JR船橋駅南口・東部で進む2大再開発。合計約1,700戸に及ぶ住宅が供給予定の都市再生プロジェクトを紹介
JR船橋駅とは
JR船橋駅(ふなばしえき)は、千葉県船橋市(人口約65万人)の主要駅の一つである。一日平均乗車人員は約13万人(2024年度)。この数値に、大宮駅や柏駅、船橋駅を結ぶ東武アーバンパークラインの利用者数を含めると一日平均乗車人数は約19万人に及んでいる。
同駅への乗り入れ路線は、JR総武線(快速・各駅停車)と東武アーバンパークラインである。また、同駅南側には、ペデストリアンデッキならびに再開発ビル「船橋FACE(フェイス)」を挟んで、京成船橋駅(2024年度一日平均乗車人数:45,436人)が位置している。
このため、船橋駅からは、東京駅や新宿駅、横浜方面、千葉駅・成田駅方面に加えて、柏駅・大宮駅方面、上野駅へのアクセス性に優れている。特に、都内の主要駅の一つである東京駅までは、JR総武線快速線の利用により約25分前後、京成上野駅までは約30分前後と、都内の主要駅まで短時間でアクセスできる利便性の高さが魅力である。
さらに、船橋駅を有する船橋市の人口規模は千葉県の県庁所在地である千葉市(人口約99万人)に次ぐ規模であるとともに、人口増加が進んでいる行政区域の一つでもある。
船橋市によると、2020年10月1日時点で約64.3万人であった人口は、2025年9月現在で約65.1万人と、約5年間で約8,000人増加している。また、2015年10月1日時点と比較すると約2.8万人増加している。
なお、総務省が毎年1月1日時点で公表している市区町村の人口動態によると、2025年は2024年に対し、3,899人の社会増、2,837人(外国人+200人)の自然減であった。この社会増数の数値は千葉市や松戸市、柏市に次ぐ規模となっている。
そのような中、同駅の南口および東部において、大型の都市再生プロジェクトが進行中である。本稿では、駅周辺で進められている事業のうち、規模の大きいプロジェクトについて紹介していく。
駅周辺で進行中の2大プロジェクトとは
はじめに、駅南口で進められている再開発を紹介する。JR総武線を利用したことがある人なら車窓から建設中の現場を見たことがあるかもしれない。以前、駅南口の西側には、西武百貨店船橋店が位置していたが、同店舗は2018年2月末に閉店し、その後大和ハウス工業が2021年に旧西武船橋店本館を取得している。なお、現在、同跡地では、タワーマンションならびに商業施設の建築工事が進められている。
続いて進められているプロジェクトが駅から東側に向かって徒歩約10分の距離に位置するJR船橋市場町社宅跡地である。同地では、住宅・商業施設開発が進められている。同プロジェクトは、東日本旅客鉄道株式会社、株式会社ジェイアール東日本都市開発、東急不動産株式会社の3社が共同で進めているもので、開発敷地面積は約4.5ha、総戸数1,000戸超の住宅、商業機能の導入が計画されている。
いずれも現地の造成工事等に着手しているため、現地での取材を踏まえてどのような建築計画なのか次項で解説していく。
駅南口でのタワーマンションの概要
はじめに、駅南口の旧西武百貨店船橋店跡地で進められているタワーマンションの建築計画を紹介する。
この事業では、大和ハウス工業株式会社東京本店(東京都千代田区)を代表事業者とし、東京建物株式会社(東京都中央区)ならびに京成電鉄株式会社(千葉県市川市)が建築主として参画。設計および施工は株式会社長谷工コーポレーションが担当する。
敷地面積は約0.7ヘクタール、延べ面積は約9万m2、建物高さは約193mに達する超高層の分譲住宅(一部、商業施設)が計画されている。また、同駅の位置する自治体である船橋市では、都市再生のプロジェクトの実現・推進にあたり、都市計画法で定める特定街区を活用し、空地確保と高度利用の両立を図っている。
また、完成予定は2028年3月としている。
現地に設置されている計画概要によると建築計画の概要は次のとおり。
<建築計画の概要>
・建物名称:(仮称)船橋本町一丁目計画 新築工事
・建物用途:共同住宅(677戸)、商業施設
・敷地面積:6,668.16m2
・建築面積:5,309.89m2
・延べ面積:89,897.69m2(容積率対象:59,997.84m2)
・建物規模:地下1階・地上51階、高さ193m
※出典:船橋市環境共生まちづくり条例第15条第1項に基づく標識(2025年9月26日時点)
住宅部分については、総戸数677戸が計画されている。
一戸あたりの専有面積は43.71〜134.02m2、間取りは1LDK〜3LDK、敷地は共有、建物は区分所有、土地の権利形態は所有権となる。引き渡し可能年月は2028年3月頃が予定されている。
