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ジャズ・ピアニスト 壷阪健登 デューク・エリントンをテーマにしたピアノ・トリオ・ツアー in 神奈川 新曲を携え11月に開催

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壷阪健登

今年11月に、1世紀超にわたって継承されるジャズの遺産と、現代の若き才能がフューズするコンサート・シリーズ“神奈川県民ホール presents C×JAZZ(シー・バイ・ジャズ)壷阪健登×デューク・エリントン”(以下:壷阪健登×デューク・エリントン)が神奈川県内4か所で開催される。タイトルにある一方の壷阪健登は、1994年神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学を経て、バークリー音楽大学を首席で卒業。ニューヨークでの活動を経た後の2020年に拠点を日本に移し、2024年にソロ・ピアノ作品『When I Sing』でアルバム・デビュー。スペインのサン・セバスティアン国際ジャズフェスティバルや、フランスで開催されたラ・フォル・ジュルネにも出演するなど、国内外で活躍する若きジャズ・ピアニストだ。

そしてもう一方のデューク・エリントンは、1916年にピアニストとしてデビューした後の1923年に、ジャズ史を代表する名ビッグバンド、デューク・エリントン・オーケストラを結成。以来、約50年間にわたり、母国アメリカだけでなく、世界各国でツアーを展開。「イン・ア・センチメンタル・ムード」、「ソフィスティケイテッド・レディー」など2000曲以上の名曲を書きあげ、没後50年を超えた現在でも数多くのミュージシャンに大きな影響を与え続けている偉大な音楽家だ。神奈川県民ホールが、音楽の過去~現在~未来を融合させるプロジェクトとして2021年から展開させている“C×”(シー・バイ)シリーズの発展形としてスタートするコンサート“C×JAZZ”に出演する壷阪に抱負を聞いた。

ーー“壷阪健登×デューク・エリントン”は、神奈川県民ホールが始動する“C×JAZZ”の第1弾として11月に開催されるコンサート・シリーズだそうですが、御出演されるお気持ちをお聞かせください。

横浜で生まれ育った僕にとって神奈川県民ホールはとても身近な存在です。子どもの頃から神奈川フィルハーモニー管弦楽団をはじめ、クラシック音楽やジャズ、ポップスなど、さまざまなコンサートに訪れた、思い出深いホールでもあります。現在は建て替えに向けた準備が進んでいると伺っていますが、その県民ホールが主催するコンサート・シリーズに出演できることを大変光栄に思います。今回は茅ヶ崎、川崎、三浦、葉山の4つのホールでの開催となります。神奈川県民の一人として、県内各地でこのような機会をいただけることを、本当に嬉しく感じています。

壷阪健登       (C)Sakiko Nomura

ーーそのタイトルにデューク・エリントンと書かれていますが、エリントンは壷阪さんにとってどのような存在なのですか?

ジャズの歴史の根底を支え、ジャズという音楽を形作ったレジェンドの一人です。僕にとってはジャズを学び演奏していく上で、さまざまな局面で気づきを与え、導いてくれる道標のような存在でもあります。コンポーザーに焦点を当てるC×JAZZへの出演が決まった時、エリントンにトリビュートするプログラムに挑戦しようと決意しました。

ーー道標のような存在というのは、どのような点で?

エリントンの音楽に初めて出会ったのは、僕が11~12歳の頃。たまたまテレビで観た、猪俣猛(ds)さん率いるビッグバンド「THE KING」のコンサートでした。バンドのレパートリーには「ムード・インディゴ」や「A列車で行こう」など、エリントン・オーケストラの名曲が数多く含まれていました。その演奏が子どもながらにとてもカッコよかったことを、今でも鮮明に覚えています。大学生の頃、当時師事していた大西順子(p)さんからエリントンの名盤や名曲を数多く教わりました。中でも特に衝撃を受けたのが、『Jazz Party in Stereo』に収録された「UMMG」です。これはエリントン自身の作品ではなく、右腕であったピアニスト/コンポーザー、ビリー・ストレイホーンの作曲によるものですが、その洗練されたアレンジには強く魅了されました。
ゲスト参加していたディジー・ガレスピー(tp)の演奏も圧倒的で、そこからさらにエリントンの作品にのめり込むようになりました。バークリー音楽大学時代に師事していたジョー・ロヴァーノ(ts)から薦められた『Far East Suite(極東組曲)』も、特に印象深いアルバムです。1963~64年のアジア・ツアーの体験をもとに書き上げられたこの組曲は、ファンタジックで美しく、僕はバークリーの図書館に所蔵されていたスコアを読み込みながら研究したこともありました。

ーーコンサートでは、どのような曲を演奏される予定ですか?

