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Galileo Galilei、DAIKIの加入で5人組バンドのダイナミズムを見せた『TRITRAL TOUR』東京公演をレポート

SPICE

Galileo Galilei

Galileo Galilei “TRITRAL TOUR”


2025.11.26 Zepp DiverCity

Galileo Galileiの現在地を示した“3兄弟アルバム”『MANTRAL』『MANSTER』『BLUE』を軸にしたツアー『TRITRAL TOUR』。今年3月に東京ガーデンシアターで実施した『あおにもどる』は再録アルバム『BLUE』にちなむライブであったため、今回改めて『TRITRAL TOUR』が実現したのは必然的な流れだ。そのことに加え、現在のGalileo Galilei(以下、GG)というバンドを端的に表していたのはギタリストDAIKIが正式メンバーとして加入後初めてのツアーだったことだろう。約10年に渡って、BBHFのメンバー、そしてGGや尾崎雄貴(Vo/Gt)のソロプロジェクト・warbearのサポートとしても不可欠なミュージシャンだが、メンバーとして正式加入したことで現実的に新たなバンドがそこに存在していたのだ。

横一列に楽器やアンプが並ぶシンプル極まりないステージと満員のフロアが醸し出す空気が、ロックバンドのライブ開演前のムードを醸し出す。物理的には『あおにもどる』のステージもシンプルだったが、Zepp DiverCityのライブハウス感や『Tour M』の演劇的な舞台との対比があるからかもしれない。今日はそれらとは違い、ロックバンドのライブを待っている、そんな感じだ。定刻1分前にすずめちゃんペンライトを点けてみるファンが見える。その遠慮深さにGGのフロアらしさを感じる。三角形のオブジェが背景に浮かび、低い周波数が恐怖を感じさせるSEが響き渡り、さながら実験的なエレクトロニックなアーティストが登場しそうな雰囲気の中、『MANTRAL』収録の「5」のイントロが流れ出す。開場BGMでもカニエ・ウェストが流れていたせいか、この曲のイントロにも実験性を感じて、どんなライブになるんだろう?と、少し不穏な気持ちになる。が、オープナーから「5」であることににやついてしまうし、DAIKIのフルアコが鳴らす極上の単音フレーズで霧が晴れる気分に。しかも大久保淳也(Sax/Fl&etc.)を加えた6人編成が生み出すナマ感に「音源ではこんな曲だったっけ?」という新鮮な感覚に包まれた。

尾崎雄貴

岩井郁人

DAIKI

さらに続く「UFO」では眩いを超えて明るすぎるバックライトと眼前が拓けるようなギターフレーズで(しかも岩井郁人(Gt/Key)とDAIKIのユニゾンギターだ!)清新な気分に満たされる。直感的に「これまでで一番バンドらしいな」、そんな言葉が頭に浮かんだのはステージの両翼を担う2人のギタリストという視覚的な要素だけじゃなく、実際に2人の音色の棲み分けが明快だからだ。続く「リトライ」では、ペンライトが灯り、それを見た雄貴の笑顔も見える。珍しく「行くぞ、ワン・ツー、ワン・ツー・スリー!」と声も挙げ、サックスソロが歓待を受ける。「季節の魔物」では序盤にも関わらず、早くも岡崎真輝(Ba)がステージ前方に出てくる場面も。こんな熱いGGのライブ、見たことない。

ライブで何度も聴いたわけじゃない曲たちがそれを意識させないのは、メンバーが演奏を楽しんでいることがビビッドに分かるからだろう。そこにおなじみのナンバー「四ツ葉探しの旅人」のイントロでさらにバイブスが一段階上がり、2Aで自然とクラップも起こる。ライブで、より瑞々しいネオ・アコースティック名曲の印象を強めたことも新鮮に映った。雄貴がディランばりのボーカルで聴かせる「MATTO LIFE」で語り部としての存在感を明らかにしたあとは、今やGG恒例のダンスタイムナンバー「SPIN!」へ。岩井が回りながらステップを踏んでいる、その解放された様子にも今のGGを感じた。

岡崎真輝

尾崎和樹

リングアナのようなナレーションでメンバー紹介が盛り込まれた「あそぼ」に続いては歌詞にリンクするように雄貴が椅子に座って歌う「チャウダー」。ここでも彼の語り部として自由度を増した姿が明確に。シンセが広げる空間、オルタナティヴR&Bにも似た音楽性がライブのフックになっている。続く「BABY I LOVE YOU」や、シンセベースがイーブルな響きを醸す「ロリポップ」。ここの3曲は今回のセットリストの中でも人間の闇や本性に潜るセクションとしてうまく機能していた。性質の違う『MANTRAL』『MANSTER』どちらのアルバムにも通底する部分を見た気分だ。

