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未来はないけど前向きな理子を演じた当時。今だから気づいたセリフやシーンの意味ーー『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』天内理子役・永瀬アンナさんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』が2025年5月30日(金)より公開! TVシリーズでも語られた五条 悟と夏油 傑たちの青春を、今度はスクリーンで楽しむことができます。

本作の公開を記念して、物語の鍵を握る少女・天内理子を演じた永瀬アンナさんにインタビューを実施。理子という“未来のない少女”を演じることへの覚悟、そして今だからこそ気づけた夏油の優しさと葛藤とは。

多数の作品への出演や声優アワードの受賞など、活躍を見せる永瀬さん。『呪術廻戦』への出演を経た今の心境も伺いました。

【写真】『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』天内理子役・永瀬アンナインタビュー

悲運な少女・天内理子と向き合うということ

ーー『劇場版総集編 呪術廻戦 懐玉・玉折』の制作が決定した際のお気持ちをお聞かせください。

永瀬アンナさん(以下、永瀬):とても嬉しかったんですけど、正直ちょっとだけ怖かったんです。私が演じるキャラクター的にも、エピソード全体としても視聴していて苦しくなる部分があるので、それを改めて劇場の大画面と大音量で鑑賞するのはなかなか勇気がいるなと……!

ーー公開が近づいていますが、その思いは今も変わらないですか?

永瀬:変わらずですね。『懐玉・玉折』は『呪術廻戦』の中でも人気のエピソードだと思うんですが、残酷なお話でもあります。当時も演じていて辛かった記憶があるので、それをもう一度見るのは心が痛いなと思いました。

もちろん楽しみな気持ちもあります。映画になって、もう一度皆さんに見ていただける嬉しさはかなり大きいです。

ーーアフレコは少し前になるとは思いますが、改めて天内理子を演じる上で意識されていたことを教えて下さい。複雑な境遇を持ちながらも明るいキャラクターでしたよね。

永瀬:そうですね。彼女は心の奥底で自分の最終地点を理解していますし、自分の役割に対しての覚悟を持っています。

だから、普段のはつらつとした明るさは、「まだみんなといたい」、「もっと生きていたい」という本音を押さえつけるためなんじゃないかなって。本心を誰にも知られてはいけない、という気持ちが彼女にはあったと思うので。

演じる上で、緊張もしていたんですけど、大きな声を出そうとか、誰よりも明るく、カーン!と突き抜けるように演じようと心がけました。その意識があったからこそ、最後の本音を吐露するシーンがより引き立ったのかなと思っています。

ーー緊張しながらのアフレコはいかがでしたか?

永瀬:割とうまく行けたんじゃないかと思います……! 最初に関しては、撮り直しもあまりなくて。個人的には「嘘じゃ!! 嘘つきの顔じゃ!!」というセリフが印象に残っています。

「声が裏返ってもいいから、もっと突き放す感じで」というディレクションがあったので、思いっきり台本を見ずにやりました。

ーー五条や夏油を信頼していない叫びですよね。

永瀬:そうですね。誰も信用しないし、一番強いのは自分だ! っていう気持ちで。ガーっとやってみたんですけど。

今だからわかる、夏油の優しさと重さ

ーー天内を守る五条・夏油について、また、ふたりの関係性についてはいかがですか?

永瀬:良い意味でも、悪い意味でもリアルな高校生像に近い気がします。最強であるふたりがお互いのことを信頼して、わかり合っているからこその全能感や無敵感があったり。任務には前傾姿勢で取り組んでいるけど、生意気な部分があったり。そういう描写が大事にされているキャラクターですよね。

等身大なふたりを見るのは新鮮でしたし、等身大だからこそ少しのすれ違いによって関係が崩れてしまう。これは現実世界でもありがちだと思います。最強なんだけど、共感できたり、身近な感覚もありました。

ーー当時のふたりは永瀬さんご自身とも近い年齢です。TV放送から時間が経っていますが、印象が変わったキャラクターはいますか?

