前島亜美『Wish for you』インタビュー――"喜怒哀楽"を1st Singleに込めて前島亜美のすべてを届ける
──昨年11月にリリースしたデビューアルバム『Determination』に続く1st Single『Wish for you』はご自身がキャストとして出演するTVアニメ『公⼥殿下の家庭教師』のオープニングテーマです。アーティストとして、声優として、TVアニメ作品に関わることをどう感じていますか?
「人生って不思議だなって思いました(笑)。かつて深夜アニメに張り付いて、オープニングとエンディグを聴いて、CDも買いに行って。そんなオタクをしていた学生時代からは考えられないです。私が声優になって、アニメのオープニングを歌って、クレジットに載るなんて…。あの頃からの夢でしたし、嬉しいという気持ちと同時に、責任を持って頑張らなくちゃという思いがあります」
──まず、TVアニメ『公⼥殿下の家庭教師』について聞かせてください。どんな作品になっていますか?
「「Wish for you」の1サビで<ときめきに溢れてる毎日だから>って歌詞があるんですけど、この一言がとっても『公⼥殿下の家庭教師』(以下『公女殿下』)を表していると思っています。本当にまぶしいんですよ。純粋な恋心もそうですし、夢をひたむきに追いかける、努力するまぶしさの二軸があって。人との関わり合いで生まれる温もりや繋がりも素敵だと思いますし、魔法を使ったバトルもあって。物語はヒロインのティナちゃんが魔法が使えないっていうところから始まるんですが、いろんな人との出会いを経て、だんだんと使えるようになった魔法で戦っていく少女の背中がカッコいいんですよ。日常生活で疲れてしまっている方がこの作品を見た時に照らしてもらえる。押し付ける明るさではなくて、そっと寄り添ってもらえるような眩しさがある。“こういう生き方って素敵だよね”と思える作品でもありますし、ときめき要素も充実していて。可愛い女の子がたくさん出てくるので、本当に全てを押さえている作品だと思います」
──あみたさん演じるカレンはどんな役柄ですか?
「主人公のアレンくんとは血のつながらない妹なんです。アレンくんは普通の人間なんですけど、カレンちゃんはケモ耳と尻尾が付いてるオオカミ族っていう種族出身の女の子で。今は学校の生徒会の副会長も務めているしっかり者なんですけど、まだオオカミ族に対する偏見や冷ややかな目線が残っていて…。それをカレンちゃんも分かってはいるけど、負けずに凛として、生徒会としての仕事を全うしています。そのまっすぐさ、誠実さみたいなところもすごくカッコいいです」
──可愛い女の子がたくさん出てきますよね。
「そうですね。その中でカレンちゃんはちょっとボーイッシュな一面やクールな印象がある女の子です。あと、生徒会では先輩になるので、水瀬いのりさんが演じられているステラと2人で一歩引いてる、お姉さん的なポジションです。みんなを見守っている立ち位置でもあるんですけど、お兄ちゃんを他の人には取られたくないので、たまにはぐいっといって。“お兄ちゃん、もっと私とも話してよ!”みたいなデレれる瞬間もあったり、とても可愛い子だと思います」
──アフレコはどうでしたか?
「緊張しながら頑張っています(笑)。みなさん、初めましての方なんですけど、ずっとアニメでお見かけしていた、第一線で活躍されている方がたくさんいらっしゃって。ご一緒させていただけることが光栄でしたし、学ぶことがとても多くて、日々充実しています。その中でも水瀬いのりさんと岡咲美保ちゃんが同じキングレコードなので、すごく人見知りで何もしゃべれないでいる私に、“チームキングだから仲良くしよう!”って言ってくださって。アフレコ終わりに3人でご飯にいかせてもらいました」
──みなさん、優しいですね。
「そうなんですよ! “実は私、人見知りで…”って言ったら、“察しました”って誘っていただきました。岡咲美保ちゃんはお誕生日が一緒なんです。年齢は私が1つ上なんですけど、美保ちゃんの方が先にキングでデビューしていて、すごく姉御肌なんです。“悩みがあったら何でも言って!”って言ってくれるくらい心強くて。レーベルの先輩とも仲良くできているのが嬉しいです」
──声優アーティストとしてデビューしてから輪がどんどん広がっていってますね。
「少しずつ知り合いが増えてきて嬉しいです」
──そして、オープニングテーマ「Wish for you」はアニソンらしいポップロックで、ときめく恋心を歌うラブソングです。最初に受け取ってどう感じましたか?
