唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』第5回 サトノダイヤモンドとルーラーシップを例に血統の奥深さを伝授
競馬は血統のスポーツとも言われている。血統はその馬の適性を見極めるのに重要なファクターで、奥が深いことは間違いないので、今回は少し血統の話をしてみたいと思う。
日本の競馬史を変えたノーザンテースト
日本の競馬を変えたノーザンテーストという馬がいた。
この馬は通算10回のリーディングサイアーになった栗毛の馬だった。毛色が遺伝して、栗毛の産駒で活躍したのは、マチカネタンホイザ、ビッグショウリ、ダイナレターなど。それに対して牝馬の栗毛はスカーレットブーケを筆頭に、メインキャスター、ファッションショー、アドラーブル、シャダイソフィアと全体的に栗毛の牝馬の方が活躍した印象がある。
個人的に毛色はすごく大事だと思っていて、父馬と同じ毛色で出たからといって必ず走るとは限らないけど受け入れやすさがある。
馬体に関してノーザンテーストは見栄えがする馬ではなかったので、ノーザンテーストに似ていない形の馬の方が走った感じがするな。
馬体が遺伝してもエンジンまで遺伝するかは別
ノーザンテーストに限ったことではないが、「父に似るとあまり走らない」とも昔から言われることが少なくない。これは種牡馬自身は現役時代、馬体の欠点を補うだけの能力を持ち合わせていたからで、馬体だけが似ると欠点をカバーしきれないというのがその理由だ。
例えばサトノダイヤモンドを例に挙げてみたいと思う。サトノダイヤモンドの父ディープインパクトは、現役時代430~440キロでそれほど大きな馬ではなかった。だけど、サトノダイヤモンドは500キロを超えていて、それであって能力が高くディープインパクト産駒の中でも異質だった。
それがサトノダイヤモンドの子どもとなると、大きさに伴った能力まで受け継がれるのはなかなか難しい。馬体の大きさがダイヤモンドに似てしまうと、それが良くないと個人的には思っている。どういうことかというと、大きな馬体を動かすエンジン(心肺機能)まで遺伝することは稀で、馬体を持て余してしまうことになるからだ。
実際200頭以上の産駒がデビューしていて、重賞を勝っているのはサトノグランツとシンリョクカだけで、残念ながらGⅠウィナーはまだ出ていない。
ちなみに俺はディープインパクト産駒の中で、キズナが最高に理想的な100点満点の馬体だったと思っている。
なぜルーラーシップ産駒からマイラーが出るのか
ルーラーシップは国内で日経新春杯やアメリカジョッキーCCを勝ち、香港のクイーンエリザベス2世CでGⅠタイトルを手にしたように中・長距離路線で活躍した。
しかし、体つきを見ると全く長距離仕様ではなくてマイラーの体をしている。
そのため、菊花賞を勝ったキセキのようにステイヤーが出ることもあるけれど、確率的にはソウルフラッシュのようにマイルで活躍する馬が多いのが事実だ。このように父親が活躍した舞台とは別の路線で、活躍する産駒がいるというのも血統の奥深さだ。
今回は血統の話をしてみたが、俺は馬券を買う時には血統云々より馬体を見て判断することがほとんど。なので、次回はまた馬体などの話に戻るとしよう。
弥永 明郎
(やなが・あきお)
唯一無二の馬券師。デイリースポーツ「馬サブロー」の美浦取材班・看板記者。グリーンチャンネル中央競馬中継のパドック解説でもお馴染み。狙った穴馬は決して逃さない「競馬界のゴルゴ13」。業界歴は長く、騎手、厩舎関係者、馬主など人脈も幅広い。