遺族年金改正へ。主な見直しポイント5つと「影響を受ける人・受けない人」
「夫が会社員だから、万一のときは遺族年金で何とかなる」そう思っている方は少なくないかもしれません。
しかし、2025年6月に遺族年金制度の見直しに関する法案が可決され、2028年4月から大きな制度改正が予定されています。今回の改正は、決して他人事ではありません。
将来、受け取れる年金の金額や期間に影響が出る可能性があるため、今のうちから制度の内容を理解しておくことが大切です。
この記事では、改正の背景や主なポイント、生活への影響、そして今からできる対策をわかりやすく解説します。
なぜ制度が改正されるのか
遺族年金はもともと、「夫が会社員、妻が専業主婦で子どもがいる家庭」を想定してつくられていました。
しかし、内閣府男女共同参画局の「男女共同参画白書 令和6年版」によると、男性雇用者世帯のうち共働き世帯の割合は約75%で、今は夫婦ともに厚生年金に加入しているケースが主流です。
こうした社会構造の変化を踏まえ、男女や年齢によって制度に「有利・不利」が生じていた点を見直し、公平な制度にすることが今回の改正の目的です。
改正の主なポイント5つ
今回の改正では、大きく次の5つの点が見直されます。
1.5年間の有期給付へ統一
現行では女性が30歳以上で死別した場合、終身で支給されていた子どものいない配偶者への遺族厚生年金が、男女問わず60歳未満で死別した場合は原則「5年間の有期給付」に変わります。
(配慮が必要な場合は5年目以降も給付が継続されます)
2.5年間は支給額を約1.3倍に増額
短期間で生活を立て直せるよう、有期期間中は支給額が現行より約1.3倍に増えます。
3.死亡時分割制度の導入
亡くなった配偶者の老齢厚生年金の一部を、生存配偶者の老齢年金に上乗せできる制度が新設され、将来の年金額が増える仕組みに変わる予定です。
4.子どもがいる場合の加算額の引き上げ
遺族基礎年金の加算額が1人あたり年間約23.5万円から約28万円に増額されます。1人あたり年間4.5万円増えるのは嬉しいですね。
5.所得制限の緩和
年収850万円超を支給対象外とする要件が廃止され、より幅広い世帯が対象となります。
誰が影響を受けるの?
今回の改正では、誰が影響を受けるのでしょうか。主な見直しの対象者は、以下のとおりです。
影響を受ける人
・18歳年度末までの子どもがいない、2028年度末時点で40歳未満の女性
→原則5年間の有期給付になります。
・18歳年度末までの子どもがいない、60歳未満の男性
→新たに有期給付の対象になります。
一方で、以下の人たちは影響を受けません。
影響を受けない人
・すでに遺族厚生年金を受給している人
・60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人
・18歳年度末までの子どもを養育している人
・2028年度に40歳以上になる女性
今からできる3つの対策
今回の改正は「一生遺族年金をもらえる」と思っていた人が「5年で終了」になるケースが出る、大きな転換です。今から次の3点を確認・準備しておきましょう。
1.年金記録を確認する
「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で、自分と配偶者の加入状況や将来の見込額を確認しましょう。
2.働き方を見直す
厚生年金への加入や就労形態の見直しで、収入と自分の将来の年金額を増やす工夫をしましょう。
3.資産形成を進める
iDeCoやNISAなど、公的年金や貯金だけに頼らない仕組みを活用することも大切です。
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遺族年金の改正は、一見すると自分には関係ない話に思えるかもしれません。しかし、制度の変化は将来の生活を大きく左右する重要なテーマです。
「夫が厚生年金に入っているから安心」と思うのではなく、自分自身の働き方や世帯構成に合わせて制度を理解し、必要な準備を進めましょう。まずは年金記録を確認し、改正内容を“自分ごと”として捉えることから始めてみてはいかがでしょうか。
【執筆者プロフィール】
田端 沙織(たばた さおり)
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャルプランナー
証券・運用会社で10年超の勤務経験を活かし、ファイナンシャルプランナー・金融教育家として「正しく・分かりやすく」お金のことや資産運用について伝える講座や相談業務を行っています。得意分野は資産運用。中学生1人と小学生2人を絶賛子育て中。
(ハピママ*/キッズ・マネー・ステーション)