TVアニメ『桃源暗鬼』スペシャル対談! 一ノ瀬四季役・浦 和希と第二クール・練馬編オープニング主題歌「阿弥陀籤」担当アーティスト・超学生が作品の魅力と“声の表現”を語り合う!
誰もが知っている昔話「桃太郎」に登場する“鬼”と“桃太郎”、それぞれの血を継ぐ者たちによる抗争を鬼側の視点から描いた新世代ダークヒーロー作品『桃源暗鬼』。
2025年7月よりTVアニメの放送が開始し、現在は第二クール・練馬編が絶賛放送中の本作より、鬼の血を引く主人公・一ノ瀬四季役を演じる声優の浦 和希と、第二クールのオープニング主題歌「阿弥陀籤」を歌唱する歌い手・超学生によるクロストークが実現! 直接対面するのはこれが初めてながらも、お互い“声”を扱う表現者として共鳴する部分も多い二人が、ますます熱く激しく加速する『桃源暗鬼』の魅力と「阿弥陀籤」に込めたこだわりについて語り合う!
【写真】TVアニメ『桃源暗鬼』浦 和希×超学生が作品の魅力と“声の表現”を語り合う!【インタビュー】
“声”と“歌”――表現者ふたりが語り合う創作の哲学
──浦さんと超学生さんは、この取材が初対面らしいですね。
超学生さん(以下、超学生):そうなんです。僕の場合、そもそも声優さんとご一緒すること自体が珍しいので、本当にありがたい機会です。
浦 和希さん(以下、浦):いえいえ、僕も出演作品の主題歌を担当しているアーティストさんとお話する機会はほぼないので、すごく楽しみにしていました。実は、いつもヘアメイクをお願いしている事務所が一緒らしいんですよね。
超学生:僕もメイクさんづてに教えてもらいました(笑)。
──意外なご縁ですね。では早速、作品のお話に。まずは『桃源暗鬼』との出会いについてお聞かせください。
浦:僕はオーディションを受けるタイミングで初めて原作コミックを読ませていただきました。“鬼”が登場する作品はいろいろあるなかで、“桃太郎”を題材にしている漫画は今まで意外となかったなと思って、珍しく感じましたね。でも、誰しもが知っているお話だからこそ、世界観に没入しやすい。しかも本来なら桃太郎が正義側で鬼が退治される側ですけど、この作品は逆の視点になっていて、鬼側が主人公として戦っていく。昔話の「桃太郎」へのリスペクトを込めつつ、新しい視点で現代化された話だなと。テンポ感もすごく良くて、夢中で一気に読み終えてしまいました。
超学生:僕は偶然、2年ほど前に何かのきっかけで知って原作を読んでいたんです。しかも自分の生配信で「『桃源暗鬼』っていう漫画が面白いよ」と話していたくらい、普通にファンとして楽しんでいました。その本当に数ヶ月後に主題歌のお話が決まったので、匂わせみたいになるといけないから、逆に配信で作品のことを話せなくなってしまって(笑)。
浦:あー、誰かに怒られるかもしれないですものね(笑)。
超学生:そうそう(笑)。なので、僕にとっては本当に夢のようなお話でした。僕もこの作品のテンポ感が好きで、第1話から一気に世界へと引き込んでいくスピード感がすごく印象的ですし、あとは絵力も強いですよね。漫画なので基本はモノクロで表現されるなか、鬼の能力は血液がメインだったり、シチュエーションも森や学校などあちこちに移り変わっていくじゃないですか。それをしっかりと線で描き分けている技術に惹かれました。あんなに激しくアクションしているのに、何をやっているのかがちゃんとわかるところがすごいなと思います。
──原作からのファンであれば、アニメ化への期待も大きかったのでは?
