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歌い続けてきた名曲が新たな光を放つ。活動20周年を迎えたMay'nのゴージャスなベストアルバム『TWENTY//NEXT』が誕生。輝き続けた“その先”へ見据えているものとは【インタビュー】

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

昨年のMay’n Road to 20th Anniversaryの道のりを経て、今年6月1日にデビュー20周年を迎えたMay'nが、ベストアルバム『TWENTY//NEXT』をリリースする。

加藤裕介氏とMay’n自身が共同でプロデュースした本作には、「キミシニタモウコトナカレ」「graphite/diamond」など代表曲14曲をRe-Recordingで新たに再構築した音源を収録。さらに、本名名義でのデビュー曲「Crazy Crazy Crazy」、大石昌良が描き下ろした「未来ノート」など既存楽曲6曲を加えた全20曲に加え、未来への一歩を感じさせるブライトな新曲「the SEA has dreams」(アズールレーン8周年記念ソング)もパッケージ。

これまでの歩みと“その先”をつなぐ、文字通り『TWENTY//NEXT』な一枚となっている。音と言葉に今の想いが込められており、“最新作”と呼ぶにふさわしいベストアルバムだ。

そして、10月には9年ぶりとなるシンフォニックコンサートが、さらに2026年3月からは東名阪ツアー「The BEST of May’n」も決定。新たな光に照らされたメイン☆ストリートは、これからも輝かしいものになるに違いない。

【写真】May'nがメインストリートに刻んだ軌跡。輝き続け、“その先”へ【インタビュー】

満足はない。だからこそ楽しい。

──いよいよ20周年ですね。まずは5月9日(金)に行われた「With you -Sheryl On Stage-」、10日(土)「With you -May'n Space-」のご感想をお聞かせください。

May'nさん(以下、May'n):20周年という節目については、10周年のとき以上に「ちゃんと実感しているな」と思っていて。あっという間の20年だったなという気持ちもありつつ、一曲一曲、丁寧に音楽を作って、大切に育ててきたことを今改めて実感しています。

今回のコンサートでは、これまでの感謝を込めつつ、「これからもこの曲たちと一緒に歩んでいくぞ」という決意もしっかりと表現できたと思います。それは「-May'n Space-」の時に歌った楽曲だけでなく、シェリル・ノームの楽曲も同じなんです。シェリルの曲を歌うときも、過去を振り返るというよりは「今」、そして「未来」を想っているので。だからこそ、何度歌っても「今が一番最強のシェリルだな」と思えるステージができているなって「With you」でも実感していました。

──1日目は、まさにシェリルが降臨しているようでした。まったく違う2日間だったことも印象的です。

May'n:改めて振り返ってみると、2日間で合計43曲を歌ったんです。シェリルの日(1日目)とMay'nの日(2日目)では、演出もまったく違っていて。自分の中で「今日はシェリルだから」と特別に意識しているわけではないんですが、それでも自然と姿勢や体の使い方、気持ちの入り方が変わるんですよね。まあ、自然と変わる部分もあるんですけど。

──あの濃密な演出の中、2日間で43曲を歌いきるのは本当にタフですし、まさにプロフェッショナルの極みだと思いました。

May'n:あの2日間はいろいろな人が遊びに来てくれていて、中には事務所の偉い方たちも観に来てくださったんですが、皆さん口をそろえて「20周年のアーティストの体力じゃないよね」と言ってましたね(笑)。「良かった!」「歌うまかった!」とかじゃなくて「元気だねえ」って(笑)。

──いや、本当にタフすぎますから(笑)。でも体力ゲージが年々更新されていっているような……?