「コンペで選んだんですけど、“この出会いを待っていた!”みたいな出会い方だったんです。一度聴いただけで、私は“絶対にこの曲がいい!”と思って。今、言われた通り、ザ・王道アニソンですし、1st Singleっぽさもあります。ストリングスも入っているので、高貴で上品な感じが『公女殿下』の世界観にも合っていて。“キラキラと清涼感のバランスが神がかっている!“と思いました。しかも、メロディーが素敵なので、ルンルン聴いちゃうんですけど、歌詞をじっくり読んでみると、素敵な言葉がたくさん並んでいるんですよ。メッセージ性もあって、歌っていてとても気持ちが入ります」
──ヒロインのティナ視点でしょうか? 前島さんはどう捉えましたか?
「私も最初は“ティナちゃんの目線だなぁ”って思ったんですけど、アフレコをしていく中で、『公女殿下』は1人1人の女の子をちゃんと掘り下げてくれるんですよ。その子の現在地とか、悩みや葛藤、そこから踏み出す姿みたいなのも1人1人ちゃんと見せてくれます。だから、どの女の子の目線に立っても通じるところがあって、誰が歌っても違和感がないような言葉になってるのかな?と思います」
──アニメに寄せた楽曲になっているとは思うのですが、<途方もない憧れの中に一筋の光>や<次は貴方を照らす星になりたい>という“光”や“星”が入ってるフレーズは、再び歌って踊ることを決意した前島さんとも重なるように感じます。ご自身で共感した部分はありましたか?
「あります。<手を伸ばす>も「Determination」と通じる部分があって。“繋がっているなぁ”と思いますし、私は2Aの<夢を見るために資格は必要ない>っていう言葉がとても好きです。夢を見るために資格は必要ないですし、年齢も気にしなくていい。“いつからでも始められるんだ”っていう言葉は、今の私の気持ちとも重なります。あと、Dメロの<自分を信じることは 誰かを信じることよりもずっと難しい>っていう…“まさにだな!”って共感できる言葉なので、歌っていてすごく気持ちが込めやすいです。ただキラキラ歌っているだけじゃない、想いが乗る言葉なので大切だと思います」
──レコーディングはどんなアプローチで臨みましたか。
「タイアップソングなので、“ちょっと可愛い声がいいかな?”、“キャラっぽい感じの方がいいのかな?”、“カレンちゃんっぽさみたいなのって必要なのかな?”とか…すごく手探りで始まったんですけど、すごく時間をかけて、最終的には“作る”というよりは“ナチュラル”に、“ただ、この想いをストレートに伝える”ってことをメインに歌っていきました。ただ、サビを何回も録っていると、<何十回 何百回>、<何千回 何万回>がゲシュタルト崩壊してきて(笑)。“ちゃんと発音できているかな?”って難しさや、“これでいいのかな?”という不安はずっとありました」
──どうしてですか?
「実は制作が早かったのでデビューアルバムの制作と同時進行でやっていたんです。まだデビューしていない状態で作っていたので、“これでいいんだろうか?”って思いながら帰った記憶があります。だから、今と比べると拙い部分がきっとあると思うんですけど、それもフレッシュさというか…。その時にしか録れなかった歌というところがファーストシングルっぽさもあっていいのかな?と思っています」
──楽曲がアニメの絵についたものは見ましたか?
「まだ見ていないんですよ。でも、本編中に裏でオープニングが流れる演出があった話数があって。Vチェックしている時に全然知らずに、アニメのすごくいいシーンで、イントロが始まった時にちょっと泣きました。“うわぁ、本当にオープニングなんだ!”と思って嬉しかったです。だから、これが実際にテレビで流れたら、私はどうなっちゃうんだろう?って思っています。ちょっともう、言葉にならないんですよ。オタク時代の自分に伝えてあげたい…」
──(笑)ご自身のMVも制作されているんですよね。
「はい。超王道のキラキラミュージックビデオです。花冠をつけて、歌って踊って、お花と戯れ、真っ白という感じです」
──歌って踊ることについては、ご自身ではどんな思いですか?