超学生:もちろんです。僕は音楽をやっているのもあって、声フェチというか、好きな作品がアニメ化される時は、キャラクターがどんな声になるのかがすごく気になってしまうんです。「このキャラはあの声優さんが担当するのかな?」と想像したり、インターネットでファンの方が声優予想しているのを見て楽しんでしまうくらいで。
浦:そのお話、立場的にちょっと身が引き締まりますけど(笑)、めちゃくちゃ嬉しいですね。大きな括りで同じ「声を扱う職業」として、声の部分に注目してもらえるのは、声優としてより頑張ろうという気持ちになりますし、期待してくださっている作品のファンの方たちを一人でも多く喜ばせなくてはいけないなと、改めて思いました。こうやって一緒に作品を盛り上げる仲間として参加してくださる方が、ちゃんと温度感高くいてくれることは作品の勢いにも繋がると思いますし。
超学生:ありがとうございます。僕はもう、歌をやってるだけのオタクなので。つい先日も、普通にアニメイトさんへ買い物に行ったんですけど、『桃源暗鬼』のコーナーに人が集まっていて最初は近寄れなかったんです。空いたタイミングを見計らってグッズをいっぱい買って帰りました。それくらいこの作品に対しては熱量があります……というか、僕がただのオタクなだけなんですけど(笑)。
──先ほどの声優予想の話でいうと、主人公の一ノ瀬四季役が浦さんに決まった時はいかがでしたか?
超学生:絶対にどこかで耳にしたことはあったと思うのですが、恥ずかしながらそれまで浦さんのことは存じ上げていなかったので、まずはどんなお芝居をされる方なのか、すごく気になっていました。そして、いざアニメの放送が始まったら、もう本当にぴったりで。お芝居も素晴らしいですし、浦さんが担当してくださって良かったなと、勝手に厄介オタクみたいに感謝していました(笑)。今では漫画を読んでいても浦さんの声で脳内再生されますし、僕の中では四季の声は浦さん以外にあり得ないです。
浦:原作からのファンの方にそう言っていただけて、本当に嬉しいです。
──超学生さんは、浦さんが演じる四季の声のどんなところが「ぴったり」と感じたのでしょうか。
超学生:僕はお芝居に関しては素人なので滅多なことは言えないですけど、四季の魅力は柔軟さと素直さだと思うんです。一見、やんちゃですごく頑固者に見えますけど、意外と誰かに教えられたことはすぐ取り入れるし、相手がすごいと感じた時は「なんで自分にはできないんだろう?」と考えて、すぐ切り替えられる。その四季の素直さをお声に乗せるのが浦さんは得意なんだろうな、と思いながら聞いています。きっと浦さんご本人の人柄もあると思うんですけど、そういう柔軟さ、純粋さみたいなものが、熱を持って込められていたのがすごく印象深いです。
浦:いや、めちゃくちゃ嬉しいです! まさにそこはすごく大事にしているところで。オーディションの段階から「四季の可愛げのあるところや愛嬌を大事にしてほしい」というお話をいただいていたんです。作品の内容的に戦闘シーンが多いので荒々しい部分が目立ちますけど、日常会話でのちょっと抜けたところとか、普通の高校生らしい愛嬌を意識してアフレコさせてもらったので、そう言っていただけると、ちゃんとやれていたんだなと思えて、自信になりました。ありがとうございます。
超学生:こちらこそありがとうございます!
──四季というキャラクターは、浦さんにとってどんな役でしたか? やりがいや難しさを感じた部分があればお聞きしたいです。
浦:四季はとにかく自由度が高くて、戦う時はかっこよく決めるけど、普段は情けない部分やふざけてる部分もあるし、素直に人を褒められる素敵な部分もある。その幅がすごく広いんです。キャラクターを演じる上で「ここまでやると、このキャラクターではなくなるよね」というラインがあったりするんですけど、四季くんは本当にどの色を出しても四季くんになってくれる。だからこそ、普通にやると全部が似たり寄ったりになってしまうので、意識的にどう変えるかが大変でした。デフォルメされた絵柄のかわいい顔の時はどう表現したらかわいさが出るか、真剣な表情の時はどうやったらキリっと見えるか、そこのメリハリが本当に大変でしたね。普通に読み解くだけでは引き出せない、自分から生み出していかなくてはいけない部分がたくさんありました。
超学生:それは、キャラクターから逸脱してはいけないけど、ゼロから生み出さないといけない部分もある、ということですよね。
浦:はい。「声をつける」ことは結構な情報がついてしまうので、たった1音だけでも元気なく聞こえたら全体的にそう聞こえてしまう。声が与える影響はすごく大きいからこそ、一つ一つのお芝居に対して責任をもって、四季という人間を作らなくてはいけないなという気持ちでした。
超学生:今のお話、音楽アーティストとしてもすごく通じる部分があるなと思いました。僕の場合は、元のボカロ曲があって、それを歌わせていただくことが多いので、「この曲の主人公だったらこの歌い方はしないよな」という考え方をするんです。楽曲の主人公になりきった上で、その人が「しないこと」をまずマイナスして削いでいく。でも、それだけでは100点の箱の中にしか収まらないので、そこを120点にするために自分の内側から押していくのが、今おっしゃっていた「ゼロから生み出して足していく」部分だと思うんです。セリフのお芝居にも歌と似通った部分があるんだなと、すごく興味深かったです。
浦:うわあ、嬉しいです。僕もこんな話が聞けていいのかなって。アーティストさんのアプローチの話はなかなか聞ける機会がないですから。
──では、アニメ第一クールを振り返って、特に印象深いシーンや大変だった演技はありますか?
