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花咲心優「“演じる”ではなく“生きたい” 真っすぐな声で心を届けたい」【声優図鑑 by 声優グランプリ】

声優グランプリ

キャラクターの裏に隠された声優たちの素顔に迫る、インタビュー企画『声優図鑑 by声優グランプリ』。

今回登場していただいたのは、TVアニメ『不遇職【鑑定士】が実は最強だった』でクラウディア役を務めた花咲心優さん。

人前に出ることが苦手だった彼女が、“声を通して生きる”という表現に出会い、やがて「演じる」ことに全力で向き合っていくまでの道のり。自身の弱さとも向き合いながら、一つひとつの役と丁寧に向き合ってきた彼女の姿からは、揺るがない芯と温かな誠実さがにじみ出ています。初レギュラーとなった『不遇職【鑑定士】』で得た学び、役を演じることへのこだわり、そして声優としての未来。静かに、けれど力強く夢を追いかける彼女の“今”をひも解きました。

花咲心優

はなさきみゆ●1月28日生まれ。大阪府出身。BLACK SHIP所属。主な出演作は、アニメ『不遇職【鑑定士】が実は最強だった』(クラウディア)、『妖怪学校の先生はじめました!』(瑠莉)、『パズドラ』(転生ラクシュミー)ほか。

公式HP:https://www.blackship.jp/female/miyuhanasaki/
X:@MiyuHanasaki

★花咲さんの手書きプロフィール公開中!

三森すずこさんがきっかけでした

――まずは、声優を目指すようになったきっかけを教えてください。

明確に「声優になりたい」と意識し始めたのは、高校3年生の時です。もともと「なろうかな」「やっぱりやめようかな」と、何度も気持ちが揺れていて。そんなときに、友達から「声優の体験説明会があるから、一緒に行かない?」と誘われたのがターニングポイントでした。人前に出るのが得意じゃなかったし、自分には向いていないんじゃないかと思っていたんですが、実際に演技をしてみたら、すごく楽しくて……。「あれ? 私、これならできるかも?」って。あの時の不思議な自信が、今につながっている気がします。

――演技は、もともと興味があったんですか?

実は全然そんなことはなくて。自分が声優になろうとは、昔は全然思っていなかったです。でも、ある日CDショップで偶然見かけたライブ映像に衝撃を受けたんです。『ラブライブ!』のステージで、三森すずこさんが歌って踊っていて、思わずそのグループ名をメモ帳に書いて、家に帰って調べました。そしたら、「この人、声優さんなんだ!?」って。それまで「声優=アニメの中の人」というイメージだったので、まさかこんなに表舞台でも輝いているなんて知らなくてびっくりしたのを覚えています。

――声優を目指し始めたのはそこからですか?

はい。自然と気になって観るようになって、気づいたらどんどんハマっていました。泣いちゃったり、感動したり……。「こんなふうに演技で人の心が動かせるんだ」と気づいてから、声優という職業が、私の中でどんどん大きくなっていったんです。当時はスマホも今ほど普及していなかったので、家のパソコンを立ち上げて、検索して、アニメを観て……と、すごく新鮮で特別な時間でしたね。お気に入りのキャラクターをマネして一人でセリフをつぶやいたりもしていました(笑)。

――進路として声優を選ぶ前は、別の道を考えていたんですよね。

はい。高校2年生の途中までは、製菓系の学校に進もうと思っていました。お菓子作りがすごく好きで、家でも行事のたびに何か作っていましたし、母も「娘はパティシエになるんだろうな」と思っていたみたいです。実際に製菓のオープンキャンパスにも行って、楽しくお菓子を作って帰ってきて、「楽しかったー!」ってめちゃくちゃうれしそうに話していました(笑)。でも、心の奥ではやっぱり声優という存在が気になっていて……。あの体験説明会を経て、「やっぱりこっちに行きたい」と決意が固まりました。

――ご家族にはどう伝えたんですか?

