猫に多い不治の病『慢性腎不全』知っておきたい症状や予防法 気づくヒントは「多飲多尿」
猫に多い不治の病「慢性腎不全」
猫にとって「慢性腎不全」は、まさにラスボスのような存在。10歳を超えた高齢猫にとっては身近に迫る不治の病といっても過言ではありません。
よく「猫は腎臓を壊しやすい」ということを耳にするかと思いますが、なぜなのでしょうか。
そこで今回は、猫に多い不治の病「慢性腎不全」について解説します。
まずは、腎臓の役割と、猫が腎臓の病になりやすい理由について解説いたします。
腎臓はフィルターのような存在
腎臓はいわば濾過装置。フィルターのような役割を担う臓器で、運ばれてきた血液をこして不要な老廃物を尿として体外へと送り出します。また、尿の濃度を調整したり、血圧のコントロールを行ったりや血液を作る指令を出すホルモンを生成する内分泌機能を兼ね備えています。
この腎臓が何らかの要因(ウイルスや細菌感染、先天的な奇形など)でうまく働かなくなると「腎不全」という状態に陥ります。
今回のテーマである「慢性腎不全」は、腎機能のエラーがゆっくりと進行することが特徴です。初期段階では気づきにくいことから「サイレントキラー」と呼ばれ、恐れられています。
慢性腎不全は猫の宿敵!
先ほど『尿の濃度』というワードが出てきましたよね。尿の濃さは飲水量や腎臓での水分の再吸収量によって左右され、多ければ多いほど薄くなり、少ないと濃くなってしまいます。
猫の場合は砂漠で暮らしていたため、少ない水分から尿を作り出す(老廃物を除去できる)ように進化しました。
しかし、水分が少ない環境でもうまく水を利用できる猫ですが、弱点があります。それは腎臓にダメージが及びやすいこと。腎臓の細胞は再生することができないといわれていて、負担が大きくなり細胞が壊れて機能しなくなっていくと、ますます残りの細胞への負担が大きくなります。このような理由から、猫は慢性腎不全のリスクがほかの動物よりも高くなるといわれています。
腎不全は治らない!
ひとたび機能を失った腎臓は、二度と元気な状態には戻りません。
猫の場合は特別な食事(療法食)や投薬による治療や、皮下点滴を行い脱水を防いでいく必要があります。
猫の「慢性腎不全」知っておきたい症状や予防法
猫の死因の上位に必ず入るのが「慢性腎不全」。全猫共通で気をつけたい病です。
猫の「慢性腎不全」の症状と予防法を正しく理解し、正しく対応できるようにしておきましょう。
多飲多尿
慢性腎不全の症状として最も気づきやすいものは『多飲多尿』です。
腎機能が低下すると尿を濃縮することが困難になり、薄い尿が大量に出るようになります。これによって体内の水分が多く失われるため、自ずと飲水量も増えるようになります。
具体的には、どこからが多尿であり、多飲に当たるのでしょうか?
尿量については、具現化することが難しいでしょう。そこで、目安にしてほしいのが「トイレの回数」です。
平均的には、1日あたり2回〜3回排尿があります。1回の排尿量が少なく頻回である場合は膀胱炎などの可能性が高いですが、1回の排尿量がいつもと変わらず何度もトイレに行く場合は「多尿の疑い」を持つようにしてください。
通常の飲水量は体重1㎏あたり50mlが標準的です。これをはるかに超え、体重1㎏あたり100mlを超える場合は多飲と考えましょう。
ただし、飲みすぎだからと言って水を減らしてしまうと、脱水します。新鮮な飲み水を、お部屋のそこかしこに置いてあげてください。
毛並みが悪くなる
多尿が原因で脱水状態が続くと、毛並みが悪くバサバサとした印象になります。一生懸命に水分補給を行ったとしても、失われる水分量が多ければいずれ脱水に陥ります。
多飲多尿と合わせて被毛の状態もよく観察するようにしてください。また、日頃から毛艶をチェックしたり、脱水サインを確認することも有効な手立てです。
脱水の兆候は、皮膚をつまんで離すことで確かめることができます。元の位置に戻るまでの時間が遅ければ「脱水」状態です。これを、愛猫とスキンシップを取る過程で都度行って確認しておけば安心です。
元気がない、食欲がない
これまでの症状に加え、元気や食欲がない場合も要注意です。
これまで好んで食べていたおやつまで興味を示さなくなった場合、活発になる時間帯になってもうずくまったままでいる場合は、何らかの不調を抱えていると認識してください。
日頃の愛猫の行動パターンを把握し、食の好みや食いつきをよく見て覚えておいてください。
なお、くれぐれも塩分の多い人間の食べ物は与えないこと。仮に猫用であっても、過剰に与えるのはNGです。
いつも以上に嘔吐が多いことも腎不全の症状のひとつです。紹介した症状の中で一つでも当てはまるものがあれば、動物病院を受診しましょう。
まとめ
猫にとって不治の病にして宿命の的ともいえる「慢性腎不全」。発症してしまうと残念ながら腎臓が元に戻ることはなく、最悪の場合は死に至ります。
この恐ろしい敵から愛猫を守る手立てとしては、定期的な健康診断を元気なうちから受け、早期発見することが最も大切です。
最近薄いおしっこが大量に出る、お水をがぶ飲みしている、毛並みが悪くなった気がするなどの違和感があれば、かかりつけの獣医さんに相談してみてください。
(獣医師監修:平松育子)