浦:シンプルに大変だったのは、京都編の(桃宮)唾切との戦闘シーンですね。戦っている最中に重力をずっと感じなくてはいけないのが本当に大変でした(※四季は唾切が操る桃部真中の能力によって通常の何十倍もの重力で圧迫され続ける攻撃を受けた)。
超学生:面白い!
浦:ずっと重力を感じている声を乗せてないといけなくて。でも、声を乗せすぎるとくどくなるし、ダメージ感を出しすぎると、視聴者の皆さんに「俺はいまダメージ食らってます」というのを押し付けてる感じになってしまう。そもそも声を出していない瞬間もあるはずなので、引き算をちゃんと意識して、なおかつ心のこもったセリフはちゃんと届くように、すごく計算しました。家で「ここはこうして……」とプランを組み立てて、ある種、自分で演出を考えるぐらいまでやりましたね。ここは一辺倒に演じると絶対に面白くなくなるなと思ったので。
超学生:ファンみたいな質問ですみませんけど、重力で押さえつけられて伏せている姿勢の時は、どうやってアフレコをするんですか? アフレコスタジオのマイクは動かせないと思うんですけど。
浦:基本的には自分の方が動いちゃいますね。例えば、這いつくばって上半身だけ起こしている姿勢の時なら、マイクに向かってそういう体勢になるように体を動かしたり。あとは、家で本当に這いつくばってみて、体に毛布とかをいっぱい乗せて重みを感じながら、「こういう状況の時はどこの筋肉を使ってしゃべってるんだろう?」というのをシミュレーションしました。それをやると、ちょっと体勢を変えるだけで声の出し方がめちゃめちゃ変わることがわかるんですよね。声に乗るものも全然違って差が生まれるので、その時の筋肉の使い方を覚えておいて、アフレコでは立ち上がった状態でそれを再現するっていう。
超学生:えー! 声優さんってすごいですね! いつもアニメを観ていると、取っ組み合いになったりするシーンとかはどうやって録っているのか気になっていたんです。
浦:そういうシーンも立った状態で録っていますね。でも、重力のシーンは本当に大変でした。家で毛布を被りながら練習している時に、たまに冷静になって、「俺、何でこんなことしてるんだろう?」と思ったりして(笑)。
──超学生さんが第一クールで印象に残っているシーンは?
超学生:浦さんがいる前で言うのもアレですけど、僕は(手術岾)ロクロくんが推しキャラクターでして。
浦:おお!
超学生:なのでロクロの名場面になってしまうんですけど、瑠々との回想シーンの後に、アグリと戦って初めて血蝕解放をする場面のセリフ、瑠々を纏って敵に立ち向かう時の「大丈夫じゃなくても大丈夫だ」という言葉に、ロクロらしさが詰まっているなと思って大好きなんです。極度の不安症だけど、敵と戦うために自分を奮い立たせないといけない。でも、彼は賢さもあるから、自分を奮い立たせるためのロジックが必要なタイプだと思うんです。まず「自分はいま大丈夫じゃない。でも、瑠々がそばにいるから大丈夫なんです」と自分に言い聞かせて、「僕は無敵だ」と自己暗示をかけていく。あの流れに彼の人間性や過去、そしてこの不利な状況をどうにか脱したいという熱意、いろんなロクロらしさが詰まっていて、すごく印象的なシーンでした。
浦:これは原作者の漆原侑来先生とお話しした時に聞いたんですけど、実は、もともとプロットを練っていた段階ではロクロが主人公だったらしいんですよ。
超学生:えっ、そうなんですか!?
