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トンボコープ 初のワンマンライブで示した“進化し続けていきたい”というバンドの姿勢

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トンボコープ

トンボコープ 1st ONEMAN LIVE「BUTTERFLY EFFECT」
2024.04.13 恵比寿 LIQUIDROOM

この日、恵比寿リキッドルームに集まった人はラッキーだ。2024年4月13日、トンボコープの1stワンマンライブ『BUTTERFLY EFFECT』。二度とない“初めて”を共有したいファンの熱意で、チケットは早々にソールドアウトだ。

ステージ前に下りた紗幕、暗いままの照明、息を呑むほど力強いギターロックバラード。いきなりの新曲「鼾」(いびき)で集中力を高める。堂々と歌い切ると雪村りん(Vo)の「トンボコープ 1st ONEMAN LIVE 『BUTTERFLY EFFECT』始めます。どうぞよろしく!」という一声で、一気に幕を切り落として「ストーリーモンスター」で明るく激しくぶち上がる、鮮やかなオープニング。続けて雪村りんが「最高の夜にしよう!」と叫び、林龍之介(Dr)が満面の笑顔でリズムを刻む。そらサンダー(Gt)がお立ち台に駆け上がって気合たっぷりのソロを弾く。見た目はいかついがプレーは繊細、でかそ(Ba)がしっかりビートを支える。「くだらないこと」のアップビートなサウンドに合わせた手振り、手拍子、合唱が一体感を生む。ステージの上も下も楽しむ気満々だ。

「初ワンマンをここでできることがめっちゃ嬉しいし、ソールドアウトしたことを誇りに思います」

やや緊張気味に見える雪村に対し、いきなりスマホを取り出して客席を撮り始めるでかそ。キャラ丸出しの自由なMCのあとは、「独裁者」「風の噂」「信号花火」と、アップテンポで踊れる曲を連ねて波に乗る。背景に飾られた、巨大なバンドロゴの電飾が七色に光る。「みんな飛べるか!」と、雪村が煽る前から待ってましたと言わんばかりに観客みんなが飛んでいる。結成2年、曲数もライブ本数もまだ少ないのにしっかりと曲が浸透している。ステージの下から上へ、私たちが盛り上げるんだ、という熱意が伝わる。

「2年前、このメンバーで結成して、初めて作った曲を歌います」

「俺にとっては初心に戻れる曲です――」。雪村の気持ちのこもった曲紹介からの「サンポリズム」に続けて「夢の10年後」を歌ったことにはたぶん意味がある。まだ未来があやふやな夢の始まりから、はっきりと未来を意識した夢の続きへ。明るく無邪気にはずむ曲調から、ぐっと胸の奥に迫るバラードへ。「夢の10年後」ではオーディンスに動画撮影を許可して、「しんどい時に見返して」とメッセージを送る。《正直に生きてみよう》。ありふれた言葉がありふれない力に変わる。トンボコープは歌詞に重きを置くバンドだ。その言葉がライブではっきり聴きとれるのは、技巧よりも説得力に重きを置く、率直でパワフルな雪村の声のおかげ。そして、それを支えるバンド全体のバランスだ。

感情を込め歌い終えると約3分ほどの中間SEが流れ、会場内は完全に暗転。何が起こるのだろうという緊張感のある空気が流れる。SEが鳴り止み曲が始まると前半のモノトーンの服から、4人それぞれにカラフルな服に着替えたメンバーが、もう1曲新曲を披露する。雪村がアコースティックギターを弾いて歌う新曲「ルッキンバッカー」は、ループする打ち込みのビートに生バンドのノリを掛け合わせた新境地。トンボコープの前、雪村がソロで歌っていた頃の楽曲のリメイクで、バンドでやるつもりはなかったがメンバーに「いい曲じゃん」と言われてやることにした、というエピソードが微笑ましい。BAND=バンドの意味は、様々なものを繋ぎとめて一つにまとめるもの。トンボコープはバンドそのものだ。

ここでMCを迎えるとでかそのシャツの前ボタンが掛け違えになっていてみんなで大笑い。でかその明るいキャラはバンドのお守り、かもしれない。「後半戦、ついてこれるのか、オイ!」と、雪村がちょっと強気な言葉で煽ってみせる。ここから3曲は、トンボコープの最もラウドで尖った一面をさらけだすセクションだ。激しくロックする「PARADIGM」、中間部にそらサンダーとでかその楽器バトルを組み込んだ「明日の一面」、そして強烈な四つ打ちのキックで踊らせる「過呼吸愛」。ポップな曲だけじゃない、ハードな曲もガンガンやる。「新たな一面を見せるとずっと言ってきた、それがこういうことです」と、歌い終えた雪村が誇らしげに言う。残すはあと2曲。

「アルバム制作で細かいところにこだわるのも楽しいけれど、ライブではそんなことがどうでもよくなるような、はっちゃけた音楽がやりたくなる瞬間があります」

「バンドを始めてから2年間の喜怒哀楽を歌に乗せて全力で届けます。あなたも喜怒哀楽をその声に乗せて聞かせてください――」。最新ミニアルバム『ファースト・クライ・ベイビー』のラストを飾る「喜怒哀楽」は、この先もきっとライブのハイライトになる、手拍子と合唱で全員が一つになれるアンセムだ。まぶしい光と音が会場をいっぱいに包み込む幸せな空間。そして、ライブ本編を締めくくる最後の1曲はまたしても新曲だ。“進化し続けていきたい”というバンドの姿勢をまっすぐに示す、ポップでキュートな、ちょっぴり切ないラブソング「恋はいたずらに」。みんな歌詞にじっと耳を傾けている。ゆったりと揺れるリズムが心地よい。後味がとても爽やかで清々しい。

アンコールのステージに一人で現れた雪村が、思いを込めて「むかしむかし」を歌う。ソロの弾き語り時代、観客がほぼゼロ人だった頃と今とを比べ、感慨深いと本音を漏らす。若いながらも歴史あり。トンボコープを動かすエンジンは4機あるが、メインエンジンはやはり、雪村の個人的体験に基づく強力な自意識ではないか。一言で言うと、腹が座っている。

再びステージに揃った4人が、楽しそうにはしゃいでる。でかそがスマホを取り出して、エアドロップでみんなとコミュニケーションを取ろうとしてちょっと失敗してる。グッズ紹介で盛り上がる。初めて解禁された秋の1stワンマンツアーの日程に、大歓声と拍手が湧く。メンバーとファンの年齢層が近いせいか、トンボコープのライブにはサークルの仲間のようなアットホームな親近感がある。

ラストは「Now is the best!!!」からバンドバージョンの「むかしむかし」へ、宵越しのパワーは残さずに使う熱演で拍手喝采のフィナーレ。およそ100分の“初めて”をやり切った4人の表情が、現時点の満足と未来への期待で輝いて見える。一緒に記念撮影に収まるファンもみんな笑顔。次の“初めて”は、9月から始まる『1st oneman live tour「WORLD ILLUMINATION」』だ。いくつもの初めてを積み重ねてトンボコープは加速中。ファンにとっては今が一番楽しい時期だろう。体験するなら今だ。

取材・文=宮本英夫 Photo by Ryohey

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