May'n:ありがとうございます(笑)。でも確かに、今が一番元気だなって思うんです。今が一番体力があって、歌っていて一番楽しい。それを年々更新できている感覚があります。性格的にも常に「次へ、次へ」と考えるタイプで、逆に言うと、どこか常に「枯渇しているな」と思っているというか。20周年ライブのときも、「最高!120%のライブができた!」と思っていましたが、終わった瞬間から「次は何ができるかな」と考えていました。あまり浸ってはないんです。

「常に枯渇している=満足しきれない」というのは、裏を返すと少し寂しさや苦しさもありますが、だからこそ楽しいんだと思います。ある意味、このアルバムタイトル『TWENTY//NEXT』は自分の生き方そのものを表しているかもしれません。

──まさにアスリートのような考え方ですよね。いくら記録を伸ばしても満足できないというか……。

May'n:そう言ってもらえると嬉しいです(笑)。アスリートの生活をすごく参考にしているんですよ。私、小さい頃は水泳をやっていて、デビュー直前まで水泳選手を目指していたので。どれだけ良いタイムが出ても、「次はもっと速く」と常に自分を超えていくっていう、その考え方が染みついていて。そういうアスリート的な考えは今も根本は変わっていないんだと思います。

──その後は5月31日(土)に、アニメイトシアターで開催されたライブイベント『May'n Road to 20th Anniversary with アニメイト「With you -For you-」』もあって。

May'n:本当に贅沢な一日を過ごさせてもらいました! 「With you」は2日間の公演で豪華なセットリストを披露しましたが、それでも歌えない曲がたくさんありました。だからこそ「For you」では、ファンの皆さんからリクエストを募った曲を中心にセットリストを組んで、「あなたのために歌います」という気持ちを込めました。もちろん、それでもまだ歌いきれていない曲はあるんですが、それでも精一杯届けたい気持ちを込めました。

良き理解者との緻密な音作り

──先ほど「『TWENTY//NEXT』というタイトルが自分を表している」とお話されていましたが、このタイトルが降りてきたきっかけはどんなところにあったのでしょうか?

May'n:20周年記念のベストアルバムなので、普通にかっこいいタイトルをつけるよりは「20周年=20」をしっかり押し出せるようなタイトルにしたいなとは思っていて。でも、「20周年ありがとう」だけで終わるような感じにはしたくなくて、それよりも「次へ進む」という気持ちを込めたいと考えていたんです。それで「TWENTY」と「NEXT」という言葉を入れたいなと思っていました。そこはすんなり決まったんです。で、間にスラッシュを入れることで「20、そして次へ」という希望を感じさせるタイトルになるんじゃないかなって。

──そして今回、加藤裕介さんを共同プロデューサーに迎えてリアレンジされています。OPENREC「May’nの今夜はフルコースで」でも対談をされていましたが、改めて加藤さんと一緒に制作することになった経緯をお聞かせください。

May'n:加藤さんと最初にご一緒したのは、2021 年に配信リリースした「Follow Your Fantasy」(Cygames コーポレートアニメーションムービー)という曲で。それ以前から、好きな楽曲のクレジットを見て「また加藤裕介さんのお名前だ!」と気づくことが多くて、ずっと「いつかご一緒したい」と思っていたんです。

「Follow Your Fantasy」のときは、加藤さんが楽曲を作られていて、「この曲をMay'nさんに歌ってほしい」とオファーをいただいた形でした。だから、念願の加藤さんとご一緒できる!と本当に嬉しかったです。

で、その「はじめまして」の制作でご一緒したときに、加藤さんの細かいところまで音にこだわる姿勢に感銘を受けました。自分も細かいところまでとことん追求するタイプなので、「あ、この人は自分と似ている!」って。その時点である程度のキャリアが自分にあったはずなのに、久しぶりに気絶しそうになるくらい詰められました(笑)。

──あははは、あのタフなMay'nさんが。

May'n:そうなんですよ! レコーディングはスムーズでおなじみなんですけども(笑)。ただ、私自身もこだわりがあるタイプで。例えば「ここだけは機械に頼らず、生の声で表現したい」といったところがあったんですが、納得がいくまで何度も挑戦させてもらえる環境を、加藤さんが作ってくださったんです。当日は「めちゃくちゃ大変だな」って思ったんですけど、終わったときには「楽しかった!」という気持ちが大きくて。はじめましてだったけど、まるで一緒に戦い抜いた仲間ができたような感覚でした。そこでひとつ絆が生まれたというか。