浦:でも、ロクロはすぐ逃げ出してしまう性格なので、それだと話が広がらないということで、四季が主人公になったという話で。なので先生的には、一番自分を投影しているのはロクロだとおっしゃっていました。「自分の性格とめちゃめちゃ似てます」って。
超学生:そうだったんですね。僕がロクロを好きなのは、多分、自分に重ねられるところもあるからだと思うので、もしかしたら先生とシンパシーを感じるところがあるのかもしれない。いつかロクロが主人公の番外編とかも読んでみたいですね。
浦:いいですね、それ。
超学生:ちなみに浦さんは、四季以外で推しのキャラクターを挙げるとしたら誰ですか?
浦:うわあ! この質問、たまに聞かれるんですけど、難しいんですよね。その時によって毎回変わるんですけど、今はやっぱり(桃寺)神門が好きです。彼は自分を貫くための強さを持っているけど、まだ青いところがあるからこそ、いろいろな問題が起こることになって……第二クールのネタバレになるので、どこまで話していいかわからないですけど(笑)。でも、そういう人間臭さみたいなところが、見ていて応援したくなります。
超学生:揺らぎのあるところがいいですよね。固まりきっていて「俺はこれ以外認めない!」みたいなキャラクターもいるなかで、神門はふとした衝撃で揺れてしまいそうな繊細さがあって。
浦:うんうん、ちゃんと周りにも目を向けられるし、自問自答しているところが、本当にいいやつなんだろうなっていう。彼の今後の成長がすごく楽しみです。
「運を天に任せるしかない」――“阿弥陀籤”に込めた理不尽さと覚悟
──続いて、超学生さんが歌う第二クールのオープニング主題歌「阿弥陀籤」についてお伺いします。どのように制作を進めていったのでしょうか。
超学生:この曲を作ってくださった辻村有記さんとご一緒するのは、2022年に配信リリースした「Fake Parade」、僕のニューアルバム『アンフィテアトルム』にも収録されている「Hazure」(TVアニメ『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』オープニング主題歌)に続いて3度目になるのですが、まず制作にあたって「僕が本来出せる音域を無視して作ってください」とお願いしたところから始まりました。
浦:えっ!? それはあえてオーダーしたんですか?
超学生:はい。『桃源暗鬼』は四季たち登場人物の“成長の物語”だと感じたので、僕ができる範囲で100点を出すのは、なんだか作品とフェアじゃないなと感じたんです。なので「曲が来たら頑張ります」とお願いをして、挑戦させていただきました。楽曲を聴いてくださった方はわかると思うのですが、男性キーとしてはめちゃめちゃ高い曲なんです。僕も今まで出したことないキーだったので、デモ音源をいただいてからボイストレーナーの先生にめっちゃ相談をして。レコーディングも本当に壮絶で、辻村さんのディレクションもありながら、なんとか完パケまでやり遂げました。きっと『桃源暗鬼』の主題歌でなければ、やっていなかったと思いますし、この作品だからこそできたことだと思います。僕自身も歌い手としてこの楽曲に高めてもらいましたし、初めての感覚でした。
浦:すごすぎる……!
──どうやって歌えるようになったのですか?
超学生:歌える音域には個人差があって、喉の形や骨の太さで決まる部分があるので、多分、物理的に僕に向いている音域ではなかったので、裏技みたいなものを探るところから始まりました。レコーディングでは一発で録る必要はないので、それこそマイクを低くして座りながら歌ってみたり、どの姿勢が一番高い声が出やすいかを試したりもしました。それと辻村さんは、もともとHaKUというバンドのボーカルをやっていて歌がすごく上手い方なので、レコーディングブースの向こう側からヘッドホンを通してお手本の歌を歌ってくれたんです。それを参考により声の出しやすい発声の仕方や、筋肉をガチガチにするのではなく、力を抜くことも大事なことがわかって、実は自分でストッパーをかけていたことに気付けました。
浦:そういう気付きってありますよね。僕もそれこそ四季みたいなタイプの役はあまりやったことがなくて、もっと普通のティーンエイジャーや細めの男の子の役が多かったのですが、四季を演じたことによって、「俺ってやんちゃな声も意外と出せるんだ」ということに気付いて。
超学生:声優さんは役によっていろんな声を出す必要がありますもんね。ボーカルはやろうと思ったら自分の好きな世界観だけで貫くこともできるので。きっとオーディションでは何役も受けたりすると思いますし、そう考えると、日々、可能性が広がり続けるんじゃないですか?
