Vol.81 次世代ドローン「Skydio X10」、画質と暗所飛行能力が大幅アップデート[Reviews]
最新フラッグシップ機「Skydio X10」は、前世代モデルから大幅に改良された。今回は、日本での導入と開発に先駆けたジャパン・インフラ・ウェイマーク社のデモを通じ、その優れた性能を詳しく紹介する
いま注目のSkydio X10は、最新のSkydioシリーズフラッグシップ機として前世代のSkydioシリーズから大幅な改良が施されています。もともと非GPS環境下においても安定した飛行を実現していたSkydioシリーズですが、Skydio X10にアップデートされてカメラの画質は大幅向上、非GPS環境下の暗所でも安定した飛行ができるようになったため、光量の少ない暗渠(あんきょ)やトンネル内の飛行や点検にも活用できるようになりました。
今回は、Skydioを日本国内においていち早く導入、その産業用としての用途開発に従事してきたジャパン・インフラ・ウェイマーク社の飛行デモンストレーションイベントに潜入し、Skydio X10の特長、技術仕様、そして実際の使用シナリオに基づいて、その優れた性能を紹介します。
Skydio X10の飛行性能と耐久性
Skydio X10は、風速12.5m/sまで耐えられる設計で、最大飛行時間は40分(カタログ値、実質35分程度)です。機体サイズはやや大ぶりになったものの(約790mm×650mm×145mm)、折りたたみ式となっているためコンパクトで持ち運びが容易です。飛行可能な温度範囲は-20℃から45℃までで、広範囲の環境に対応します。また、防水性能IP55を取得しており、雨や粉塵の中でも安定して飛行ができるほか、LTEモデルがリリース予定で、携帯電話の電波が届く場所であればどこでも飛行が可能になります。
また、通常のWifiによる接続も2.4GHzのほかに、日本国内仕様として無人移動体画像伝送システムの5.7GHzを利用できるようになる予定です(第三種陸上特殊無線技士免許の取得やJUTMへの登録は必要)。無人移動体画像伝送システムの5.7GHzは出力が無線免許がいらない2.4GHz帯の10倍の仕様(1W)になるため、遠距離への飛行やより安定した映像伝送が可能になります。
Skydio 2+とSkydio X10の比較。サイズは少し大きくなっている
大きく見えたSkydio X10 も折りたたむととてもコンパクトになる
もちろん、Skydioシリーズの特徴でもあるNVIDIAのAIチップを採用したVisualSlam技術も搭載。技術の向上(NVIDIAの最新AI搭載プロセッサーJetson Orin SoC搭載)により、低光量環境でもより安定した飛行が可能となりました。
映像解析により障害物の存在を距離も含めて認識(送信機画面内の黄色〜赤のブロック状のアラート表示)しながら飛行する
Skydio X10の大幅アップデートされたカメラ性能
Skydio X10は、3つのカメラを搭載しています。標準レンズの6400万画素の高画質な可視光カメラ、広角または約32倍相当の望遠カメラ(デモ時は望遠カメラ)、そして赤外線カメラの組み合わせにより、様々なシチュエーションでの撮影が可能です。また、これまでのSkydioシリーズ同様カメラは真上を向けることができるため、天井部分の確認・点検は引き続き可能です。
3眼となったカメラユニット
望遠カメラ
1/2インチセンサー搭載。デジタルズームも4倍まで対応しているため、望遠レンズと組み合わせると最大約128倍のズームが可能です。3m位の距離から7cm程度のクラックスケールがはっきりと見えます。
機体の3m前方にあるタープの骨組みに貼り付けられた小さなクラックスケールもはっきりと見ることができる
赤外線カメラ
FLIR Boson+(ボソンプラス)を搭載。R-JPEGの保存形式に対応しているため、FLIRの「Thermal Studio(熱画像データ解析ソフト)で後処理ができる。赤外線カメラは表示モードをWhite Hot/BLACK Hotを切りえたり温度表示をさせたりすることが可能。また、温度帯の設定もできるため、捜索などで人を探す場合は体温に近い温度帯に設定すれば人を検知しやすくなります。
温度表示や温度帯の設定も可能になった赤外線カメラ
広角カメラ
今回は見ることができなかったが、Skydio X10 には1インチセンサー搭載の広角レンズ(画角93°で35mmレンズ換算で20mm相当、標準レンズは同46mm相当)搭載モデルもあります。スポットライト付きのカメラなので構造物の下側を照らすこともでき、コンクリートの0.1mmのひび割れを最大制度で検出可能ということです。
Skydio X10の暗所での安定した飛行
そして何より、Skydio X10の新たな機能として注目されているのが、非GPS環境における暗所の安定した飛行です。Skydioシリーズは、機体の上下に搭載された合計6つのカメラセンサーにより、空間を認識しながら飛行することができます。通常は屋内や狭所を安定して飛行できるものの、カメラが認識できない低光量環境などでは空間を認識することができず、安定して飛行することが難しいという弱点もありました。
しかしSkydio X10では、暗所飛行・障害物回避センサーの「NightSense」ユニットを搭載することにより、非GPS環境の暗所(暗渠やトンネルなど)でも安定した飛行が可能となっています。
NightSenseの明るいライトが機体周辺を昼間のように照らし、最新のNVIDIAのAI搭載プロセッサ処理能力と相まって安定した飛行を実現
通常環境と同じように暗所でもズームカメラも使える
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Skydio X10のカスタマイズ性
Skydio X10は、カスタマイズ可能なプラットフォームであり、アタッチメントを機体上部や両サイドに取り付けることで機能を拡張することができます。また、RTKやパラシュートなど、将来的な拡張性も見込まれています。
暗所飛行時に利用する「NightSense」アタッチメントは機体上部に設置する
機体上部のほか、機体側面にもUSB-Cポートがあり、アタッチメントを設置することができる(上面のUSB-CポートはNightSenseを取り外したところ)
NightSense以外にさまざまなアタッチメントを発売予定。マイクロフォンはドローンの飛行環境の音を拾うことができる
Skydio X10の製品ラインナップ
Skydio X10の製品ラインナップは下記の通り。ジャパン・インフラ・ウェイマーク社では、VL(Visible Light)バージョンのみの取り扱いとなる予定ですが、
Wifiモデルかセルラーモデルを選択アプリオプションを選択(暗所飛行アプリや自動モデリングアプリの3D SCAN)アタッチメントを選択
することでさまざまな用途で活用ができそうです。
特に暗所や閉所での点検に適しており、鉄道や道路の点検、電力会社での利用が期待されています。特に非GPS環境下でも安定した飛行が可能であり、トンネルや崩落した建物内での探索作業にも利用可能です。
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製品ラインナップ
Skydio X10の導入のサポートと教育プログラム
Skydioシリーズを導入するメリットは、ドローンによる点検を生業としていない人でも一定の研修を受ければ簡単に扱えるようになることです。特にSkydio X10は、機能が豊富であるため、これらを十分に活用できるような研修も現在準備されています。異動の多い大企業や自治体などでは、ドローンの技術を習得した人がまったく違う部署に移動してしまうことも少なくアリません。Skydio X10の導入ハードルの低さはとても魅力的なのではないでしょうか。
ドローンは、特殊な技術を習得した人しか扱えない時代から、より多くの人が手軽に扱えるものになりつつあります。その次世代ドローンの先駆けとも言えるSkidio X10は今後の点検・捜索のツールとしてゲームチェンジャーになるかもしれません。
https://www.drone.jp/special/2024032915005679148.html