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『教皇選挙』の気鋭監督と強力タッグ!コリン・ファレルがNetflix『端くれ賭博人のバラード』とキャリアの転機を語る

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『教皇選挙』の気鋭監督と強力タッグ!コリン・ファレルがNetflix『端くれ賭博人のバラード』とキャリアの転機を語る

コリン・ファレルが語る自身のキャリアと主演最新作『端くれ賭博人のバラード』

『西部戦線異状なし』(2022年)、『教皇選挙』(2024年)のエドワード・ベルガー監督がコリン・ファレルと組んだ、現在Netflixで独占配信中の新作『端くれ賭博人のバラード』。マカオのカジノを舞台に、ギャンブル狂いの主人公が次第に歯止めが効かなくなり身を滅ぼしていく様を、あでやかな色彩の洪水と喧騒のなかで描く。

Netflix『端くれ賭博人のバラード』独占配信中

先日チューリッヒ映画祭で、傑出した俳優に贈られるゴールデン・アイ賞を受賞したファレルが、本作の撮影と自身のキャリアを振り返った。

コリン・ファレル ©Andreas Rentz Golden Icon Award_Zurich Film Festival2025

「この物語は本当にユニーク」

――本作に惹かれた理由

じつはベルガー監督のことは、彼が『西武戦線異状なし』を撮る前から知っていたんです。ベネディクト・カンバーバッチが主演したドラマシリーズ『パトリック・メルローズ』(2018年)を観て、語り口が非凡な監督だと思いました。それで彼が世界的にブレイクする前から『端くれ賭博人のバラード』を一緒にやろうと話していました。

本作に惹かれた理由? それはぼくにとって多くの場合がそうであるように、脚本が素晴らしかったから。最初に読んだとき、これまでやってきたどんな作品とも異なると感じました。俳優として自分はふだん、「次に何を目指そう」とか「キャリア形成とは何か」といったことは考えていません。自然と、まだ探究していない領域に惹かれます。

この物語は本当にユニークで、その個性とダイナミズムに衝撃を受けました。一気に読み終えたけれど、同時に吐き気を催すような感覚もあって(笑)。とても騒々しくてカラフルで大げさで、繊細なところなんてまったくなかったからです(笑)。

エドワード・ベルガー監督、コリン・ファレル ©Joshua Sammer_Zurich Film Festival2025

――マカオでの撮影と自分のキャラクターについて

マカオはとても奇妙な場所です。まさに東洋のラスベガス。エッフェル塔の3分の1ぐらいの塔やビッグベンが並び、やかましくてセリーヌ・ディオンが1日中流れている。自分がどこにいるのか感覚が麻痺するほどです。

Netflix『端くれ賭博人のバラード』独占配信中

もともとマカオはふたつの島に分かれていたんですが、政府が埋め立ててひとつの大きな島になり、カジノが立ち並んだ。でも、その向かいのタイパとコロアンという島は古いエリアで、まったく異なります。コロアンは18世紀、ポルトガル人が訪れた古い漁村で、教会や家族経営のレストランが並ぶとても魅力的なところでした。僕が演じるロード・ドイルという役は、ギャンブル中毒で肉体的にとても消耗するものだったので、週末はこういう静かな地域を訪れて息抜きしていたんです。

Netflix『端くれ賭博人のバラード』独占配信中

ドイルという男は絶え間ない不安と熱狂的な高揚感に駆られ、一種の躁状態にある。それは孤独と人生の意味の欠如から生まれたものだと思います。彼は誰とも繋がりを持てず、精神的に真空状態にある。唯一、彼が変われる可能性を見出すのがファラ・チェンの演じるキャラクター、ダオ・ミン。僕はファラとのシーンを演じるのが好きでした。映画の大半でドイルが陥っている狂気とは異なり、キャラクター同士のあいだにほんの少し、優しさと静けさがもたらされたから。

Netflix『端くれ賭博人のバラード』独占配信中

「キャリアの転機が訪れたのは、たぶん『ヒットマンズ・レクイエム』から」

いまやマーベル映画からヨルゴス・ランティモス監督のようなエッジの効いた作品まで、縦横無尽に活躍するファレル。だが子供の頃は、父親と同じサッカー選手の道を目指していたというのは有名な話だ。