浦:それが楽しいところでもあるんですよね。それこそボーカルと同じで、自分の喉で出せる音域には限界があるので、例えば声の低いキャラを2人演じるとなると、どうしても差をつけるのが難しくなるんです。でも、同じ「低い声」でも、例えば「柔らかく聞こえさせる」とか「硬く聞こえさせる」みたいなテクニックを使って演じ分けることができる。
超学生:なるほど、すごい!
浦:それこそ皇后崎 迅 役の西山宏太朗さんは、地声が結構低くて割とエッジボイスに近いんですけど、ご本人の物腰も喋り方もすごく柔らかいので、出てる音域は低いのに、なんとなく高く聞こえるんですよ。でも、皇后崎はちゃんとドスの効いた声じゃないですか。そういうことに気付いてから、自分も演じる際のアプローチ方法として取り入れるようになりました。
超学生:面白いですね。お話を聞いていると、歌に重点を置いている自分とお芝居に重点を置いてる浦さん、入り口はそれぞれ違うけど、到達するところはなんとなく似ているのかなと思いました。
浦:うんうん。自分も超学生さんのお話を聞いていると、別分野からの発想だから発見もありますし、すごく刺激を受けます。
──いいですね。楽曲のお話に戻りまして、「阿弥陀籤」は作品や第二クールの内容とどんな部分でマッチすると感じますか?
超学生:これはあくまで僕の印象ですが、この曲は特定のキャラクターに寄せた曲ではなく、作品全体をイメージして作られていると感じていて。「ここは迅くんの過去かな?」とか「ここは桃太郎側の視点だろうな」みたいに、いろんなキャラクターに当てはまる部分が歌詞にある。そのなかで強いて第二クールでマッチする部分を挙げるなら、この先で描かれる(桃華)月詠との戦いだと思います。お互い血の滲むような努力と実践を重ねて、極限まで高められた者同士がぶつかるからこそ、最後は「阿弥陀籤(あみだくじ)」のように、運を天に任せるしかない。そういう部分が、今後の戦いと親和性が高いなと感じています。
浦:いやあ、僕はシンプルにマジでかっこいい曲だなっていうのが第一印象でした。音楽の造詣が深くないので浅い言葉になりますけど、ある種、暴力的でありながら、繊細でもあって、『桃源暗鬼』の世界観を丸ごと投影してくださっているなと思います。四季たちが生きる世界はすごくバイオレンスですけど、なぜ彼らが戦い続けるかというと、すごく繊細な事情が色々重なっているからで。戦いたくないはずなのに、何かのために戦わなくてはいけない。その拳の裏に見える心みたいなものを、この楽曲から感じました。人によってはすごくアッパーでアガれる曲でもあるし、ある種、浸ってしまう曲でもあるんじゃないかなって。
超学生:その「理不尽さ」みたいなものを大事に歌おうと思っていたんです。完全に戦闘狂みたいな曲にはしたくなかったので、そこを汲み取っていただけたのはすごく光栄です。
浦:解釈一致で良かった! 俺の感性は間違ってなかった(笑)。
超学生:それと今お話しながら思ったんですけど、「後戻りできなさ」みたいなものが、「阿弥陀籤」というモチーフに投影されているのかもしれないですね。あみだくじも一度始めたら、もう進んでいくしかないじゃないですか。
浦:確かに! 間違いないですね。まさにこれからの戦いにばっちりハマる曲だと思います。
──そんな第ニクールの今後の見どころ、楽しみにしているところを教えてください。
浦:練馬編はより“総力戦”という感じで、京都編でもみんな活躍していましたけど、より一層、全員で困難に立ち向かう場面がたくさんあります。そしてもう一つの大きなテーマは“友情”。四季と神門との関係もそうですし、今まで険悪だった皇后崎と四季もお互いの事情を知っていく。そこから各々が何を思うのか、どんな行動に出るのかが今後の物語に強く作用するので、ぜひ観逃さないでほしいです。