永瀬:最近になってひとつわかったことがあるんです。先ほども触れた「理子の本音」に夏油は気づいていましたよね。私の解釈にはなりますが、少なくとも理子の様々な可能性を考えて、最後に選択肢を提示してくれていました。

どんなに隠そうと思っていても、見ている人は見ていますよね。たとえ自分では隠し通せていると思っていても。特に夏油は普段から色んなことに対して注意を配っているから、理子の気持ちに対しても敏感だったと思うんです。

そういう「分かる人には分かる」みたいな感覚は、当時の私には気付けなかったかもしれないです。だから改めて夏油の優しさや大人びている様子に気づきました。

ーーだからこそ、夏油は道を踏み外していまいます。夏油のそういう優しさに気づけたのはなぜだったと思いますか?

永瀬:作品とはズレてしまいますが、私自身がお芝居のことでいろいろ悩んでいる時期があったんです。それでも自分では明るく振る舞っていたつもりだったんですが、ある時、先輩の声優さんから「(永瀬は)お豆腐メンタルかもしれないね」って言われたんです。

「この間の収録で、ちょっと凹んでいたでしょ」って、隠していたのに見破られてしまって。やっぱり、色んなことを経験してきた先輩だからこそ、私達のような若手の気持ちもわかってしまうみたいです。

「子供が思っていることならわかるよ〜」って言われて「え!?」みたいな(笑)。そういう経験も経て、夏油と理子のことを考えてみると少し似てるな、なんて思いましたね。

先輩たちの背中を見ながら挑んだアフレコ

ーーアフレコの際に、キャストの皆さんとどんなやり取りをされましたか?

永瀬:一番印象的だったのは、黒井を演じる清水理沙さんと初めてお会いした際に「お守りしますよ」って言ってくださったことです。緊張もほぐれましたし、演じるキャラクターや関係性を大事に思ってくれているんだなと。

清水さんにとっては、何気ない一言だったかもしれないんですけど、その一言があったからこそ皆さんのことも、自分のことも信頼してお芝居に臨むことができました。

ーー先輩方の言葉が力になっているんですね。

永瀬:そうですね。あと、中村悠一さんの笑いの演技に驚いたのも覚えています。沖縄でナマコをいじって遊ぶシーンがあるのですが、あんな奇天烈な笑いが自然に出てくる人がいるんだ……!って。

中村さんが何でもできる凄い役者さんだってことはもちろんわかっていたつもりなんですが、その時に、1つ1つの役柄や、シーンに対する解像度が高いんだなって納得しました。その個性的な笑い方に私も乗せられて、楽しくキャッキャ笑うことができましたね。

ーー櫻井孝宏さんとのアフレコはいかがでしょう。

永瀬:夏油を演じる櫻井さんは、やっぱり理子に選択肢を与えるシーンが印象的でした。最初は、理子に寄り添うようにおっしゃっていたんですが、「業務的に選択肢を提示する感じ」というディレクションがあったんですよね。選ぶのはあくまで理子ちゃんなので。

でも、その次の櫻井さんの台詞が凄くて! 業務的というか、理子にしっかりと自由を与えつつ、内心にある「どうなっても五条となら守れるよ」という気持ちが伝わるんですよね。そして、理子ちゃんが自分の意思で選ぶからこそ、後のシーンが引き立ちますし、演じている私も心がグッとなりました……!

ーー本作の中でも屈指の名シーンですよね。永瀬さんは、『懐玉・玉折』から『呪術廻戦』に参加されましたが、アフレコの雰囲気はいかがでしたか?

永瀬:休憩中は清水さんとお話することが多くて、中村さんや櫻井さんは子安さんたちとお話していましたね。私も含めて皆さん楽しそうでしたし、程よく緊張感もある現場だったんじゃないかと思います。

「理子に未来はない」——胸に残るシーンと、放送後の反響

ーー改めて永瀬さんの印象に残っているシーンをお聞かせください。

永瀬:みんなで水族館に行ったり、4人でいろんなところを巡っているシーンです。当時は、このシーンたちの意味をきちんと汲み取れていなかった気がします。楽しい余暇の時間を過ごしているのは理解していますが、楽しい時間から「理子に未来はない」ということがより滲んでいますよね。セリフがないシーンもありますが、振り返って映像を見ると切ないです。

