様々な形状の<魚の歯>に注意! 噛まれたら痛いだけじゃない魚たちの口の中事情
魚に噛まれて「思ったより痛かった!」という経験をしたことはありませんか?
見た目がかわいい魚でも、意外に鋭い歯を持っている種も少なくありません。実際に筆者も痛い思いをしたことがあります。
しかし、痛いだけならまだマシなのかもしれません。一口に魚の歯といっても実に様々な種類があり、危険な形状の歯を持つ要注意な魚たちもいるのです。
サカナの歯の種類と役割
一口に「魚の歯」といっても、その形状や役割は魚の種類によってさまざまです。魚は環境に応じて、最適な歯を持つように進化してきました。
ニッパーのようなくちばし状の歯
魚の中にはくちばしのような風変わりな歯を持つものもいます。
フグ科はその代表例で、甲殻類などの硬い生き物もバキバキと砕いて食べる捕食者です。釣りにおいても、フグ科の歯は脅威であり、細いハリスで張ればスパスパと切ってしまいます。
また、小さな個体でも強靭な歯を持つため、扱いには注意が必要です。
クロダイのすり潰す臼状の歯
貝や甲殻類を食べる魚では、硬い殻を砕くための臼状の歯が見られます。
代表的な種類はタイ科クロダイ属に分類されるクロダイです。
本種は顎の前方にやや尖った歯を持ち、側部には臼歯が数列並ぶことが特徴。貝類や甲殻類、多毛類などを食べる雑食性で、水中映像では強い力でアサリをバリバリと砕く姿が観察されています。
なお、タイ科の識別では歯の形状や配置が重要で、多くが臼歯を持つものの、キダイ亜科のように円錐歯しか持たないグループもあるようです。
タチウオの鋭い歯
ナイフのような鋭い歯の持ち主として、タチウオやサワラが有名です。
タチウオもサワラも、食用としてメジャーなため市場ではもちろんのこと、釣りの対象にもなります。この鋭いは魚が死んだ後も危険で、指で少し撫でるだけでも簡単に傷口を作ってしまします。
生きたタイウオやサワラの歯に触らないことは当然ですが、死んだあとでも油断せずに注意しましょう。
鋭い歯を持つ危険な魚たち
魚の中には、人間が触れると本当にケガをするレベルの「危険な歯」を持つ種類もいます。代表的なのは、ピラニア。
南米アマゾン川に生息し、鋭い三角形の歯がズラリと並んでいます。群れで動き、小動物を骨にしてしまうほどの強靭な咬合力があることで有名です。日本近海でも注意したいのが前項でも登場したタチウオ。名前の通り太刀のように細長い体を持ち、鋭くカミソリのような歯で獲物を切り裂きます。
釣りの現場では「手を出すと危ない魚」として有名で、油断して触ってしまうと出血することもあります。
また、ウツボやアイゴのように、噛む力が強い・毒針を持つなど、複合的に危険な魚もいるため、水中や水槽内での扱いには十分注意が必要です。
人間も要注意? サカナに触れるときのポイント
魚に触れる際、基本的に口に手を入れるのはNGです。
観賞魚でも、一部の種はエサと間違えて指を噛むことがよくあります。力が弱くても、魚の歯は薄い皮膚を簡単に傷つける鋭さを持っているので、注意が必要です。
とくに子どもやペットがいる環境では、予想外の動きに注意し、なるべく網やピンセットを使うなど、安全な方法で接しましょう。
サカナの口の中に注目してみよう
魚の歯は、その魚がどんな環境で、どんなものを食べて生きているのかを示す「生きた図鑑」とも言えます。
見た目に惑わされず、魚の生態や口の構造に興味を持って観察してみると、ますます魚の世界が楽しくなります。安全を第一に好奇心を持って魚との付き合いを楽しんでいきましょう。
(サカナトライター:せんば千波)