そして、その後のミックス作業も本当にこだわりました。これほど時間がかかったミックスは10年以上ぶりじゃないかなというくらい(笑)。加藤さんも私もめっちゃこだわるっていう。正直、「この細かい差はリスナーには伝わらないかもしれない」と思うようなポイントもあるんですけど、絶対に妥協したくなかったんです。

そういう小さな部分にも愛情を注ぐからこそ……っていうこともあると思います。もちろん伝わる・伝わらないで妥協したことはこれまでもないですし、プロの皆さんは皆さんそうだと思いますが、加藤さんも、そうした想いを誰よりも理解してくださる方だと思っています。だからこそ、時間はかかる。でも楽しいなって。

加藤さんと出会ってから、自分が作りたいと思うときには「加藤さんにお願いしたい」と自然に思うようになりました。「ONEBLUE.」(2025年度中日ドラゴンズ ヴィクトリーショー使用曲)もそうでしたが自分のメロディを(コライトで)作っていただくこともあって。音楽って本当に感覚の世界なので、「これがかっこいい」「これがイケてる」という感覚が一致する出会いは、すごく大切だなと思います。

今回のアルバムでリアレンジをできるとなった際に、音楽的な面で信頼できるプロデューサーを迎えるなら加藤さんしかいないと確信していました。私は自己プロデュースをする立場ではありますが、自分が「これがいい」と思っていても、知識や言葉が足りずに表現できないことがあったときに、加藤さんはそれを察知して、「じゃあ、これだよね」と導いてくれる人で。

そういう信頼関係があったからこそ、今回の制作もお願いしました。制作の中で、実際に「これだよね!」という瞬間を何度も共有できて。自己プロデュースをさせてもらえた実感もあるし、加藤さんとだからこそ、ひとりではできない“その先”のリアレンジになったと思います。

──NEXTな音づくりに。やはり今回も制作には相当な時間がかかったのでは。

May'n:そうですね。レコーディングももちろん時間をかけていただけるんですが、特にアレンジの打ち合わせが想像以上に濃密で。最初は「事務所で軽くすり合わせましょう」と言って始めたのに、実際には3倍以上の時間がかかるんです(笑)。気づけば3時間ノンストップで話し合っていたりして。

方向性を確認したあと加藤さんが「このイメージならこのアレンジャーさんが合うんじゃないか」と提案してくださって、各アレンジャーさんが作業を進めるという流れだったのですが、アレンジャーさんから上がってきたものを加藤さんがブラッシュアップして、それが私のところに届く。その段階で、私も「ここをもう少しこうしたい」とリクエストを返して、さらに何度も往復する……という感じで。新曲を10曲以上同時に作ることは、これまでほとんど経験がなくて。打ち合わせから考えると、ずっと加藤さんと制作や相談をしながら走り抜けていた感覚があります。

──選曲と曲順は加藤さんも関わっていたんですか?

May'n:そこはすべて私が担当しました。

──May'nさんのこだわりを感じていました。リアレンジされた楽曲が本当に驚きで。原曲の良さを残しつつ、新しい疾走感があったり、逆にゆったりと聴こえたり……すごく不思議な感覚になりました。

May'n:ありがとうございます。私も、そして加藤さんも大事にしていたのは「決してリミックスにはしたくない」というところでした。変える意味をちゃんと持たせたい。でも変えすぎても原曲の魅力が失われるし、逆に変えなさすぎても意味がない。「どこを変えて、どこを変えないか」というバランスはすごく考えて、場合によっては盛るだけではなく、削ぎ落とすアプローチも大事にしました。

すべて発売してからずっと大切に育ててきた楽曲たちなので、ファンの皆さんが「ここは絶対大事だよね」と思ってくれるポイントは残しておきたかったんです。コンサートで自然に進化した部分を、リアレンジ版に反映させたいと感じる曲もありました。それとタイアップ曲なら、より深堀りするようなアプローチを意識しました。

例えばオープニング曲の場合は疾走感を大切にすることが多いですが、でも今回はオープニングとして流れるわけではないので、キャラクターの心情などにより深く寄り添う形にしても良いのかなって。