私は昔から、大事な話をするときは「一緒にお風呂入ろう」と母を誘うクセがあって(笑)。このときもそうでした。湯船に浸かって、しばらく黙っていたんですけど……泣きながら「本当は声優になりたいかもしれない」と打ち明けました。母は最初びっくりしていたみたいですが、「そこまで本気なら応援するよ」と言ってくれて。その後、体験で演技してるところを実際に見せたら、「これは本気なんだな」と伝わったみたいです。私自身、親に対してあまり感情をさらけ出すタイプではなかったので、涙ながらに思いを伝えたのは人生で初めてでした。だからこそ、あの時の会話は一生忘れられないですし、自分の覚悟が決まった瞬間だったと思います。

――高校卒業後には専門学校と養成所に通われていたんですよね。

高校卒業後は専門学校に進学して、さらに今の事務所の養成所にも通わせていただきました。毎日がとにかく刺激的で、「声優になるってこういうことなんだ」と気づかされることばかりで。入学当初は「とにかく演技を頑張ろう」と思っていたんですが、実際は演技以外にも必要なことがたくさんあって……。たとえば、マイクワーク一つとっても、タイミングや動き、マイクの奪い方、相手との距離感。そういう技術的な部分にすごく驚きましたし、自分の未熟さを痛感する毎日でした。

――実際の収録現場に近い実習などもあったんですか?

授業の中でアフレコのシミュレーションをしたり、グループで収録を体験したりすることもありました。最初はマイクの前に立つだけで頭が真っ白になってしまって、自分の声がちゃんと出ているかもわからないくらい緊張していて……。セリフを読むだけじゃなくて、誰がどこでしゃべって、どう動くかを常に意識しなきゃいけない。台本をただ読むのではなく、そのキャラクターとして生きなきゃいけない。そのことに気づいてから、ようやく“声優を目指している自分”から“声優になりたい自分”に切り替わった気がします。

――学校生活や養成所での学びの中で、特に心に残っている言葉や出来事はありますか?

たくさんありますが、一つ強く覚えているのは、事務所のオーディションを受ける直前に、講師の方からかけていただいた言葉です。その時、私は自分の強みが何なのかもわからなくなってしまっていて、「どう見せたらいいんだろう」「どこをアピールすればいいんだろう」と、ずっと悩んでいたんです。そんな私にその先生が、「あなたはそのままでいいんだよ」と言ってくださって……。その瞬間に自分で自分にたくさん鎧を着せていたことに気づいたというか、「無理に演じる必要なんてないんだ」と心がほぐれていく感覚がありました。その言葉にすごく背中を押されて、泣きながら帰ったのを今でもはっきり覚えています。

“役として生きる”ことを大切にしていきたい

――初めての実際の収録現場はどんな様子でしたか?

ものすごく緊張しました。初めてお仕事でマイクの前に立ったのは、ちょうどコロナ禍の時期だったのですが、台本を持つ手が震えてしまって、紙がガサガサと音を立てて、ペーパーノイズが入ってしまったんです(笑)。「すみません、すぐに震えを止めます……」と思わず言ってしまったくらい。今思えばすごくおかしいけど、その時はとにかく必死でした。声を出すのも精いっぱいで、「私、今ちゃんとしゃべれていたかな?」とか、「このキャラの感情、ちゃんと出せていたかな?」とずっと反省会をしていました。でも、現場の空気を実際に感じたことで、「ここが自分の立ちたい場所なんだ」と思えたのも事実です。収録が終わって帰る道すがら、緊張と達成感と、全部がごちゃ混ぜになって泣きそうになっていました。

――『不遇職【鑑定士】が実は最強だった』のレギュラー出演が決まった時は、どんな気持ちでしたか?

驚きと不安とうれしさと……正直、いろんな感情が入り混じっていました。「本当に私でいいんですか?」と思いましたし、クラウディアというキャラクターがとにかく明るくて元気で、私自身とは正反対のタイプだったので、最初はかなりプレッシャーを感じていました。でも、クラウディアを演じていくうちに、自分の中にある元気な部分や素直な感情みたいなものを少しずつ引き出していけた感覚があります。収録は自分のテンションも2段階くらい意識的に上げて臨んでいましたね。

――演じるうえで、特に意識していたことは?

