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定員割れなのに入園保留!?息子の他害や多動で悩む母。「これくらい普通」の言葉に悩みは深まって…

LITALICO発達ナビ

定員割れなのに入園保留!?息子の他害や多動で悩む母。「これくらい普通」の言葉に悩みは深まって…

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

未就学期の様子

ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)のある息子のタク。今回はタクがまだ発達障害の診断を受ける前のお話です。

タクは在胎週数30週で産まれた早産児でした。体重はわずか1463g。とても心配しながら乳児期を育てました。正産期で産まれた子よりも、体重や発達は2、3ヶ月は遅れるものだと産院で教わりましたが、タクの成長具合に一喜一憂していました。

物心つく頃には、周りの子と比べてこだわりの強さがあると感じました。食事の順番やおもちゃの遊び方には独特のルールがあるので、私が手伝うと癇癪を起こす。一度泣き始めると落ち着くまでに時間がかかるので、私は怖々しながら関わっていました。

タクの行動で日に日にストレスと疲れをためていた私は、育児ノイローゼ寸前だったと思います。

気分転換に、毎日のように何ヶ所も児童センターを巡りました。ベビーカーに乗せて歩いている間は静かにしてくれるので、毎日何時間も歩き回っていました。

児童センターでは同じ年齢の子どもたちが集まって、さまざまな遊びをします。ところがタクはなかなか集団に入ることができません。先生の声がけにもなかなか反応せずに自分の世界に入っているようでした。この頃はブロックがお気に入りで、ずっと熱中して遊んでいました。結局、皆でやる遊びにはほとんど参加できずに過ごしたのを覚えています。

児童センターは午後になると小学生が集まり始めて一気に騒がしくなるので、未就学児の親子は昼食後しばらくすると帰宅するのが暗黙のルールでした。しかしタクは、遊びに夢中になっていると私の声がなかなか届かなくて、帰宅させるのにも一苦労でした。遊びに過集中モードになると、中断することがとても難しくて大騒ぎ。落ち着いて連れ出せるかどうかで、その日の1日の機嫌が決まってしまっていました。

他害してしまうタクに悩む日々

未就学児の頃は、タクと2人で公園や買い物に行くことが多かったです。しかし公園でもトラブルは頻発しました。

公園では色んな親子が遊んでいるけど、ほかの子が持ってきた砂場道具を勝手に使ったり、三輪車に乗ったり……とにかく一瞬たりとも目が離せないのです。

砂場でおもちゃの取り合いになった時には、突然見知らぬ子に頭から砂をかけてしまったことがありました。目が離せないどころか、常に手が届く範囲で気を張っていなければいけませんでした。相手の親子に申し訳ないのはもちろんですが、防ぎきれない自分自身を責めて傷ついていきました。

イヤイヤ期の子育ては大変だと聞いていたけど、うちの子は特別大変なんじゃないか?と思うようになった頃です。夕方になると周りの親子がどんどん帰宅する中、いつまでも「帰りたくない!!」と泣いて地面に転がるタク。私は精神的にもだんだんと疲れがたまっていきました。

忘れられない幼稚園の面接。定員割れなのに入園保留……!

タクの癇癪やこだわりに疲弊していた私は、3歳児健診で「うちの子って発達障害なんでしょうか?」と聞いてみました。結果は「考えすぎだよ」と言われてしまい……より一層子育てに対して自信が持てず悩む日々になってしまいました。

その後3歳になってタクは幼稚園に入ることになります。幼稚園は面接があり、園長室で行われました。園長室に入ると、その密閉されて堅苦しい雰囲気に圧倒されてしまい、タクは緊張感からかハイテンションになってしまいました。私と先生が話している最中に立ち歩き、挙句の果てにはソファの上で飛び跳ねる始末……!先生の前できつく怒る訳にも行かず、私は頭が真っ白になってしまいました。

