三崎で11年ぶり進水式 第五君栄丸・宮川さん、志新た
「マグロのまち」を支える三浦市・三崎港で8日、11年ぶりに進水式が行われた。新造船を建造したのは同市出身の宮川樹さん(33)。独り立ちしてから6年、全国の漁場を渡り歩き、念願だった最新式の船を手にした。漁師の高齢化が進み、担い手が不足する中、「腕1本で稼ぐことができるのが漁師の魅力。若い人をもっと増やして漁業を盛り上げたい」と意気込む。
8日、三崎港の花暮岸壁で色とりどりの大漁旗で彩られた第五君栄丸がお目見えした。進水式には全国から宮川さんと関わりのある漁師が集まった。進水式の餅まきでは400人以上が集まり、関係者の一人は「こんなに盛大な進水式は数十年ぶりだ」と目を見開く。
新造船は全長22m、重さ16t。宮城県南三陸町で建造し、進水式に合わせてこの日までに三崎に帰ってきた。6年前、独り立ちの際に購入した中古船は第五君栄丸の”先代”で、心機一転、新たな船出になる。宮川さんは「自分1人でここまで来たとは思わない。協力してくれる人やお世話になった人たちのおかげ」と万感の思いを込める。
漁師一家で育った4代目。幼少から祖父や父が漁に出かける姿に憧れ、17歳で職業訓練校を卒業後、漁師の道に入った。
静岡県伊東市でサバ漁船や地元のキンメダイ漁船に乗船して経験を重ね、全国的なマグロブランドで有名な青森県大間町でも腕を磨いた。
この日、同町から祝いに訪れた第三十五大運丸船主の菊池武一さんは「年が若く、勉強家。マグロを探す感性もピカイチだ。この時代に最先端の船を新造できるのは本人の努力あってこそ」と宮川さんの漁師としての素質に太鼓判を押す。
漁業が主力産業の一つの三浦でも漁業人口は右肩下がりで高齢化も顕著だ。若手の活躍に地元の期待も大きく、父の元彦さんは「これだけ祝ってもらえるのは幸せなこと」と目を細める。
ひと昔前に比べれば、若手漁師も増えてきたが、もっと盛り上げていきたいと思いを強くする。新造船ではマグロやカツオ、キンメダイを狙っていく。
「いずれ初競りのマグロ、『一番マグロ』を獲りたい」。大志を胸に、舵を取る。