──「Ready Go!」も大きな変化がありましたよね。

May'n:そうなんです。「Ready Go!」は『オオカミさんと七人の仲間たち』の楽曲で、原曲のポップな雰囲気も気に入ってるんですけど、今回のリアレンジでは、仲間と一緒にニコニコ笑いながら旅をしているような、一歩ずつ歩んでいく感じを出せたと思います。

当時、シェリルでロックな曲を歌っていた流れで、ポップな「Ready Go!」をシングルで出すのは、自分にとって大きなチャレンジでした。ポップな自分が想像がつかなくて。でも、年月が経てば経つほど「すごく自分らしい曲だな」と思えるようになったんです。いろいろな曲を歌ってきた中で部員のみんなに伝えたいメッセージって、〈 ありのままでいい 好きなら好きと叫べばいい〉というシンプルな想いなんですよね。

──ライブで聴いていても、いまリリースしたと言われても遜色ない曲だなと感じていました。すごくMay'nさんらしい前向きな歌詞ですよね。

May'n:自分でも、May'nらしい曲だなと思います。そういうポジティブなメッセージが込められている曲って、他にも「ViViD」、「May’n☆Space」などがあるんですけども。「むしろこういう曲こそが一番自分らしい」と思える曲だなって。だからこそ「Ready Go!」はリアレンジも、自分らしさにこだわりました。

──時間も掛かったのでは?

May'n:14曲の中で一番時間がかかりました。アレンジは6テイクぐらい試して、「これだ!」と思える形にたどり着くまでに何度も挑戦しました。原曲もすごく好きでしたが、今回のリアレンジでさらに特別な存在になりました。

──「Ready Go!」から「Phonic Nation」までの流れには、ワクワクする気持ちになります。あの合唱が良いですよね。

May'n:ありがとうございます! 「May’n☆Space」と「Phonic Nation」の合唱は実際にファンの皆さんの声を収録しています「Hang jam」(May'n Acoustic Tour 2025)の名古屋公演の時に「ちょっと秘密のプロジェクトがあるんだけど、みんなのラララを収録してもいいですか?」と伝えて、みんなに声を録らせてもらったんです。

──「Hang jam」の時だったんですね!

May'n:その時点ではまだ詳細を言えなかったので、みんな「なんだなんだ?」っていう雰囲気の中で協力してくれました(笑)。部員のみんなの声をこうして楽曲に正式に収録するのは初めてだったので、20周年という節目のアルバムにみんなの声を一緒に収めることができたのは、本当に嬉しかったです。

──このアイデアはMay’nさんから?

May'n:そうです! 最初の事務所の打ち合わせのときに、急に思いついちゃって。「あ、そういえば再来週くらいに名古屋に行くので、そのときに録ってきます!」って(笑)。ほぼ思いつきだったんですけど、「いけますよね? いけますよね?」「じゃあいきましょう!」って(笑)。

──May'nさんならではの行動力……!

May'n自身の想いを軸に選ばれたメインテーマたち

──今作は20曲+新曲1曲という構成になっています。でも200曲以上の持ち曲があるMay'nさんが収録曲を20曲に絞るというのはかなり難しかったのでは。

May'n:迷いに迷ってこのラインナップに決めました。普通のベストアルバムなら、曲数にそこまでこだわらなくてもいいと思うんですけど、今回は「TWENTY//NEXT」というタイトルにした以上、数字に意味を持たせたくて。20周年のベストアルバムだし、リアレンジで新たな命を吹き込むというまた違う意味を持ったアルバムだったので、数字にはすごくこだわりたくて。それでどうしても「20+NEXT=21曲」にしたかったんです。

そこから選曲を考えたときに、「この曲を入れられないじゃん!」という葛藤がどうしても出てきました。シングル曲でも入っていない曲があったり、「このタイアップ曲を外すの?」と迷ったり……でも、アルバム曲の「Phonic Nation」など、絶対に届けたい曲もあるし。もしこのアルバムをきっかけに初めて聴いてくれる人がいたら、「未来ノート」も聴いてほしいな、と思ったり……。

