひたすら純朴で心優しく、可愛い。
その三人の異母兄弟の横暴な父と、控えめな検事の二役を目まぐるしく演じ分けるのは“怪優”竹中直人。野田も、エリート弁護士と在良が料理番を務める教会の神父の二役を軽やかに行き来する。
村岡希美は富太郎の婚約者・生方莉奈をしっとりと気品高く、小松和重は唐松家の番頭・呉剛力を軽妙さと生活感たっぷりに演じ、池谷のぶえが異次元の存在感とすっとぼけぶりで演じるウワサスキー夫人が、物語にもう一つの軸を加える。
そして、男たちを翻弄するグルーシェニカを、持ち前の思い切りの良さと脚線美で大胆に魅せるのは、長澤まさみ。もちろん、野田ワールドを立体化するのに欠かせないアンサンブルも実力を発揮。その身体表現にも注目だ。
舞台美術は非常にシンプルで、薄布とポールと養生テープを使って様々なものに見立て、要所要所に映像が用いられる。衣裳は逆に、時代や場所が反映されたものになっており、ロンドンで上演されることを意識したのかなと思わせる。
ロシアの文豪ドストエフスキーの名著『カラマーゾフの兄弟』の登場人物や関係性・設定を巧みに借りながら描かれるのは、紛れもない日本の物語だ。様々な思惑が入り乱れる中、薄布を1枚ずつ剥がしていくように、“その日”へと近づいていく。野田がロンドンで上演することを前提に選び、複眼的に描くこの題材が投げかけるものを、劇場でしっかりと受け止めたい。
取材・文=岡﨑 香