空気を反転させるようにフロントのトリプルギターがエネルギーを押し出す「クライマー」、のっけから雄貴が強力な高音で突き抜ける「ブルペン」はまさに降りられない戦いがイメージされ、尾崎和樹(Dr)のイレギュラーかつ断続的なビートがそれを支える。タフさはバイキング神話を下敷きにした荒々しい「ヴァルハラ」へ。GGには珍しいメタル寄りなサウンドが、むしろメンバーのバンドキッズの側面を浮かび上がらせて楽しいぐらいだ。この幅をこれまで以上に面白がれるバンドとファンの関係を見た気もする。

Galileo Galilei

流れをぶった切るように雄貴の「はい。て、ことで皆さんいかがお過ごしでしょうか。始まります、尾崎雄貴の下手くそMC」と、場をフラットにしたところで、ツアーの趣旨を説明。

アルバム3作をリリースしたにも関わらず、それをツアーで出せていなかったことをサラッと話すと、ステージに白いパーカーが5着吊るされたガーメントが運び込まれる。秘密結社“やさしいせかい.com”にDAIKIを招き入れる“儀式”と称して、雄貴、岩井、和樹、岡崎の4人でDAIKIにパーカーを着せる。ちなみにこの秘密結社の主な活動は日常にある嫌なことをしらみ潰しにすることだそうだ。大いに期待したい。当然、披露される曲は「やさしいせかい.com」で、ここからはバンド自身のスタンスを表明する選曲が展開していく。「秘密結社の社歌」だと雄貴が言った「やさしいせかい.com」の昔のスーベニールソングっぽい佇まい、そしてGGを表す“くじら”は5匹になったんだよな、と思いつつ味わう「4匹のくじら」。この曲終わりで全員パーカーを脱いでいたが、どうやらシンプルに暑かったようだ。

尾崎雄貴

全員が自分の演奏とアンサンブルを楽しんでいるように見える「ナンバー」、ストリングスリフのSEと不規則なクラップが印象的な「タタラ」の披露も嬉しい。リズムキープのビートは少なめで、楽器の抜き差しで展開していくこの曲もまた、バンドならではのスリリングな展開といえるだろう。3兄弟アルバムの多彩さを今更ながら思い知ったし、再度3作品をじっくり聴きたいと思った。そんな5人バンド・Galileo Galileiに浸っているところに雄貴が、「ほんとは岩井くんに作った曲なんだけど、今日はDAIKIくんに歌う」と話したところで察しのいいファンは気付いた様子で、「夢みがち病的な場合」の歌い出しで歓声が上がる。何度目かの記念日的な日に鳴らされる「ギターバッグ」だ。ギターすら持ってこなくていい、空のギターバッグと君の存在さえあればいいのだ。会社とか学校とは違う、不確定だが代わりにどでかい運命を感じる出会いが積み重なって動いていくバンドという存在。それをただ演奏で見せてくれる彼らに感極まっていると、本編ラストはこの5人で綴る「あおにもどる」。岩井、DAIKIの2人で増幅させていくアウトロのフレーズがバンドという旅を立体的に見せてくれるようだった。

Galileo Galilei

しみじみするというより、ダイナミックで、ときにユーモラスな本編のムードに湧くフロアから起こるアンコールはいつも以上の熱量。まず岩井がひとりで登場しピアノを弾き始める演出が岩井をモーツァルトに見立てた感じの新曲「アマデウス」。畳み掛ける展開も雄貴の爆発力のあるボーカルも新鮮に響く。さらにもう1曲の新曲「とりあえず今は」で珠玉のトリプルギターも聴くことができた。すでにライブで大化けしている。そして雄貴が全員に一言ずつ感想を求めると、DAIKIは「メンバーになって幸せ」、岩井は「リードギタリストが2人になって、DAIKIくんのカッコいいギターに影響を受けている」と言う。岡崎は「5人になって最強のGalileo Galileiで進んでいきたい」とシンプルにして前向き、和樹はいつも通り丁寧な語り口で「DAIKIくんが加入して初めてのツアーは今回だけなので、思い出に刻んで生きていきましょう」と、話が大きめに。最後に雄貴は「5人になって面白く変わっていくんで。売れるって意味じゃない追い風が吹いてるんで」と、らしい言葉で締めくくった。メンバー同士の化学反応はギタリスト同士に限ったことじゃない。それは明るい火花が散るようなアンサンブルが聴けたラストの「星を落とす」にも明らかだった。

なお、来年5月からは新たなツアーもスタートする。

文=石角友香
撮影=SHUN ITABA @shun_officially

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