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高校通算111本を誇る華やかさを兼ね備えた大型スラッガー│清宮幸太郎(2015・2017年、早稲田実業)

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高校通算111本を誇る華やかさを兼ね備えた大型スラッガー│清宮幸太郎(2015・2017年、早稲田実業)

 高校野球の歴史を振り返ると、記録だけでなく、時代の空気を一変させるような“現象”を起こす選手が現れることがある。2015年、甲子園を揺るがすセンセーショナルな存在として登場したのが、早稲田実業の清宮幸太郎だった。1年生でありながらスターとしての風格を備え、試合を追うごとに球場の熱量を高めていく姿は、まさに「甲子園の申し子」。
 プロ入り後、しばらくは苦しみながらも主軸に成長してきた清宮幸太郎の高校時代を、『データで読む甲子園の怪物たち』(ゴジキ著:集英社刊)より紹介する。

1年生からホームランを量産

 高校野球100周年に大型スラッガーが登場した。早稲田実業で111本塁打を記録し、当時の高校通算本塁打数の新記録を樹立したのが清宮幸太郎である。清宮は1年の夏から甲子園に出場し、多くの注目を浴びたスター選手だった。ラグビートップリーグ(現・リーグワン)のヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴス)・清宮克幸監督の長男という知名度や、世界一となった中学1年時にアメリカメディアが〝和製ベーブ・ルース〟と評して以来の実力と話題性。入学後すぐに強豪早実の3番に座ると、3年生4番の加藤雅樹が後ろに控えている安心感もありプレッシャーに負けずにプレーする。バットにボールを乗せるのが上手かったため、金属バットの恩恵もあり1年生からホームランを量産していった。

 そんな清宮は西東京大会を勝ち進み甲子園の切符を勝ち取るといきなり大舞台で実力を発揮し、「清宮フィーバー」を巻き起こした。ヤクルト元スカウトの片岡宏雄氏はこうコメントする。「清宮くんはものすごくスケールがでかい。私もヤクルトで33年間スカウトをしていたけど、高校1年生としては群を抜いている。こんなにスケールの大きい1年生は見たことがない。(略)タイプとして一番、近いのは高橋由伸(巨人)かな。打撃の柔らかさでは筒香嘉智(DeNA)にも近いかも知れない」

 長距離打者ながらも打撃は柔らかい。この評価通り、清宮は甲子園でハイアベレージを残した。甲子園デビューとなった初戦の今治西戦から初ヒットと打点を記録。2回戦のプロ入り後に同僚にもなる堀瑞輝を擁する広島新庄戦でも、先制タイムリーを含むマルチヒットを記録し徐々に調子を上げていく。

 そして、3回戦の東海大甲府戦で清宮のバットが火を吹いた。3回に待望の甲子園初ホームラン。さらに4番加藤も続いたため、アベックホームランとなった。清宮はこの試合でホームランのほかにツーベースを2本記録し、1試合5打点を記録した。清宮はこの試合に関して「人生の中でかけがえのない特別なものになりました」と発言するほどだった。大会中、1年生ながら大きな注目を集める清宮の実力に疑いの目を向けるアンチファンは少なくなかったが、その声を結果で黙らせた。

東海大甲府戦で2点本塁打を放つなど3安打5打点

1年生ながら高校日本代表選出

 この試合の対戦相手で当時東海大甲府の監督を務めていた村中秀人氏は「そのとき〈筆者註:東海大相模時代〉の私の同期が、やはり1年生のタツノリ(原辰徳、現・巨人監督)で、彼も1年時から素晴らしい活躍をした。だけど清宮君はリストの強さ、パワー、同じ時点のタツノリより上ですね」とコメントするほどだった。清宮の次に打つ加藤も「清宮の打席の余韻を自分の空気だと思って振りました。気持ちよかった」と言う。スター性のある清宮と甘いマスクで安心感がある加藤のコンビがいる打線は破壊力があった。準々決勝の九州国際大付戦も清宮は史上初となる1年生で夏の甲子園2試合連続ホームランを記録した。この試合のホームランに関しては清宮も、「自分の形でしっかり打てた」と自画自賛の一発だった。しかし、準決勝の仙台育英戦では内野安打1本に終わり、清宮フィーバーで沸いた夏はベスト4で終わった。甲子園の打撃成績は、打率4割7分4厘・2本塁打・8打点。1年生とは思えない好成績を残した。さらに、その活躍を評価され、1年生ながらもU-18にも選出され、4番を任せられるなど期待値も非常に高かった。しかし、大会を通して振り返ると27打数6安打の成績で終えた。
甲子園での活躍と比較すると物足りない数字だった。

