プロ野球バント戦線に異変? ヤクルトと巨人は大幅増、昨季2位のDeNAは激減 楽天が驚異の成功率90%超
楽天が唯一の成功率90%超え
今季も投高打低のシーズンが続いているプロ野球。前半戦の平均得点はセ・リーグが3.02、パ・リーグも3.34と4得点に満たず、どのチームも点を取るのに苦労している。
そのため、小技を絡めた戦術の重要度が増している。特に、日本のプロ野球では犠打で走者を得点圏に進める戦法が多用される傾向にあるが、今季ここまで各球団はどのくらい送りバントを活用しているのだろうか。
今季前半戦の各球団の犠打企図数、成功率をまとめると下表のようになった。
今季最も送りバントを試みているのがヤクルトで112回、次いで巨人の108回と2球団が既に3ケタに到達していた。また、上位6球団中5球団がセ・リーグ球団となっており、DH制の有無が犠打の企図数に大きく影響していると考えられる。
ただそんな中、DeNAはここまでの企図数が54回で12球団最少。次いで少ないオリックスの68回よりも10回以上少ない。投手が打席に入るセ・リーグ球団としては、かなり異質な戦術をとっていると言えるだろう。
そのDeNAは成功率でも68.5%で最下位。12球団で唯一の60%台となった。さらに、巨人(73.1%)、阪神(75.3%)中日(78.6%)が70%台で続いている。巨人は企図数が12球団2位ながら成功率はワースト2位とかみ合っておらず、阿部慎之助監督も頭が痛いだろう。
一方、成功率トップは楽天で驚異の93.1%を記録し、唯一の90%超えとなった。企図数87回で5位と、パ・リーグ球団で唯一上位に食い込んだのも納得の数字だ。そのあとには日本ハム(87.7%)、ロッテ(86.1%)、西武(84.3%)が続く。
パ・リーグの6球団はすべて成功率80%以上を記録。バントに不慣れな投手がほぼ打席に立つことがない分、セ・リーグ球団より成功率が高く出る傾向にあることがわかる。
今季ヤクルトと巨人が企図数大幅増
ここまでは今季のバント戦術の傾向についてみてきた。では球団ごとにここ数年で戦術の変化はあったのだろうか。近3年の各球団の送りバント企図数を下表にまとめた。
今季ここまでのトップ2であるヤクルトと巨人がこの2年で大幅に増やしていることがわかる。今季このままのペースでバントを試みた場合、ともに2年前よりも60回以上増える計算になる。
巨人は就任1年目の阿部監督が今季の打線について「5番はバントもできる万能な選手を置きたい」と発言するなど、バントを戦略のカギに掲げていただけに、その采配が数字に如実に表れている。
一方のヤクルトは、2021年から高津臣吾監督が指揮を執っており、主力選手の顔ぶれもほぼ変わっていない中、これほどまでに方針転換しているのは珍しいのではないだろうか。2年前より「投高打低」に拍車がかかり、バントでランナーを進める戦法が有効と現場の肌感覚では感じているのかもしれない。
DeNAが昨季から大幅減も、ヤクルトとチーム得点はほぼ同じ
その2球団とは逆に、今季バントを劇的に減らしているのがDeNAだ。2022年は134回、2023年は151回と他球団と変わらない数字を記録していたが、今季前半戦は88試合を消化して54回。このままのペースでシーズンを終えると、12球団唯一の2ケタとなる88回となり、昨季の6割以下にまで減ることになる。
チームで1番多く犠打を決めているのは投手の東克樹で6個。チーム犠打数37個のうち投手だけで16個決めており、下位打線(7・8・9番)で29個とチーム全体の約8割を占める。上位打線では無理に送りバントで走者を進めることはせず、打線の中で比較的打力の劣る下位打線では得点圏に走者を進めることを優先しているようだ。
今季前半戦のバント戦術についてみてみると、各球団の首脳陣の意向が色濃く出ていた。ただ、12球団で最もバントが多いヤクルトと最少のDeNAの得点がそれぞれ307、308とほぼ同数でトップを争っている点も見逃せないだろう。果たしてどちらのチームの戦法が後半戦も多くの得点を積み重ねるのか、今後の戦い方にも注目していきたい。
※数字は前半戦終了時点
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記事:SPAIA編集部