鉄塔が目印の、みんなの居場所! 世田谷区「のざわテットーひろば」は唯一無二の地域の遊び場
住宅地の真ん中にそびえ立つ、高さ47.8mの白い送電鉄塔。その足元にあるのが、細長いかたちの不思議な広場「のざわテットーひろば」だ。赤ちゃんからシニアまで幅広い世代が集えるこの遊び場は、いかに誕生したのか。
みんなの居場所、心のふるさと
子供も大人も親しみを込めて“テットー”と呼ぶそこは、住宅地に突如現れ、幅10m×奥行き50mと独特な細長い形をしている。「のざわテットーひろば」は乳幼児を中心とした遊び場として2002年にオープン。地域住民グループのNPO法人により運営されている。が、珍しいのはここが私有地であること。隣に住む山縣恒子さんが大家さんだ。
「この土地にマンションの建設が計画されたんです。近隣の方は集会を開くほど反対で、うちも敷地のすぐそばに建つから困って。悩んだ末に夫が買い取ることにしたんです」
土地の活用法を模索し続けた山縣さん。プレーパーク(冒険遊び場)の存在を知り、関係者に話を聞いたり現地を見てもらい、「細長いから乳幼児向けの遊び場はどうか」と助言を受け、思いは定まった。自ら近隣住民に要望のアンケートを取り、見学会も開いた上で開園したという。
「最初は名前もなかったけれど、だんだん子供も増えて、プレーリーダーとかシステムも整って。こんないい場になるとは思いませんでした」
禁止事項はほぼなく、ボール遊びも木登りも泥遊びも自由! それを見守り、時に一緒に遊ぶのが常勤のプレーリーダー・野本美優さん。さらに地域住民のボランティアが日替わりで“お当番”を務める。
「ここに来る子は年上の人と話すのが上手! お当番さんにはママ世代もおばあちゃん世代もいて、小さい頃から家族以外の大人やお兄さん・お姉さんと関われる。テットーだからこそのコミュニケーション力だと思います。また、ママさんも、私が子供と遊んでいる間に子育ての相談もできて、ゆっくりできると言ってくれます。それが私にとってもうれしいですね」と野本さん。
生まれて22年が経ち、今や「テットーで僕も遊んでました!」と我が子を連れて来る人も訪れるという。「のざわテットーひろば」は単なる遊び場を超えて、みんなの居場所、心のふるさとになってゆく。
のざわテットーひろば
住所:東京都世田谷区野沢3-14-22/営業時間:10:00~16:00(2~10月は~17:00)/定休日:木・日/アクセス:東急電鉄東横線学芸大学駅から徒歩12分、東急電鉄田園都市線・世田谷線三軒茶屋駅から小田急バス「駒沢陸橋」行き約8分の「野沢交番前」徒歩5分
取材・文=下里康子 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2025年1月号より