それと、「キミシニタモウコトナカレ」から始めたいという流れは、歌詞に込められたメッセージも意識してのものでした。「前に向かって進んでいきたい!」という想いは「ViViD」や「graphite/diamond」で表現できるし、「大丈夫、これからもありのままでいいよね」という気持ちは「Belief」や「未来ノート」でも伝えられる。そうやって、いちばん届けたいMay'n自身の想いを軸にしながら、選曲をしていきました。

──今おっしゃっていた流れの部分でいうと、ディスク2が「You」から始まるというのも印象的でした。

May'n:そうなんです。ちょうど「With you」のライブ制作と同時期だったこともあって。もともと大好きな曲でしたし「You」はとても大切な曲だなと思っていました。歌う使命を感じるというか……。

この曲には「あなたはあなたのままでいいんだよ」というメッセージが込められていて、「Ready Go! 」とタイプは違うけれど、私が一番自分自身にも言いたいし、誰かに伝えたいことなんです。生きていると、誰かに合わせなきゃいけない場面が多いし、自分の信念があっても「これで良いのだろうか」とぐらぐらしてしまったり、嫌なのに無理して合わせてしまうこともある。

そんな中でも、せめて自分だけは自分を認めてあげたりとか、自分に優しくしたりってすごく大事だと思っていて。だから「You」をディスク2の最初に持ってくることで、「あなたはあなたのままでいいんだよ」というメッセージをとにかく伝えたかったんです。

振り返ると10周年のときには、こういう「これを伝えたい」という強い思いをまだ言葉にできていなかった気がします。感じてはいたけれど、あの頃は「みんなで楽しもう!」「盛り上がろう!」という気持ちのほうが強くて、メッセージという意味ではそこまで深く考えられていなかったというか。

当時は年上のファンの方も多かったので「宜しくお願いします頑張ります!」みたいな気持ちが強かった気がしています。もちろん今もその気持ちがないわけじゃなく、変わらず年上の方にも応援してもらっていますが、じゃあ歌手として何を伝えたいか?というところまで意識するようになりました。10周年のとき以上に「今回は何を伝えようかな」と考えて活動しているからこそ、「You」から始めるという選択は、個人的にすごく気に入っているというか。10代のときの自分にはできなかったことだなって。

だから、当時の自分だったら「おりゃー! みんなようこそー!」って感じだったと思う(笑)。でも「You」はあえて「たった一人のために歌います」という気持ちで歌った曲だったので。これはまさに、20年経った今だからこそできるスタートだと思っています。

──ディスク1の「キミシニタモウコトナカレ」で始まるのも良いですよね。

May'n:「キミシニタモウコトナカレ」は、私にとってのファーストシングルなので、始まりとしてすごく意味のある曲で。「May’n☆Space」とどちらを一曲目にするか迷ったんですが、「May’n☆Space」は(1枚目の)最後に持ってくることにしました。

私としては「キミシニタモウコトナカレ」のイントロのSEのような音が、過去と今を繋ぐように感じるんです。すごく「TWENTY//NEXT」な音だなって。アルバムのコンセプトそのものを表していると感じています。

「20年の歴史がここでちゃんとつながった」

──リアレンジされずに原曲のまま収録された曲もありますよね。特に原曲の「Crazy Crazy Crazy」(中林芽依名義のデビュー曲)が収録されているのも、このアルバムの特色のひとつです。

May'n:基本的に原曲で収録している曲は、比較的新しい曲なんです。「未来ノート」などもそうですが、2023年やそのあたりの楽曲なので、リアレンジというより「このままでいいかな」と思ったというか。

もちろん、リアレンジしている曲も原曲の良さを失わないようにこだわっていますが、年月が経っている曲ほど「今ならこうしようかな」「ライブではこんな風に変わっているよね」という部分が多いので、アレンジする意味があるかなと。逆に新しい曲は、すでに今の自分の気持ちが詰まっているので、そのままの形で残しました。

で、「Crazy Crazy Crazy」は10周年のとき(『May'n 10th Anniversary BEST ALBUM POWERS OF VOICE』)に「-May'n ver.-」として収録していて。で、今回のベストアルバムは「キミシニタモウコトナカレ」から始めるという強いこだわりがありつつも、本名名義から数えての20周年なので本名の曲も入れたいなと。

