ホストやキャバ嬢が大手企業の“偽造身分証”を悪用…ワケあり顧客御用達「アリバイ会社」の大胆手口
「夜職」「無職」「外国籍」「クレジットカード事故歴有」「収入証明が出せない方」「希望の部屋に住めます」
キャバ嬢やプータローなど、ワケありの顧客から依頼を受けたアリバイ会社「スマートハウス」はHP上でこううたい、健康保険証や身分証を偽造して不正に物件を仲介していた。
アリバイ会社を使ってマンションを借りようとしたとして、警視庁保安課は18日までに、不動産仲介業の田沢健太(38)、統括役の荒田直人(33)、無職の庄司悠馬(26)ら3容疑者を私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕した。
3人はインターネット上で「スマートハウス」というサイトを開設。昨年6月、ソフト開発会社社員を装った偽の保険証をマンションの管理会社に提出し、20代女性の賃貸契約を仲介しようとした。免許証と身分証が別の日に届けられ、画像形式が異なっていたことから、不審に思った管理会社が審査で落とし、契約には至らなかった。
アリバイ会社とはなかなか聞き慣れない業態だが、ネット上には多くの同業者が存在している。
「ホスト、キャバクラ、風俗嬢など夜職の従業員はなかなか部屋を貸してもらえず、アリバイ会社に頼るケースが多い。荒田らはネットの登記情報サービスを使って企業の情報を調べ、会社のデータを無断で使用。プラスチックのカードに会社名や所在地、顧客の名前、顔写真をプリントし、複数の保険証や身分証を大量に偽造し、偽物の源泉徴収票まで発行していた」(捜査事情通)
■不正入居ビジネスの実態
荒田容疑者は以前経営していた不動産会社で、アリバイ会社を使って偽造身分証を入手。2021年ごろから自らもアリバイビジネスをはじめ、田沢容疑者と庄司容疑者を誘った。
「田沢ももともと不動産会社で働いていて、18年から自社でアリバイ会社を使うようになった。そこへ荒田から『保険証の偽造ができます』というファクスが送られてきた。偽造された保険証を確認すると、あまりにも精巧だったため、荒田と組むことにした」(捜査事情通)
顧客を集めるのはもっぱら田沢容疑者の役目で、荒田容疑者と庄司容疑者が1件あたり2万2000円で偽造を請け負い、大企業の身分証を作る場合は3万円、成功報酬として家賃1カ月分の5割を受け取っていた。創業当時は年間10件ほどの依頼しかなかったが、その後、7年間で500件まで増えた。
調べに対し、田沢容疑者は「アリバイ会社を使うことで、入居審査が通りやすくなると思った。荒田を通じて年間100件ほど偽造身分証などを用意してもらった」と供述している。
いくら売れっ子キャバ嬢といえども、高級物件となるとハードルは高く、大企業の社員を装うことで入居審査にも通りやすくなるという。ビジネスとして成り立つぐらいだから、それだけ不正入居がはびこっているのだろう。