「「Determination」でも振り付けを作って踊る案も出ていたんですけど、1発目だし、自分で作詞もしましたし、歌に全集中で表現するミュージックビデオを作ったんです。でも、やっぱりどこかで“踊りたかったな”って思いもあって。「Wish for you」はアニメファンの方々に知ってもらう、初めてましての曲なので、私がどういう人なのか?っていうことを詰め込むには“踊りたい!”と思って、キラキラの声優アーティストとして頑張りました」
──振りのポイントなどありますか?
「振り付けは12歳の頃からずっとお世話になっているASAMI先生に作ってもらいました。『公女殿下』も見ていただいて、その空気感も取り込んでいただいて。サビの頭に“アイラブユー”というハンドサイン(人差し指でI、人差し指と親指でL、人差し指と薬指でU)を入れていただいたり、ハートも出てきたり。そこが推しポイントです!」
──さらにカップリング曲として 「劇薬」、「アミュレット」が収録されています。
「“1st Singleで自分のすべてを見せよう“というテーマがチームの中であって。初回限定盤に『前島亜美1st LIVE Blue Moment supported by animelo』のライブ本編映像を入れたのもそのためなんです。そして、「Wish for you」が光だとしたら、2曲目の「劇薬」は影。歌って踊ることを想定して、ライブで盛り上がるように作ったんですけど、自分のダークな部分を表現した、パンチ力や爆発力のある曲になっていて…」
──いろんな声色で歌っていますね。英語のパートはラップにもなっていますし。
「歌の先生にアドバイスを求めた時に、“ちゃんみなさんみたいに色気もありつつ、魂で叫ぶように歌うのもありかもね”という提案をしていただいて。“とにかくちゃんみなさんを勉強して行きなさい”って、レコーディングに送り出されました(笑)。なので、ちゃんみなさんを意識してレコーディングしましたし、サビの中でがなりもたくさんやっている、強い曲になっています」
──自分の中にある怒りや疑問をぶつける曲になっていますよね。
「光と影であると同時に、“私のすべてを見せる”って考えた時に、“喜怒哀楽”を表現することが分かりやすいのかな?と思って。喜びと楽しさは「Wish for you」で歌えているので、「劇薬」は怒り。そして、最後に哀れみのようなものを歌にできたら、すべてを出し尽くしたと言えるんじゃないかと思って」
──3曲目「アミュレット」は前島さんが作詞を手掛けています。「Determination」、「Azurite」に続いて3作目となりますね。
「メロディーがそんなしっとりしすぎているわけでもなく、リズムはちゃんとある曲なんですが、ほのかに哀愁を感じられるような音だったので、“このコンセプトでいけるかな?”っていう想いで自分で歌詞を書きました。暗くなりすぎない、晴れやかな決別というか…温かな儚さみたいなものを表したくて」
──タイトルの「アミュレット」というのは?
「“お守り”っていう意味です。知り合いに“あなたは口癖が「お守り」だよね”って言われたことがあって。私はよく、“お守り”っていうことを言葉で言ってるみたいなんです。“確かにそうかも!“って気付いた後、自分にとってのお守りってなんだろう?って考えた時に、いつもつけている指輪とか…そういう物理的なものもあるんですけど、それよりも”言葉“が自分のお守りだなっていう想いが強くあって。いろんな人にもらった言葉や本で読んだ言葉。何にも頼れなかった時に、”言葉“に一番助けてもらったなぁっていう想いで、”言葉のお守り“をテーマに書いていきました」
──どんなメッセージを込めていますか?
「20代後半になってきて、なかなか会えなくなった人が増えてきている気がして…。旧友とか地元のお友達とか、同期とか。すぐに会えるタイム感ではなくなってきてしまったけど、元気でいてくれたら嬉しいなって思うんです。すぐには会えないけど、一緒にいた時間にもらった言葉だったり、それによって動いた自分の心が、やっぱりお守りみたいに自分の中にずっとあって、今も元気をもらえてる、活力をもらえてるって感じて」
──決別はしているけど、お守りとして持っている?