ただ、「Crazy Crazy Crazy」をまた「-May'n ver.-」で収録するのは違うなと思ったんです。本当は「-May'n ver.-」を入れてしまったほうが大人の事情を考慮すると楽なんですけども(笑)。だけど10周年でやってしまっているし、再度リアレンジしたらまた「-May'n ver.-」になってしまうし(笑)。かと言って、10年前の曲をまた収録するというのは、私のなかでなんか違って原曲を収録することに。

──レーベルの垣根を越えて収録するというのは、それこそ大人的には大変なことがいろいろとあるんだろうなと。

May'n:そうですね。当時のレーベルスタッフさんも今は別のところにいらっしゃるので、スムーズに「収録OK」とはならず、ずっと「本当に収録できるのかな」という状態が続いていました。でも、たくさんの方が協力してくださって、最終的に収録が実現したんです。今回のアルバムはリレコーディングにはすごくこだわったんですが、15歳のときの本名時代の歌声をこのアルバムに収めることができたのは本当に嬉しいです。

しかも、当時は配信がなかったので、今回が初めての配信リリースでもあって。当時のシングルを持ってくれているMay'nのファンの方もいるようなのですが、ほとんどの人は初めて聴くと思います。20年の歴史がここでちゃんとつながったな、と感じています。

──個人的にはディスク2に「アオゾラ」が入っているのが嬉しいなって。

May'n:あっ、やっぱりさすがですね(笑)。部員からも言われました。「アオゾラ」はタイアップ曲ではありますけど(TVアニメーション『BTOOOM!』EDテーマ)シングル曲ではないので、入ってくると思わなかった方が多かったみたいですが、私の中では全然意外じゃなくて。むしろ「シングルじゃなかったんだ」と並べたときに気づいたくらいでした。もちろん、シングルのバラード曲にも好きな曲がたくさんあって、入れたかった曲も多かったんです。例えば「Re:REMEMBER」とか。

でも「アオゾラ」は当時から歌詞が本当に大好きで。究極の愛だと思っていて、年齢を重ねるごとにその意味の重みが増して、より伝えられる曲になっていったんです。プラス、この曲は海外でもすごく人気があって、ツアーでイントロが流れるととても大きな反響があるんですよね。ファンの皆さんに愛されている曲だと実感しています。だからこそ、今回この曲を収録しました。

「the SEA has dreams」で描いたあおの世界

──そして青をテーマにした新曲「the SEA has dreams」がすごく爽やかで壮大なんですけども、なんか泣けてしまうんですよね。

May'n:ああ、分かります。明るいんだけどちょっと泣けるというか。加藤さんと一緒に作らせていただきましたが、本当に「加藤さんは天才だな」と思います(笑)。でも、泣かせるバラードにはしたくなかったんですよね。

──制作の経緯を詳しくうかがってもよろしいですか?

May'n:20周年を記念した曲を絶対に作りたいという気持ちがあって。全体的に今回、バラードが少ないんですけど、でも新曲をバラードにはしたくなかったんですよね。「ありがとう、これからもよろしく」といったバラードにしてしまうと、どうしても泣きの曲になってしまうだろうなって。それで自分で作っても良いなと思ったのですが、未来が開けるような曲にしたかったので、そこで「これは加藤さんにお願いしよう!」と決めました。

そんななかで、『アズールレーン』の8周年テーマソングの話をいただいたんですよね。『アズールレーン』のタイアップは「graphite/diamond」以来だったのですが、アニバーサリーだからこそ、「明るい曲をお願いします」と言われていて、それだったら私が作りたい20周年曲と同じテーマだし、『アズールレーン』側も「May'nさんの20周年の想いを込めていただいて良いです」といったことをおっしゃってくれていて。『アズールレーン』のキーワードを入れ込みつつ、自分の20周年に対する感謝や未来への気持ちを込めながらも、前向きで明るい楽曲になったと思います。

──MVもまさに明るい印象ですよね。考察しがいのある内容でもあり。

May'n:ありがとうございます! 青が綺麗で、そこに私らしいカラフルさも入れてもらいました。さらに、May'nマークの水色・ピンク・黄色を花びらに使っていただいたんですが、監督に「合わせてくれたんですよね?」と聞いたら「たまたまです」って(笑)。でも「うんMay'n(運命)」ってみんなで盛り上がりました。