私がどれだけ理子のことを考えてみても、彼女の気持ちを隅から隅まで共感することはきっと難しいというか、違うのかなと思います。

ーー実際、アフレコ時にはどのような意識でいたのでしょう。

永瀬:理子は最終地点はわかっているけど、そこに向かうまでの楽しい時間を過ごそうと前向きだったと思うんです。私もそれはイメージしながらやっていました。でもさみしげに水槽を見つめる理子ちゃんの顔を見て、まだまだみんなと一緒にいたんだろうなと思ったり。今、客観的に映像を見て、自分のお芝居を聞いてみると、この子には未来がないんだって率直に思いましたね。

ーー今回は物語を一気に味わうことができるので、また違った感覚がありますよね。

永瀬:そうですね。5話がまとまっていて、ひとつひとつのお話の切れ目がなくなっています。そのおかげで今回はキャラクターの気持ちや、感情の流れがわかりやすいと言いますか。ひとまとまりで、物語を楽しめるのは劇場版ならではだと思います。

個人的にはキタニタツヤさんの「青のすみか (Acoustic ver.)」を映画館で聞けるのが嬉しいです。より切なさを感じますし、五条と夏油の儚い、短い時間にしっかり寄り添って作ってくださっているんだなって。そこも大音量で楽しんでいただきたいです!

ーー今回の劇場版を楽しみにしているファンの方も多いと思いますし、TVシリーズ自体の人気も高かったですが、放送後の反響や盛り上がりについてはいかがでしょうか?

永瀬:演じている私もそうでしたが、理子ちゃんの死ってやっぱり衝撃だったんだなと。放送当時、急に中学校の同級生から連絡があったんですよ。

「理子ちゃんやってるよね……? 死んじゃったよね……?」って言われて(笑)。急な連絡の一言目がそれなの!?、と思いつつ色んな人が見ているんだなと実感しましたし、あのシーンはやっぱり衝撃だよなって。そうやって素直に驚いてくれるのも個人的には嬉しかったです。

『呪術廻戦』が教えてくれた、背負うこと・変わること

ーー新しいTVシリーズの制作も決定していますが、改めて『呪術廻戦』作品全体の印象はいかがですか?

永瀬:『呪術廻戦』は、呪いや人間の負の感情がエネルギーになって、問題を引き起こしているというお話だと思っています。人間の暗かったり、卑しい部分が台詞や絵で表現されていますよね。

私も読みながら、ギャグやコメディな部分はゲラゲラ笑っていますけど、シリアスでテーマの根幹になっている部分を読むとドキッとしてしまいます。キャラクターの台詞が、現実にいる私達のことを言っているような気がして。

これまで読んだ漫画の中でも特殊というか、読んでいる私に向かって指をさしているような感じがありました。だから暗さや、負のイメージが強いですね。

ーー呪霊も負のエネルギーですし、術師が扱う力もそうですね。

永瀬:作品自体の名前は知っていたんですが、オーディションを受けるにあたって読ませていただいたんですね。しかも、『懐玉・玉折』から読みました。

ーーある種、原点のお話なので順番としては良いかもしれないです。

永瀬:せっかく予備知識も先入観も持っていなかったので、理子ちゃんが知っている情報だけで演じたいという気持ちもありました。

それが良かったのかどうかはわからないんですが、キャラクターの心情もストーリーのことも自分で想像して演技に臨んだ結果、出演することができました。

ーー「指を刺されている感覚」とおっしゃっていましたが、それはどこで感じましたか?

永瀬:『懐玉・玉折』の夏油です。弱きを助け、強きをくじくという姿勢を貫こうとする彼ですが、「弱きを助けたところで何になる」という風に思ってしまうというか、そのキリがない感じに気づいちゃうわけじゃないですか。

世の中には良いものも、悪いものも無数にあって、その大きさに疲れてしまうような。先ほども触れましたが、夏油の優しすぎる部分、温かい人柄や周囲に目を配っていて、いろんなことに気づいてしまう感じが、現代の私達に近い感覚なんじゃないかなと思います。

ーーそうですね。絶望感や無力感を抱きやすい時代なのかもしれないです。

永瀬:やっぱり、理不尽なことって誰にでもありますよね。夏油はその理不尽さに納得できないから、行動に移してしまったわけで。

ーー誰もが夏油のような選択をしてしまう可能性がある。

永瀬:ありますよね。その一歩、なにか踏み出すというか、行動するきっかけがあると、どんな道にでも進む可能性があるなと思います。

ーー『呪術廻戦』は永瀬さんのキャリアの中でも、大切な作品になっていると思います。本作に出演して、ご自身の中で変化はありますか?