結局その日は、入園保留になってしまいした。あの時の先生の驚いた顔と苦笑いは、何年経っても忘れられません。

「ヤンチャなほうがいい!」ポジティブな言葉をかけられても前向きになれなかった

幼稚園にはなんとか合格をいただき、通園できることになりました。しかしタクは入園後も落ち着きが無く過ごしていたようで、先生からは「タクくんは元気いっぱいで、マスコットキャラクターみたいだね」と言われてしまい……。

毎日毎日元気すぎるタクに振り回され精神的に疲れがたまり、ついに私は実母に相談しました。「タクは周りの子に比べてヤンチャすぎる気がする、多動なんじゃないかな?」と言うと「ヤンチャなほうが良いんだよ!多動?この位は普通だよ〜」と笑いながら言われました。

それは母なりのやさしさだったのだと思います。子育てや発達への不安に苛まれている私が、もっと楽になるようにポジティブに振る舞っていたのだと。

でも私は、違和感に向き合い、できればその理由を知り、タクとの関わりを変えられたらと願っていたのです。だからこそ、悩みが深まっていくようでした。

違和感に向き合うことが第一歩

周りに「考えすぎだよ、普通だよ」と言われつつも、タクの発達に不安と疑問を持ちながら子育てをしてきました。離婚しましたが、当時の夫には「子どもに振り回されている、もっと子育てに余裕を持ったほうがいいよ」と言われていました。

こんなにも子育てが大変で、タクをおとなしくさせることもできない……。私は自分の育児スキルが低いのだと思い、どんどん自分を責めて悩んでいきました。

この頃を振り返ると、私は限られた人にしか相談できていなかったなあと思います。相談する人によっては「障害なんて気にしないほうがポジティブだよ」という考えの人もいるものです。けれど、わが子を育てているのは、ほかでもない自分自身。違和感を感じて、子育てに困難を感じているのなら無理にふたをしないほうがいいのだと思います。

今は、SNSや地域の相談窓口も格段に増えています。「わが子の発達障害を疑うなんて、ネガティブだからやめたほうがいいのかな……」と思わずに、どんどん相談して悩みや不安は外に吐き出していく。それが、楽しい子育てへの第一歩だと思います。

(執筆/もっつん)

(監修:初川先生より)
タクくんが診断を受ける前、もっつんさんが何らか違和感を感じつつも日々子育てに奮闘されとても悩まれていた頃のエピソードをありがとうございます。周囲の同年齢のお子さんと様子が違ったり、ひとときも目を離せないほどの緊張感で日頃タクくんを見ていたり。心配と疲弊とでとても大変だったことと思います。そして周囲が良かれと思ってポジティブな返しをしてくれたり、せっかく相談した健診で「考えすぎ」と言われてしまったり(考えすぎだとしても、そう考えてしまう保護者の追い詰められ感、不安心配、そうしたところを一緒に考えてくださいよ……と同じ“支援職”の端くれとしては思います。支援職に「考えすぎ」と言われるのは、本当に考えすぎなだけだったとしても、なかなかの破壊力とダメージを与える発言ですよね……)。

子育てがうまくいっていないと感じられると、「自分が子育てが下手だからだ」と責めてしまうことはよくあります。そもそも子育てが初めから上手な方ばかりではなく、ましてや多かれ少なかれ発達的な特性の強さや偏りを持つお子さんだとしたらなおのこと難しい子育てを求められているのにそれを最初から上手にやるのは難しいことなのに、ご自身を責めてしまう場合が多いです。自分がうまく子育てできてないと感じる、どうにもうちの子、ほかの子たちとはちょっと違う気がするといったことがあれば、ぜひ相談していただければと思います。もっつんさんが書かれていたように、今はさまざまな窓口や機関があります。最初のところでうまく相談としてかみ合わなかったなどあっても、ほかのところの意見も聞いてみようといった心持ちでぜひお問合せいただければと思います。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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