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暖冬こそ「ドカ雪」に注意!令和の大雪のメカニズムと対策

TBSラジオ

今回は気象予報士の増田雅昭さんをお迎えし、お話をお伺いしました。

増田:実は、東京都心で雪の日数が多いのは2月。平均で3.5日。チラっとした雪も含めてですが、8日に1回くらいは雪が降ります。真冬は、関東の場合は乾燥した晴天が続いて、低気圧はあまり来ないですが、真冬をすぎて、春先に向かうようになると低気圧が来やすくなります。それが2月です。関東の平野部に雪をもたらす低気圧は、本州南岸を通るコースなので、「南岸低気圧」と言います。

いちばん雪が降った時代はいつ?

ここで、雪に関するクイズを出題!前橋と宇都宮での雪の観測データから問題です。この2つの都市で、最も積雪量が多かった記録があるのはどの時代でしょうか?

①明治 ②大正 ③昭和 ④平成

正解は「平成」!

増田:実は、2014年2月。10年前ですね。関東各地、2週連続で大雪になったんです。みなさんは覚えていますか?宇都宮の、観測がある約130年間で、最も雪が積もったのがこの時で32センチ。前橋でこの時に更新された記録が73センチ。それまでの記録が37センチだったので、ほぼ倍に。山梨県の甲府は、冬は晴れることが多い地域なんですが、この時に1m14cm積もりました。 それまでの記録が49cmだったので、大幅な記録更新になったんです。

Q:温暖化と言われている中、なぜ近年の方が、“ドカ雪”が多いのでしょうか?
増田:温暖化が進むと、トータルの雪の量は減る、でも、ドカ雪は増えると言われています。気温が上がると、当然、雨になりやすいので、ひと冬のトータルの雪の量は減ります。でも、空気の性質上、気温が上がるほど、ふくむことができる水蒸気量は増えます。ということは、雪や雨のもととなる水蒸気が増えれば、降る量は増える。雨で落ちてくれば「冬にしては雨が強く降るなぁ」くらいですが、ぎりぎり0℃以上にならず、雪のまま落ちてくれば、ドカッと大雪になるわけです。私は、天気の仕事を1999年からしているのですが、1990年代は、それまでに比べて、雪が降らなくなってきたと言われてました。東京も、20cmを超えるような大雪はなく、00年代は、せいぜい降っても10cmに届くかどうかでした。このまま気温上昇が進んで、さらに降らなくなるのかなぁとも思われていたなか、2010年代に20cmを軽く超える大雪が何度か降ったのです。

Q:“ドカ雪”で怖いのは災害ですよね?
増田:転倒事故、交通事故がすごくたくさん起こりますし、交通機関も混乱します。あと、雪って気温がすごく低いとサラサラですが、関東の雪は違いますよね。重い雪です。ドカ雪が降ると、カーポートが壊れてその下敷きになったり、屋根からの落雪事故もあなどれません。災害は天気だけで起こるのではなく、天気×社会です。砂漠でドカ雪が降っても災害にはなりません。人が多い地域、そして不慣れな人が多い地域に降るほど、混乱が大きくなります。今後、雪が降る回数が少なくなり、不慣れな人が増える一方で、たまにドカッと大雪が降ると、今まで以上の災害となってしまうおそれがあります。

Q:そんな“ドカ雪”。予報士さんがしっかり予報してくれる?
増田:ただ、南岸低気圧の雨か雪かは、本当に予報が難しい。上空の気温がたった1℃、いや0.5℃違うだけで降るものが変わるというのが現実!予報の精度は、昔よりは良くなっていますが・・・2013年の成人の日。3~4日前から大雪のおそれと予報されていました。迎えた当日、朝、雨だったので、気象庁は「大雪のおそれはなくなりました」と発表。しかし、日中から雪になり、東京都心でも8cm積もってしまったんです。油断してからの雪で、大きな混乱となってしまいました。さらに、その半月後くらいに、また南岸低気圧が来て、気象庁は「大雪のおそれがあります」と予報しましたが、結果は雨のまま終わることに。その際、ある政治家が「狼少年は許さない。今度外したら責任を追及します。」とツイッターにあげて、大きな騒ぎになったこともありました。関東の雪は、まだ絞り込むのが難しい予報ということをぜひご理解いただきたいです。台風が直撃するという予報のとき、風・雨の強さは地域にもよりますが、備えはしますよね。台風と同じく、関東の雪も、ケガ人があいつぐなど一種の災害です。地域によって降るものが変わりますが、備えはしていただくのが良いと思います。雪が本格的に降るまでに移動してしまうとか、通行止めや立ち往生に巻き込まれるかもしれないので、車以外の方法を考えるとか。行動を変えることで防ぐことができる災害です。  

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