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「少しだけ先の未来」のリアルに震えるSF映画3選!空音央監督『HAPPYEND』ほか”私たちの明日”を覗く衝撃作

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「少しだけ先の未来」のリアルに震えるSF映画3選!空音央監督『HAPPYEND』ほか”私たちの明日”を覗く衝撃作

新鋭監督・空音央『HAPPYEND』全国公開中

世界中の映画祭を席巻した新鋭監督・空音央の長編劇映画デビュー作『HAPPYEND』が、10月4日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中だ。

『HAPPYEND』© 2024 Music Research Club LLC

監督を務めた空音央は、東京とニューヨークを拠点に活躍する33歳。コンサートドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto | Opus』や短編映画「The Chicken」が世界中の映画祭で上映・絶賛された。そして本作『HAPPYEND』が第81回ヴェネツィア国際映画祭 オリゾンティ・コンペティション部門に正式出品され、いま世界中から最も熱い視線が注がれている監督の一人である。

空音央 監督

「少し先の未来」描いたSF映画たちを厳選紹介!

映画『HAPPYEND』が描く未来では、多種多様な人々が当たり前に暮らすようになっている一方で、社会には無関心が蔓延し、むやみやたらに権力が振りかざされている。国による個人情報の管理、政府が定めた緊急事態条項への反対デモ、都市開発のために取り壊される遊び場、鳴り止まない緊急地震速報、どこかの国で見たことがある様な大きなスクリーンに映し出されるA I監視システム――。まさに今の世の中と地続きであり、フィクションと呼ぶにはあまりにもリアリティのある未来を映し出し、私たちの心をザワつかせる。

『HAPPYEND』© 2024 Music Research Club LLC

ということで今回は、そんな本作と同じく【今】と地続きの未来をリアルに映し出し警鐘を鳴らす、近未来映画を3作品ご紹介。季節が変わる秋の初めに、“少し先の未来”について想いを馳せてみてはいかがだろう。

『HAPPYEND』10月4日(金)より公開中

決して遠くないXX年後の日本。変わりゆく社会の中で、変わらない友情を育んでいた幼馴染で大親友の高校生のユウタ(栗原颯人)とコウ(日高由起刀)は卒業を間近に控え、いつもの仲間たちと悪ふざけをしながら楽しく過ごしていた。

『HAPPYEND』© 2024 Music Research Club LLC

ある日、二人が仕掛けたいたずらが学校中を巻き込んだ騒動に発展し、監視システムを導入する事態に。この出来事をきっかけに、アイデンティティと社会への違和感を深く考えるようになったコウと、楽しいことだけしていたいユウタは少しずつすれ違い始める……。

『HAPPYEND』© 2024 Music Research Club LLC

本作の主人公ユウタとコウを演じたのは、オーディションで大抜擢された栗原颯人と日高由起刀。初演技ながら高校生の心の機微をリアルに表現した。また生徒役には林裕太、シナ・ペン、ARAZI、祷キララら、あらゆるルーツを持つ若き才能たちが集結。そして校長役の佐野史郎、ユウタの母親役の渡辺真起子、担任教師役の中島歩ら実力派俳優陣が脇を固め、物語に深みを与えている。

『HAPPYEND』© 2024 Music Research Club LLC

2024年10月4日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中

『PLAN75』(2022年/監督:早川千絵)

少子高齢化が進んだ近未来の日本。満75歳から自ら生死を選択できる制度「プラン75」が国会で可決・施行され、当初は様々な議論を呼んだものの、超高齢化社会の問題解決策として世間に受け入れられた。78歳の角谷ミチは夫と死別後、ひとり静かに暮らしながらホテルの客室清掃員として働いていたが、ある日高齢を理由に解雇されてしまう。住む場所をも失いそうになったミチは、「プラン75」の申請について考え始める。

是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』の一編「PLAN75」を早川千絵監督自らが長編化。長編デビュー作にして第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、初長編作品に与えられるカメラドールのスペシャルメンション(次点)に選ばれるなど大きな話題を呼んだ。

最初は反発していた国民も徐々に国が作り出した空気に呑み込まれ、不寛容さを増していく描写には既視感すら覚える。不寛容を極め、生産性を追い求めた先にどこに行き着くのか……観るものに問いかける衝撃作だ。

『Arc アーク』(2021年/監督:石川慶)

遠くない未来、放浪生活を送っていたリナは人生の師となるエマと出会い、大切な人の遺体を生前の姿のまま保存できる施術=プラスティネーションを身につけ、大手化粧品会社で「ボディワークス」という仕事に就く。一方、エマの弟で科学者の天音は、この技術を発展させた不老不死の研究に打ち込んでいた。30歳になったリナは天音と共に不老不死の処置を受け、人類で初めて永遠の命を得た女性となった。やがて、不老不死が普通となった世界は人類を二分し、混乱と変化をもたらしていく。

SF作家ケン・リュウの短編小説「円弧(アーク)」を『愚行録』『ある男}の石川慶監督が映画化。SFながらも設定が細やかで、我々の日常の延長上に「本当に起こりうるかも」と思わせるリアリティを宿している。『PLAN75』とは違った形で「命の選択」を迫られる、生命の理を超えた問題作。

『十年』(2015年/オムニバス)

香港の新鋭若手監督5人が、2015年より10年後の香港を描いたオムニバス作品。労働節(メーデー)の集会で騒ぎを起こすよう命じられたチンピラ2人組を描いた「エキストラ」、まるで世紀末のような香港で身の回りの失われゆくものを黙々と標本にし続ける男女2人を描く「冬のセミ」、普通語の習得が必須となったタクシー運転手の奮闘を描いた「方言」、ある朝イギリス領事館前で焼身自殺が発生。通称“雨傘運動”後の喪失と再生をドキュメンタリータッチで描いた「焼身自殺者」、最後の養鶏場が突然閉鎖。最後の地元産卵を売る青年を描いた「地元産の卵」の5作品で構成される。

製作費わずか750万円、たった1館から上映を開始するも、クチコミで人気を集め上映館を香港全域に拡大し9200万円の興行収入を記録した。香港のアカデミー賞と言われる<香港電影金像奨>で最優秀作品賞を受賞するなど社会現象となり、本作をきっかけに日本、タイ、台湾でも製作が決定した。来年、本作が描いた10年後でもある2025年を迎える。

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