──うんMay'n!(笑)「青」はMay'nさんにとって特別な色である、ってことをここ最近のライブでもお話されていて。

May'n:そうですね。「BLUE」という曲があって、当時は青が「つらい色」という印象があったのですが、「WE ARE」を作ったときに「もう青はつらくない、幸せの色だ」と思えるようになって。青にまつわるそのストーリーは完結していたのですが、今は「その青をもっと増やしていきたい」という気持ちになっています。青で歌詞を描くというのは『アズールレーン』的にも合うし、私のカラー的にも合うなって。

──しかも「青」と一言にいっても一緒くたにはせず、いろいろな表現が使われていて。

May'n:〈碧〉〈藍〉〈青〉……それぞれの“青”に持たせる意味や見え方を意識して、場面ごとに使い分けています。1番と2番では『アズールレーン』の中国語表記に使われる“あお”を(〈碧〉〈藍〉)、3番では笑顔を映した“あお”をイメージして、もっとシンプルな「青」を使いました。

──タイトルはどのようなイメージでつけられたのでしょうか?

May'n:『アズールレーン』は海がテーマなので、タイトルに「SEA」という言葉を使ったのですが、私自身の感覚としては、“海”というワードで括ってしまうことに少し迷いもあって。でも英語の音だけで聴くと「シー・ハズ・ドリームズ(she has dreams)」にも聞こえるので、「彼女は夢を持っている」っていう意味にも取れるなと思って。それなら自分の想いにもつながるし、このタイトルにしようと決めました。で、耳で聞いたとき、文法的にもおかしくないようにtheをつけてこの表記にしました。

──〈いつまでも終わらないよ/the SEA has dreams〉という言葉で結ばれる曲が最後にあるからこそ、「NEXT」を強く感じますね。

May'n:この曲で終わっているからこそ、ただのベストアルバムではなく、「これから」を感じる作品にできたと思います。20年間歌い続けられていることって本当にすごいなって思っていて。10周年のとき以上に……ここにたどり着けたことに誇りにも思っています。でも、それで終わりではなくて、「じゃあ、これからの10年、何をしよう?」と。

あれもあったしこれもあったしと過去を振り返るよりも、未来の白紙のページに何を書き込もうかという気持ちが強いです。だからこそ、「ありがとう」で終わるのではなく、「終わらないよ」という言葉で締めくくりたかったんですよね。

──今、May'nさんが見ている「次のページ」はどんな色なんでしょうか?

May'n:ああ……何色なんですかね。でも、最近すごく思うのは、「青」も無限にバリエーションがあるし、その時々の気持ちで見え方が変わるんですよね。だからひとつ色を決めるにしても、いろいろな曲が歌えるなって。

最初はR&Bでデビューして、その後シェリル・ノームとして「歌姫」としてのスタートを切って、その後ロックと出会い、ポップで笑顔を届ける曲とも出会って。でも昔から続けているブログでは10代のテンションで、部員のみんなはMay'nさんの素の部分を誰もが知ってるっていう(笑)。

10代の頃は「かっこいい自分になりたい!」と思っていたけれど、かっこいい自分がしっくりこない瞬間もあって、かと言ってMCも苦手だし……って状態で。とにかく「音楽が好き」から始まったので、当時は「何を伝えたいか」までは分かっていなかったし、言葉にするのも難しかったです。

昔は「これがしたい!」と思っていても、「前のインタビューではこう言ったのに」とブレることに不安を感じていたけど、今は「それでいい」と思えるようになりました。

──でも、そうやって人は変わるのが当たり前ですもんね。

May'n:そうなんです!「前のインタビューではこう言ってたけど、今は意見が変わっちゃった」なんてことも全然あり得るし、むしろ自然なことだと思います。大事なのは、そのとき「やりたい!」と思ったことを形にすることなのかなって。もちろん、周りの方と意見を交換しながら進めますが、「これがかっこいい!」とその時々に自分が感じた気持ちは大切にしながら活動をしたいなって思います。