永瀬:自分に自信を持てるようになって、逆に疑うようにもなりました。

ーー疑いですか。一般的には、永瀬さんの代表作と言っても良い作品だと思いますが。

永瀬:それはもちろんそう思います。出演させていただいて本当に感謝をしていますよ。作品を見てくださった方から「良かったよ!」って声をかけてもらえるんです。それこそ、子安さんと違う現場で一緒になった際に「特に理子が良かったよ〜!」って言ってくださったり。

子安さんだけではなくて、色んな人にそういう言葉をかけてもらえて、自信にも繋がって嬉しかったです。……嬉しい、超嬉しいんです。でも、だからこそ驕ってはいけないし、自分の今の実力とか、そもそも『呪術廻戦』っていう作品の上にあぐらをかいてはいけないですし。

ーーなるほど。

永瀬:今、少しづつ経験を重ねて、自分からも他の方からの信頼を積み上げている途中だから、「これが100点だぜ」とか「私がやっているんだからこれが正解だ」みたいには思いたくない。

ーー『呪術廻戦』以前は、考えるよりも我武者羅な感覚が強かったんですか?

永瀬:『呪術廻戦』に関しては凄く緊張もして、とにかくやらなきゃ!という感じで。あと、私は生意気だったし、すぐ大人に反抗しようとしたりとか……。

ーーいわゆる無敵感を感じることってありますよね。我武者羅に突っ走るような感覚から、自分自身やキャラクターを俯瞰して考えるようになる。

永瀬:わー、(読者に)生意気みたいに思われたくないな……。

ーー(笑)。永瀬さんの言いたいことはしっかり伝わっていると思います。

永瀬:伝わると嬉しいです。先輩方もファンの方も、やっぱり見てくれている人は見てくれると思うので、少しずつでも良いから実力を積み上げていければ良いなと思います。

ーーお話を聞いていて感じたのですが、やはりプレッシャーと言いますか、理子と同様に背負うものも大きいですよね。

永瀬:プレッシャーはあります。それこそ子安さんと同時にキャストが発表されたんですが、私自身はど新人だったので…豪華なキャストが並ぶ中で「この人は誰なんだろう?」と思われていたと思うんです。そんな不安や心配を感じさせたくない、素直に作品を楽しんでほしいと思い、覚悟を持って収録に臨みました。

振り返ったら"青春”になる

ーー本作でも描かれる青春というテーマ、永瀬さんにとってはどのようなものですか?

永瀬:今振り返るから青春なのかなと思います。若かったり、いろんなことをガツガツできる時期って、周りの目とか状況を気にしていないというか、多分ちゃんと考えられてないじゃないですか。

でも、少し大人になってから、そういう時間を俯瞰してみて、「こんなことしてたな」って落ち着いて振り返ることで、自分を形作っていくというか。

私も、高校で演劇をやってたなとか、先生にめっちゃ怒られたなって、思い出すと眩しく見えるし、短く感じます。その時間が、大事だったなと思います。

ーーありがとうございます。素敵な締めくくりになりました! 最後にファンの皆様にメッセージをお願いします。

永瀬:TVシリーズだと、5週に渡ってドキドキしながら見ていた物語が、劇場版総集編として楽しめるということで、その分楽しさや苦しさを一気に味わうことができると思います。もちろん、映画ならではの映像・音楽の迫力も楽しんでいただきたいです。

五条と夏油、そして『呪術廻戦』の始まりの物語と言っても過言ではない本作をぜひ劇場でご覧になってください!

[取材・文/タイラ 撮影/MoA]

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