「人付き合いをすると、必ず別れがあるじゃないですか。分かりやすく言うなら恋愛なのかもしれないですけど、友達だったり、職場においても、環境の変化で会えなくなることはあると思うんです。私の場合で言うと、マネージャーさんが変わる時、その別れがすごく刺さるんですよ。ずっと時間を共にしてきた、同じ熱量で同じ目線を持っていた仲間がいなくなってしまう…会えなくなってしまうみたいなことって、すごく寂しくて」
──仕事仲間や友達だと、最後は喧嘩別れで終わるということもあります。
「例えば、あまり良くない終わり方をしてしまった時に、それまでの幸せだった思い出までもが全部、嘘だったっていうことにはしたくないじゃないですか。その人に言ってもらった言葉が、本心で言ってたのか、嘘だったのかは関係なくて。その時にもらった言葉自体と、その言葉をもらった時に動いた自分の心が本物なんだっていうことの方が重要で。その気持ちだけは大事にしたいですし、その言葉をお守りとして持っていたい。全部がお守りというか…それがあるから、今の自分ができているんだと思います」
──光と影、喜怒哀楽のすべてを詰め込んだ3曲が揃って、ご自身としてどんな1枚になりましたか?
「私はずっと、“いいものを作りたい”ってすごく思っているんです。でも、常に“これでいいんだろうか?”とか、“これで良かったのかな?”とか、不安な気持ちがたくさんあって。でも、そんな時は、大尊敬してる南條愛乃さんからもらった“時が経てば経つほど、どんどん可愛くて仕方ない作品たちになっていく”っていうお言葉を思い出すようにしています。まだ自信が持てない部分もありつつ、でも、“ベストを尽くしたんだ!”っていう想いで、この1枚も自信を持ってお届けしたいです。そして、実際に世に出て、いろんな方の目に触れて、感想を聞いて、また自分がどう思うのかが楽しみです」
──デビューアルバム、ファーストコンサート、ファーストシングルとソロアーティストの活動を1周してみて、今はどんな心境ですか?
「やっぱり“楽しいな“と思いました。”ものを作るのってこんなに大変なんだ”っていうプレッシャーは毎回、感じているんですけど、その分、自分の音楽が作品としてできていくことに嬉しさを感じています。“ありがたいな”と思うと同時に、やっぱり欲も出てきて…。もっといいものを作りたいです。“まだそんな夢を持てるんだ!?”というか、いろんな目標ができました」
──では、この先の未来はどう考えていますか?
「長く続けたいです。“いいものを作りたい”っていう“ものづくりの楽しさ”も知れたので。アーティスト活動を地道に頑張っていきたいのと、作詞をもっとしっかり勉強しようと思っています。自分が書きたいことだけじゃなくて、メロディーと親和性の高い文字を持ってくる力とか、プロの作詞家さんが生み出すパワーも学んでいきたいです。いろんな作詞家さんだったり、シンガーソングライターさんを勉強しようと思っていて。歌唱力ももちろんなんですけど、作詞も頑張っていきたいです!」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑 慧嗣
RELEASE INFORMATION
2025年7月23日(水)発売
KICM-92167/7,700円(税込)
前島亜美『Wish for you』
2025年7月23日(水)発売
KICM-2167/1,540円(税込)
配信>>>前島亜美『Wish for you』
EVENT INFORMATION
1st Single 「 Wish for you 」発売記念スペシャルイベント トーク ミニライブ
2025年8月8日(金) 池袋 Club Mixa
1st Single 「 Wish for you 」発売記念リリースイベント トーク 特典お渡し会
2025年8月9日(土) 東京都 AKIHABARA ゲーマーズ本店 6F イベントスペース
開場12:30 /開演 13:00
2025年8月9日(土) 東京都 アニメイト秋葉原 1号館 7F
開場15:30 /開演 16:00
2025年8月10日(日) 愛知県 オルバースビル 3階
開場11:30 /開演 12:00
2025年8月10日(日) 大阪府 アニメイト大阪日本橋 5F イベントホール
開場17:00 /開演 17:30
LIVE INFORMATION
2025年11月24日(月・休) 東京 ヒューリックホール東京
前島亜美 LIVE 2025 Blooming NOTE