だから、次にこれをやりたいです、って決めていることはないけれど、このアルバムを通じて、より自己プロデュースに自信が持ったんですよね。それは加藤さんのおかげではあるのですが、「これがいけてる!」と確信を持っている部分を先行で届けたところが、部員のみんなにもちゃんと伝わったんです。みんなの反応を受けて、さらに自信を持つことができました。だからこそ、これからも「かっこいい」と思えるものを大切に、楽しく活動していきたいです。そういう意味では、「カラフル」はずっと私のテーマかもしれません。

これからも「今、伝えたいことは何だろう?」と自分の心を深く掘りながら音楽を作っていきたいし、ステージに立ちたいです。

──今回のアルバムを聴いて10月12日に行われるシンフォニックコンサート「TWENTY Around for You」がさらに楽しみになりました。どんなコンサートになりそうですか?

May'n:なにげにシンフォニックコンサートは9年ぶりなんですよ。今だからこそできるシンフォニックがあると思っています。最近特に「余白を楽しめるようになったな」と感じていて、それは年齢や経験のおかげかなと思います。詰め込む良さもあるけど、「音が鳴っていない時間」や「空気が震える瞬間」にも美しさがあるなって。

あと最近は肩の力を抜けて音楽を作れるようになったんですよね。以前は「地声で出せます!」「裏声に逃げません!」みたいな、変なプライドがあったんですけど(笑)。今はどっちでも良くない?って。それよりも「この曲では何を伝えたいか」が大事で、楽しくみんなに聴いてもらえるのが大事だなって。

だから、コンサートではCDとは違うアレンジや表現がたくさん出てくると思います。しかもシンフォニックはしょっちゅうできるわけではないので。シンフォニックだからこそできる贅沢な表現を、一曲一曲、楽しみながら届けたいです。

May'nデビュー 20周年記念ベストアルバム『TWENTY//NEXT』

発売:2025年8月13日(水)
価格:CD+Blu-ray 5500円+税/CD Only 4400円+税

収録:
【DISC1】
M.1 キミシニタモウコトナカレ(Re-Recording)
M.2 Scarlet Ballet(Re-Recording)
M.3 ViViD(Re-Recording)
M.4 LIES GOES ON
M.5 シンジテミル(Re-Recording)
M.6 Belief(Re-Recording)
M.7 ストロボ・ファンタジー
M.8 オレンジ
M.9 Crazy Crazy Crazy
M.10 May'n☆Space(Re-Recording)

【DISC2】
M.1 You(Re-Recording)
M.2 graphite/diamond(Re-Recording)
M.3 今日に恋色(Re-Recording)
M.4 Brain Diver(Re-Recording)
M.5 Chase the world(Re-Recording)
M.6 アオゾラ(Re-Recording)
M.7 蒼の鼓動
M.8 Ready Go!(Re-Recording)
M.9 未来ノート
M.10 Phonic Nation(Re-Recording)
M.11 the SEA has dreams(スマホアプリゲーム『アズールレーン』8周年記念テーマソング)

 

 

『May'n 20th Anniversary Symphonic Concert 「TWENTY Around for You」』

日程:2025年10月12日(日)
開場/開演:[昼公演]13:30/14:30・[夜公演]17:30/18:30
会場:東京芸術劇場コンサートホール
チケット発売:
Board Walk:https://ticket.tickebo.jp/sn/Mayn-symphonicconcer_ip
キョードー東京チケット:http://tickets.kyodotokyo.com/mayn
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/mayn-20th-anniv/
イープラス:https://eplus.jp/mayn/
ローソンチケット:https://l-tike.com/mayn/(Lコード:74522)

May’n 20th Anniversary Special Website
https://twenty-next.jp/
May'n オフィシャルサイト
http://mayn.jp/
May'n X
https://twitter.com/mayn_tw
May'n STAFF X
https://twitter.com/MaynStaff
May'n 公式YouTube
https://www.youtube.com/user/MaynOfficial
May'n OPENRECチャンネル「今夜はフルコースで!」
https://www.openrec.tv/user/maynfullcourse

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