 清宮自身も、「なんの力にもなれなかった。世界との差を感じたとか、自分が及ばなかったとか、そういうわけじゃないですけど、4番としての仕事、チームの中心となって打線を引っ張ることができないと、こういう結果になってしまう。4番の責任というものを重く感じました」とコメントする。2015年にU-18代表の監督を務めた西谷氏は、「彼と話していると、『自分のバッティングを』『自分の間合いで』という言葉が頻繁に出てくる。それを貫き通す部分も必要ですが、改善していくべき部分もあるのかなと思います。ただ、これからが楽しみな選手ですし、来年、再来年と、本当の意味でのジャパンの軸を打てるように。成長して再びジャパンに入って欲しいし、2年後の世界大会では今日の悔しさを晴らして欲しい」と清宮の今後の課題を指摘した。

2015年のU-18W杯は米国に敗れ準優勝。17年大会では主将で3位に。

 2年生になると春夏の甲子園は逃したものの、清宮はホームランを量産する。さらに、守備ではセンターに挑戦するなど、チームの事情はもちろんのこと、いち選手としての幅を広げる挑戦もあった。秋季大会では日大三の櫻井周斗(元・東北楽天ゴールデンイーグルスなど)の前に5打席連続三振に倒れ不調を心配される時期もあったが、すべて清宮の成長につながっていったのだ。

ドラフトでは7球団が競合

 翌年は新3年生としてセンバツに出場する。初戦の名将馬淵史郎氏が率いる明徳義塾戦では1安打に終わったものの、2打席目にセンターに大飛球を放った。馬淵氏が「あの振りはさすが。センターフライは最近では見たことがないような打球だった」とコメントするほどだ。初戦はなんとか勝利したが、2回戦で敗退を喫した。最後の夏に向けて調子を上げていくようにホームランも量産していった。春季大会では7本のホームランを記録し、文句なしの活躍を見せていた。清宮がいた西東京大会の人気や注目度は凄まじく、甲子園の出場権がない春季大会をAbemaTV(現・ABEMA)で放送したほどだ。

センセーショナルだった1年夏の活躍

 この夏は清宮の覚悟も感じられる活躍を見せる。順調に勝ち上がっていき、2年夏の西東京大会で敗れた3年夏準決勝の八王子に対し、7回に高校野球史上最多に並ぶ107号ホームランを記録。そして、あと一つ勝てば甲子園出場になる。相手は日大二に勝利した東海大菅生。明治神宮野球場全体は早実を後押しするかのような雰囲気だった。清宮の人気は凄まじく、相手の東海大菅生からすると、圧倒的なアウェイの状況だった。

 ただ、東海大菅生はこの大会で松本健吾(現・東京ヤクルトスワローズ)が覚醒し、そのほかのメンバーを見ても戸田懐生(現・読売ジャイアンツ)や田中幹也(現・中日ドラゴンズ)といったゆくゆくはプロ入りした選手を擁し、清宮・早実打線への対策を徹底的にしてきた。東海大菅生の選手たちは「仮に早稲田に勝つ、日大三高に勝つという意気込みだと、それを達成してしまったら、次の目標がなく負けてしまう。だから、自分たちは常に『全国制覇』と言い続けて戦っていました」と言うように当時甲子園で優勝候補だった早実に対しても、気負うことなく挑んできた。

 東海大菅生の若林弘泰監督も、主力の清宮と野村大樹(現・埼玉西武ライオンズ)の前にランナーを出さないことを最優先とし清宮は歩かせていいと指示していた。それにより、松本と鹿倉凜多朗のバッテリーは気が楽になったのだろう。結果的に、野村には3安打を許したが清宮は単打の1安打のみに抑えた。鹿倉は「清宮、野村を出して(出塁させて)も、他の7人を抑えれば点は取られない」と試合前に語っていた。主導権を握れなかった早実は最終的には、松本に完投され甲子園を逃した。

 清宮の最後の西東京大会の成績は、打率5割・4本塁打・10打点・OPS1.389。甲子園の成績自体は1年生の夏がピークだったが、高校通算111本塁打の記録に違わぬ力を見せつけた。その記録を評価され、ドラフト会議では7球団が競合し、北海道日本ハムファイターズに指名される。 

 プロ入り後は、燻っていた時期もあったが新庄剛志氏が監督就任後に覚醒し、2024年シーズンでは規定打席未到達ながらも打率3割・15本塁打・51打点・OPS・898を記録。WBSCプレミア12の代表にも招集された。まだまだ若手から中堅に差し掛かりつつある2025年、今後は球界を代表する打者に育つことを多くのファンに期待されている。

本文は『データで読む甲子園の怪物たち』(ゴジキ著:集英社刊)より。

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