※出典:プレミストタワー船橋公式サイト
(https://www.daiwahouse.co.jp/mansion/kanto/chiba/funabashi51)
駅東部のJR社宅跡地再開発の概要
次に、東日本旅客鉄道株式会社、株式会社ジェイアール東日本都市開発、東急不動産株式会社の3社が共同で進める大規模開発プロジェクトを紹介する。約4.5ヘクタールの土地を3つの街区に、それぞれ商業地区(約0.4ヘクタール)、複合地区(約1.2ヘクタール)、中高層住宅地区(約2.9ヘクタール)に分け、商業施設のほか、約1,000戸以上の住宅が供給される予定となっている。
船橋市では、開発計画に合わせて地区計画(都市計画法に基づくまちづくりツールの一つで、概ね街区単位で指定し、建築物等に対しきめ細やかな規制・誘導を図る)を指定している。同計画では、周辺住環境に配慮した建物用途規制(風俗営業系施設や物流施設、自動車修理工場等の建築制限)や一部で高さ制限の緩和等を行うことで、東西方向の歩行者空間の確保や地域に開かれたオープンスペースの確保などを図り、住環境に優れつつ環境や防災に配慮したエリアをつくろうとしている。
現地では、開発行為に係る工事が進められており、このうち、現時点(2025年9月26日時点)ではA-Ⅰ(店舗・住宅)およびA-Ⅱ街区(店舗)において建築計画の概要が明らかにされている。
また、完成予定は2028年12月としている。
<建築計画の概要(A-Ⅰ)>
・建物名称:(仮称)JR船橋市場町社宅跡地開発計画 A-Ⅰ街区 新築工事
・建物用途:店舗、共同住宅(274戸)
・敷地面積:9,164.01m2
・建築面積:3,766.73m2
・延べ面積:22,040.95m2(容積率対象:18,327.51m2)
・建物規模:地上13階、高さ42.33m
<建築計画の概要(A-Ⅱ)>
・建物名称:(仮称)JR船橋市場町社宅跡地開発計画 A-Ⅱ街区 新築工事
・建物用途:店舗、駐車場
・敷地面積:3,099.94m2
・建築面積:1,839.79m2
・延べ面積:3,822.59m2(容積率対象:3,058.07m2)
・建物規模:店舗棟・地上1階、高さ5.95m、駐車場棟・地上3階、高さ9.97m
※出典:船橋市環境共生まちづくり条例第15条第1項に基づく標識(2025年9月26日時点)
また、この大規模プロジェクトは、「うふふ、ふなばしプロジェクト」として、公式ウェブサイトが立ち上がっており、プロジェクトに関する最新記事やプロジェクトの概要などの情報が公開されている。
▶︎うふふ、ふなばしプロジェクト(https://sumai.tokyu-land.co.jp/ufufufunabashi/
JR船橋駅周辺のポテンシャル
船橋は、2025年2月にLIFULLが公表した「<首都圏版> 2025年 LIFULL HOME'S みんなが探した!住みたい街ランキング」において、“借りて住みたい街ランキングで30位”、“買って住みたい街ランキングで46位”にランクインしており、生活拠点として比較的高い人気を有している。
そうした背景には、まず商業利便性がある。
船橋駅周辺には、東武百貨店をはじめ、シャポー船橋やイトーヨーカ堂船橋店、船橋フェイスをはじめとした大型商業施設が多く集積している。さらに、公共交通機関を利用すれば、北側にはイオンモール船橋(東武アーバンパークライン新船橋駅)、南側の東京湾に面した位置には、ららぽーとTOKYO-BAY(JR京葉線南船橋駅)へ容易にアクセス可能となっている。さらに、駅から少し足を延ばせば、谷津干潟や三番瀬干潟といった豊かな自然環境が広がっている点も船橋の魅力を支えている。
また、都心等へのアクセス性に優れている。船橋駅から東京駅や品川駅、上野駅まで約30分前後、千葉駅までは約15分で到達できる。
このように交通利便性が高い一方で、中古マンションの相場は近隣の主要駅に比べて比較的落ち着いている。2025年10月1日時点のLIFULL HOME’Sのデータによると、総武快速線の隣駅であるJR市川駅やJR津田沼駅に比べて、約200万円低い3,093万円(市川駅:3,307万円、津田沼駅:3,308万円)となっている。
現在進行中の大規模な都市再生プロジェクトは、船橋駅周辺の価値をさらに高めることになる。本稿で紹介した開発計画が順調に進めば2028年末までに、新たに1,700戸近い住宅が供給される見通しだ。人口に換算すると、約3,600人(1700×船橋市の1世帯あたりの人員数2.14)となる。人口増加に寄与するため、同駅周辺では商業環境をはじめ居住者向けのサービス施設が充実していくだろう。今後も、東京圏において注目していきたい主要駅であり続けるに違いない。