「A列車で行こう」や「イン・ア・センチメンタル・ムード」といったエリントン・オーケストラの代表曲を、ピアノ・トリオやソロ・ピアノで演奏する予定です。また、ピアニストとしてのエリントンに焦点を当てた曲にも取り組みたいと考えています。エリントンはビッグバンドの印象が強いですが、実はピアニストとしても魅力的で力強い存在だと思っています。

ーーピアニストとしてのエリントンの魅力というと?

最初に思い浮かぶのは、彼独特のスモーキーな音色です。ピアノから一聴してエリントンだとわかる「ワン・アンド・オンリー」の響きを生み出すことは、まさに驚異的です。ハーモニーも独自性にあふれており、一つひとつのヴォイシングが実にユニーク。曲を聴いていて「いま何を弾いたの!?」と驚かされる瞬間がしばしばあり、演奏の随所にミステリーを感じさせます。先ほど触れた『極東組曲』のほか、『女王組曲』『ラテン・アメリカ組曲』『ニューオリンズ組曲』など、エリントンは生涯にわたって数多くの組曲を発表しています。おそらく組曲制作は、彼の創作活動における大きなテーマのひとつだったのでしょう。今回の公演では、僕自身の視点から捉えたエリントン像を音にしたオリジナル組曲も演奏したいと考えています。

ーー今回のコンサートはピアノ・トリオによるものとのことでしたが、共演されるメンバーについてお話しいただけますか?

共演するのは高橋陸(b)くんと中村海斗(d)くんです。陸くんとはセイコー・サマージャズキャンプ2016でも一緒に学びましたが、初めて会ったのはその数年前。都内各地のジャム・セッションで顔を合わせることも多く、もう10年近い付き合いになります。彼の魅力は音色やスウィング感などたくさんありますが、中でも素晴らしいのが演奏時の発想が常に自由なこと。いつも新たな風を音楽に吹き込んでくれますが、そのアプローチはしなやかでオープンです。広がりのある空間を生み出し、ピアノのどんなプレイにも応えてくれる。彼と演奏していると、いつもインスパイアされます。

壷阪健登       (C)Sakiko Nomura

ーードラムの中村海斗さんについてはいかがでしょうか?

海斗くんとも長い付き合いです。彼が群馬から東京へ拠点を移す2020年以前から、都内のライヴハウスのセッションでときどき一緒に演奏していましたし、2022年末に発表した1stアルバム『Blaque Dawn』にも参加させてもらいました。彼の最大の魅力の一つは楽曲理解の深さ。それは、彼自身が優れた作曲家でもあるからだと思います。最新作『Invisible Diary』には完成度の高いオリジナルの組曲が収録されており、そうした作曲家としての視点やスキルがドラム演奏にも反映されているように感じます。さらに、ジャズの最先端のビート感覚をいち早く捉えているのはもちろん、オールドスクール・ジャズのスウィング感も見事に体現しています。ドラマーとしてだけでなく、一人の音楽家としても非常に素晴らしい存在です。

ーー最後に、コンサートに対する抱負をお聞かせください。

その日を迎えるのが本当に待ち遠しいです。エリントンの音楽は多彩で不思議な魅力にあふれています。その楽曲や僕のオリジナルを、陸くんと海斗くんと共に演奏できるのは、とても楽しみなこと。この二人と一緒に演奏すると、僕がアレンジした曲や書き下ろした曲にも、自分の想像を超えるアップデートがなされていくと思います。予想もしていなかった展開が生まれ、4回のコンサートの中でも変化していくはずです。僕もそれに応える演奏を全力でしていきたいと思います。

取材・文=早田和音

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