超学生:僕が注目しているのは、敵味方問わず、それぞれのキャラクターがちゃんと一つの結論をこれから出していく、というところです。友情関係にせよ、自分自身の戦い方にせよ、「俺は今はこうなんだ」と結論を出していくのが、すごくいいなと原作を読んでいて思ったので。あとは、各キャラクターの今まで明かされてこなかった部分が明るみになっていくので、いち視聴者としてすごく楽しみにしています。
──ありがとうございます。ちなみに作品の話からは逸れるのですが、お二人は「声を使う活動」という意味で共通する部分がありますよね。浦さんはコンテンツのお仕事でボカロ曲の「歌ってみた」動画をYouTubeに公開していますし、超学生さんは『王様戦隊キングオージャー』で声のお仕事をされたりと、お互いの領域にも足を踏み入れています。
超学生:僕、浦さんの「歌ってみた」動画を拝聴しましたよ。なとりさんの「Overdose」と、(海渡翼と)お二人で歌っているDECO*27さんの「ラビットホール」を。
浦:えっ、マジですか! うわ、めちゃくちゃ恥ずかしい……!(笑)。
超学生:いやいや、素晴らしかったです。お声が良すぎて、セリフから始まる曲だと、一回そこを止めて「おお、いい声……」ってなってしまって(笑)。声が良くて歌まで上手いとなると、我々歌手としては、もう勘弁してほしいです(笑)。
浦:とんでもないです! いやあ、でも歌が上手い人は、声の使い方が上手いから声優も上手いんですよ。マジで。
超学生:いやいやいやいや!
浦:もちろんお芝居は経験がないと大変な部分はあると思うんですけど、才能はめちゃくちゃあると思います。超学生さんもお声がいいし。なので正直、もう勘弁してください。僕らの仕事を取られちゃうんで(笑)。
──お互いに謙遜とけん制をし合ってますね(笑)。
浦:でも、こうして声優に対してリスペクトをしてくださってるのがすごくありがたいです。いつかご一緒してみたいですね。もちろんお互い声優でもいいですし、僕が曲の後ろでヤジを飛ばすとかでもいいので(笑)。
超学生:いやいや(笑)。でも、そんなことを言っていただけるなんて、嬉しすぎます。もし実現できるとしたら、ボイスドラマみたいな曲を書きますけどね、僕。今回初めてご一緒させて、すごく素敵な方だったので、ぜひまた別の形でもご一緒できればと思いました。
──期待しております。最後に今後、歌や演技で挑戦してみたいことはありますか?
浦:僕はすごく不器用で、二つのことが同時にできない人間なんです。だから今は声優を頑張ろうかなと。でも歌うのはすごく楽しいし、歌で何かを届けるのもかっこいいなと思うので、ゆくゆくは……60歳とか70歳ぐらいになった時に、もし機会があるなら人前で歌おうかなという気持ちではいます。
超学生:なんで60~70歳なんですか?
浦:多分その頃には、いろんなことがどうでもよくなってると思うので(笑)。プライドとか、恐れ多さとか、そういう青い部分が取っ払われて、「歌いたいな」と思う瞬間がきっと来ると思うので。それが自然な心の流れかなと。まあ、今日、超学生さんとお話したことがきっかけで明日そう思うかもしれないですけど(笑)。
超学生:僕は逆に、今日お話を聞いていて、声優さんのお仕事はすごすぎて自分にはできないなと思いました。でも強いて今後やりたいことを挙げるなら、ミュージカル映画が好きなので、歌うキャラクターとして作品に関わってみたいです。セリフもあるような役で、本編の中でボーカルとして関われたら嬉しいなと思いますね。
浦:それはぜひやってほしいですね! 歌の実力はもう担保されてるわけですから。
──それこそ『マクロス』シリーズのように、声優担当と歌担当の2人でキャラクターを演じる作品もあるので、いつか浦さんと超学生さんでそういう役柄を担当する日が来るかもしれません。
超学生:それ、めちゃくちゃ劇的じゃないですか! でも視聴者の方は「浦さんが歌ってくれたらいいのに」ってなるんじゃないですか。こんなに歌える方なので。
浦:いやいやいや! でも、せっかくご縁ができたので、またいつか、いい意味での融合があると嬉しいなと思います。
[文・北野創 / 写真・MoA]