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「子どもが食べない」の裏にある親が気づきにくい心の病気

saita

「子どもが食べない」の裏にある親が気づきにくい心の病気

「最近、子どもがあまり食事を積極的に摂らない」そんな様子に、不安や戸惑いを感じている方もいるかもしれません。近年、摂食障害を抱える子どもが増えており、その背景にはさまざまな要因があるため、まずは正しく理解することが大切だと精神科医・総合診療医の島田直英先生はおっしゃいます。今回は島田先生に「子どもの摂食障害が増えている要因」と「行動や身体的サインなどの特徴」について教えていただきました。

教えてくれたのは……島田直英(しまだ・なおひで)先生

精神科医・総合診療医・漢方医。不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 副院長。島根大学医学部医学科卒業後、大田市立病院総合診療科、島根大学医学部附属病院総合診療科等を経て、2025年に同クリニックにて副院長に就任。飯島院長に医学生時代より師事し不登校・不定愁訴診療の極意を学ぶ。精神科単科病院にも在籍。

子どもに増えている「摂食障害」

島田先生によると、今の40代・50代世代が思春期だった頃と比べ、摂食障害の子どもは近年増加傾向にあるそうです。子どもが食事を摂らないと、ただの好き嫌いだと思って見過ごされてしまうこともあるかもしれませんが、それが続く場合は、心の不調が隠れている可能性もあります。島田先生は、摂食障害について「食行動に現れる心の病気」なのだと言います。

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島田先生「摂食障害は、体重や体型に対して極端なこだわりやゆがんだ認識を持ち、食事のとり方に深刻な問題が生じる心の病気です。『ただの好き嫌い』とは違い、体重増加への強い恐怖から極端に食事を制限したり、逆にむちゃ食いを繰り返したりします。これらはコントロール不能な強迫観念に駆られた食行動であるため、心身の健康や日常生活に重大な支障をきたす点が『ただの好き嫌い』との大きな違いです。」

摂食障害になりやすい子どもの特徴。SNSが影響を与えることも多い

摂食障害は、どのような要因が関係することが多いのでしょうか。島田先生に、摂食障害になりやすい子どもの特徴や、最近増えているケースを教えていただきました。

摂食障害になりやすい子どもの特徴

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島田先生「摂食障害は、特定の要因一つで起こるものではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症します。なりやすい傾向としては、完璧主義で自己肯定感が低い性格、過度な期待を背負っているなどの家庭環境のストレス、学校でのいじめや対人関係の悩みがあることなどが挙げられます。」

SNSの普及や生活環境の変化が影響することも

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島田先生「近年では、SNSで理想化された体型を目にして、無理なダイエットを始めることが大きなきっかけとなるケースも増えています。その背景には『痩せていることが美しい』という社会的風潮の強まりや、SNSの普及によって他者と比較する機会が増えたことが関係していると考えられます。

最近では、小学生など低年齢での発症や、男子の患者が増えているのも特徴です。また、コロナ禍による生活環境の変化やストレスが、発症や悪化の引き金となるケースも報告されています。」

子どもに見られる主な「4つの摂食障害」

島田先生によると、子どもに多く見られる摂食障害は、主に以下の4つに分類されるそうです。それぞれの特徴、主な行動サイン、根底にある恐怖・動機、主な身体的サインを簡潔にまとめていただきました。子どもの様子を理解するためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。

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1.「神経性やせ症」

特徴:標準体重を維持することの拒否、体重増加への強い恐怖、自己の体重・体型に対する認知のゆがみがある。
主な行動サイン:食事量の極端な制限、カロリー計算への執着、過剰な運動、食事を隠す・捨てる。
根底にある恐怖・動機:「太ること」そのものへの病的な恐怖、痩せていることによる達成感や安心感。
主な身体的サイン:著しい体重減少、無月経、産毛の増加、低体温、徐脈(脈が遅くなる)、皮膚の乾燥。

2.「神経性過食症」

特徴:コントロール不能な「むちゃ食い」と、体重増加を防ぐための代償行動(自己誘発性嘔吐、下剤乱用など)の繰り返しがある。
主な行動サイン:隠れ食い、食後のトイレ利用の増加、大量の食品の買い込み、頬の腫れ(唾液腺腫脹)、手の甲の吐きダコ 。
根底にある恐怖・動機:体型や体重への強いこだわり、むちゃ食い後の激しい自己嫌悪と罪悪感、体重増加への恐怖。
主な身体的サイン:体重は正常範囲か、やや多めの体重である場合が多い。電解質異常、虫歯、逆流性食道炎。

3.「過食性障害」

特徴:代償行動を伴わない「むちゃ食い」の繰り返し。むちゃ食いに対する強い苦痛を伴う。
主な行動サイン:大量の食べ物を早食いする、満腹でも食べ続ける、一人で隠れて食べる、食後に抑うつや罪悪感に苛まれる。
根底にある恐怖・動機:感情的な苦痛(ストレス、不安、抑うつ)からの逃避。
主な身体的サイン:体重増加、肥満に伴う生活習慣病のリスク。

4.「回避・制限性食物摂取症」

特徴:体重や体型へのこだわりとは無関係な、持続的な食事摂取の困難がある。
主な行動サイン:特定の食感・匂い・見た目の食物を極端に避ける、食べることへの無関心、窒息や嘔吐への恐怖から食事を避ける。
根底にある恐怖・動機:感覚過敏、過去の食に関するトラウマ(窒息、嘔吐など)、食べること自体への不安や恐怖。
主な身体的サイン:著しい栄養不足、体重減少または成長不良、経管栄養への依存。

4つの特徴から、「うちの子はもしかしたら摂食障害かもしれない」と思ったときに、親はどのように接するとよいのでしょうか。また、相談したいときはどこに頼るとよいのかを知りたい方も多いと思います。次回の記事では、声のかけ方のポイントや相談先についてご紹介します。

shukana/webライター

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