――映画がもたらしくれるもの

13~14歳頃まで、父の影響もありサッカーに夢中でした。でも、その後グレて次第にサッカーから遠のき、演劇科に進んだ姉の影響で、この世界に飛び込んだんです。

もともと映画は大好きでした。映画がもたらす現実逃避が好きだったし、映画のおかげで人間の本質について多くのことを学んだと思います。狭い世界しか知らない自分に、別の時代や場所を文化的に覗き見る機会を与えてくれたし、映像や音響に没入することで他の方法では得られない体験を与えてくれました。

最初は『インディ・ジョーンズ』シリーズや『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のファンでしたが、そのあとヴィム・ヴェンダースやウォン・カーウァイ、マイク・リーといった監督たちの作品を知ることになります。リー監督の『ネイキッド』(1993年)を観たときの衝撃はいまでも忘れられません。デヴィッド・シューリスの演技は、文字通りぼくの魂を揺さぶりました。

――キャリアのターニング・ポイント

20代から30代にかけては仕事に没頭していました。休む間もなく、プロジェクトからまた次のプロジェクトへ。スティーヴン・スピルバーグやジョエル・シュマッカーといった監督のもとで仕事ができたのは幸運でした。自分が子供のときから観てきたトム・クルーズやアル・パチーノのようなスターと共演するのは、クレイジーな体験でしたね。

そういうハリウッドにどっぷり浸かったところから自分のキャリアの転機が訪れたのは、たぶん『ヒットマンズ・レクイエム』(2008年:ゴールデン・グローブ賞コメディ/ミュージカル部門の主演男優賞を受賞)からだと思います。ギャング映画でも冴えない男の役柄(笑)。(共演の)ブレンダン・グリーソンとはソウルメイトのような関係になりましたし、マーティン・マクドナー監督のことを完全に信頼できました。彼は他のどの監督とも異なる視点でぼくという人間を見てくれた。彼に負うものは大きいです。

その次はヨルゴス・ランティモス監督ですね。彼の『籠の中の乙女』(2009年)を観て驚嘆しました。彼はまったく異なる世界、異常で心をざわつかせる世界を創造する。それは観る者にとって気持ちのいいものとは言えないかもしれないけれど、同時にその核心には現代人が経験する真実が宿っていると思います。

『籠の中の乙女』が公開されて1年ぐらいした頃、エージェントから連絡があって、『ロブスター』(2015年)の脚本が回ってきたんです。とても魅了されたけれど、いったいどんな映画になるのか正直想像もつかなかった。ランティモス監督も唯一無二の監督だと思います。彼と出会えたこともまた、とてもラッキーでした。

「他の俳優たち、監督たち、クルーたちと一緒に物語を紡ぐことが大好き」

来年は50歳を迎えるファレル。これまでゴールデン・グローブ賞を3度受賞し、いまや賞レースの常連とも言える彼だが、どんな賞よりも作品自体が最高の報酬だと語る。

――40代になってわかったこと

賞を頂いておきながらこんなことを言うのも気が引けますが、俳優にとって最高の報酬は作品それ自体だと思います。25年ぐらいやってきて、以前より自分が何かを知っているとは思わないし、創造の表現というものはひとつとして同じものは存在しません。

Netflix『端くれ賭博人のバラード』独占配信中

20代前半は、あまりにもいろいろなことが突然起こって、僕はとても未熟でまったく心の準備ができていなかった。状況に飲み込まれるのが怖かった。自分はそれらのことに値していないとも思いました。でも49歳になったいま理解したのは、特定の幸運が降りかかることで具体的に得るものなんてないということです。

ただひたすら、ひとつひとつ努力を重ねていくだけ。それに自分は他の俳優たち、監督たち、クルーたちと一緒に物語を紡ぐことが大好きなんです。それがこの仕事の純粋な喜びですね。

コリン・ファレル ©Andreas Rentz Golden Icon Award_Zurich Film Festival2025

取材・文:佐藤久理子

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