とにかく、彼女の持っている真っすぐさやピュアな気持ちを自分の中からちゃんと出していくことを意識していました。テンションが高いだけじゃなくて、その奥にある気遣いや優しさみたいなものもちゃんと声に込めたくて。原作の漫画も読み込んで、「このセリフを言うとき、彼女はどんな気持ちなんだろう」とか、「このとき彼女の心は誰のほうを向いているんだろう」って、行間を想像しながら感情の裏側を作る作業を大切にしていました。そういう細かい部分まで考えられるようになったのは、多分この作品に出会って、クラウディアという役と向き合ったからこそだと思います。

――声優として、日々の役作りやお芝居で大切にしていることは何ですか?

セリフを“言う”というより、“その人として自然に出る言葉にしたい”と常々思っています。台本に書かれたセリフの意味をただ理解するだけじゃなくて、その人物の人生や背景、性格の機微を想像して、内側から出てくるように声を届けたい。そのために、普段から人と話すときもよく観察するようになりました。「この人はどうして今、こういうテンポで喋ったんだろう」とか、「どうして目をそらしたんだろう」とか。何げない会話の中にこそ、感情のリアリティがあると思うんです。そういう積み重ねが、自分の演技の引き出しになっていくんじゃないかなって。まだまだ勉強の途中ですけど、“役として生きる”ということを、これからもずっと大切にしていきたいです。

思いきってゲーミングPCを買いました(笑)

――最近ではX(旧Twitter)も始められたそうですね。

そうなんです(笑)。今年からXを始めました。ずっと始めるタイミングを迷っていたんですが、事務所の方から「そろそろどう?」と声をかけていただいて。ちょうどアニメの告知も増えてくる時期だったので、「今しかない!」と思って年始から始めてみました。でも、SNSって難しいですね(笑)。日常的な投稿って何を書けばいいのかわからなくて、いまだに書いては消してを繰り返しています。ちょっとしたことでも「これでいいのかな?」「変に思われないかな?」って。それでも、ファンの方からのリプライや感想を読むと本当に励みになりますし、やってよかったなと思う瞬間もたくさんあります。

――投稿を通してファンとの距離感に変化はありましたか?

はい、すごく変化を感じます。まだまだ発信が少ないほうだとは思うんですけど、作品の感想をポストしたときに「観ました!」「クラウディアすごく良かったです」と言ってもらえると、やっぱり素直にうれしいです。今は不安のほうがちょっとだけ勝っちゃっているけど、これからもっと自分らしい発信をしていけたらいいなって思っています。たとえば「今日はこのゲームやりました~!」とか、「お菓子作りました!」とか、そういう何げない日常も、少しずつ共有していけたらなと。

――趣味はゲームだそうですね。

そうなんです(笑)。もともとゲームが好きで、去年思いきってゲーミングPCを衝動買いしてしまいました。デスクやチェアも一式そろえて……「これはもうやるしかない!」って(笑)。今は『モンスターハンター』を中心に、アクション系のゲームや、のんびりしたシミュレーション系のゲームも幅広くやっています。友達と通話しながら遊ぶのも好きで、モンスターを狩るだけじゃなくて、意味のないタイミングで光らせて「今足光ってるよ!」ってふざけたり(笑)。本気でプレイしている方には申し訳ないくらい、ワイワイ楽しんじゃっていますね。

――今後、ゲーム配信なども考えていたりしますか?

実はちょっとだけ興味があります(笑)。でも私、プレイ中にめちゃくちゃ叫ぶタイプなので配信向きじゃないかもと思いつつ、でも見てくださる方が楽しんでくれるなら、いつか挑戦してみたいです。環境が整ったら、気軽にできるところから始めてみたいですね。

――では最後に、今後挑戦してみたい役柄や夢があれば教えてください。

ずっと言っているのですが、少女漫画のヒロインを演じてみたいです! 芯があって、でもちょっと儚げなところもあって、でも強く生きようとする、みたいなキャラクターが本当に好きで。学生時代から少女漫画を読むのが大好きだったので、そういう作品の中で、自分の声で生きられたら本当に幸せです。今も、自分の中ではひそかに「こういう作品に出たい」「こういうセリフ、いつか言いたい」ってノートに書きためたりしているんです。そういう夢の種を、少しずつでも叶えていけたらいいなと思っています。

撮影=武田真和 取材・文=川崎龍也

花咲心優さんコメント動画


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