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「駅がない」晴海を歩いて見えてきたこと。地下鉄開通は最短でも「2040年ごろ」それまではどうなるのか?

キャリコネニュース

写真:昼間たかし

本格的な街開きを目前に控える東京都中央区の晴海フラッグ。これは、東京オリンピックの選手村をもとにしたマンション主体の計画都市だ。今年1月からは、いよいよ入居が始まっている。この晴海フラッグは5632戸・計画人口1万2000人と、それだけで自治体がつくれるぐらいの人口規模だ。

この街は、都心に近接した大規模都市開発で、かねてより注目されてきた。平均価格7500万円、最高価格2億3000万円で売り出された分譲エリアには申込みが殺到し、倍率は最高で266倍にも達した。住むだけではなく、高値で転売できる投資物件ともみられているためだ。東京の都心付近にこれほどの規模の住宅街が誕生するタイミングはなかなかない。その瞬間を見届けたいと思い、2月のとある日、晴海を散策してみた。

2月時点で晴海を歩くと感じるのは、なんといっても「ガラン」とした雰囲気。道は広いし、立派な建物も揃っているのだが、そのわりに人の数が圧倒的に少ないのだ。のびのびと散策できて快適だが、これは今だけの感覚かもしれない。あちこちにあるコンビニは元気に営業している。引っ越しのトラックを数多く見かけるので、いち早く移り住んだ人たちのニーズに応えているのだろう。

まだ入居開始間もないのでエリア内は極めて静かだ

小中学校や商業施設などの整備も、着々と進んでいる。3月には、スーパーなども入居する商業施設「ららテラス HARUMI FLAG」がオープンした。新年度からは新設の晴海西小学校・中学校も開校する予定だ。これから、多くの人で賑わうであろう街は、今まさに準備を整え移住者を待ち構えているという印象だ。(取材・文:広中務)

懸念点は「駅がないこと」

少しずつコンビニにも利用者は見られるようになった

ところで「晴海」の歴史は意外と古い。隅田川の改良工事で出た土砂を利用して埋め立て地「月島四号地」が完成したのは1931年のこと。1937年には「晴海町」の地名が名付けられた。しかし、このエリアの開発はなかなか進まなかった。1933年には有楽町から東京市庁舎が晴海に移転する計画が持ち上がるも立ち消えに。1940年には「紀元二千六百年記念日本万国博覧会」の開催が決まっていたが戦争のため中止になった。戦後になりようやく埠頭の整備が本格化し1955年に晴海埠頭が開業。1959年にはかつてはコミックマーケットや東京モーターショーの会場だった「東京国際見本市会場(1997年に東京ビッグサイトの完成で閉業)」が建設された。こうした経緯から、広大な土地を利用できた晴海フラッグは、整然とした都市計画によって街が成立している。道幅も広く郊外を感じさせる住みやすいエリアであることは間違いない。かつての晴海イコール刑事ドラマで遺体が発見されるところ(リアルに事件はあった)の面影は完全に消えた。周辺の勝どき・晴海エリアは晴海埠頭などを利用する貨物船のための倉庫と労働者が暮らす住宅が連なるブルーカラーエリアであった。それらは、ほとんどが大規模なタワーマンションに変貌し「湾岸のタワマンに暮らしている」ことを誇る富裕層のほうが目立つ。

そうした住んでいることがステータスになっているエリアにも拘わらず、心配されているのが「交通の便」だ。橋を超えればすぐ銀座や豊洲などにたどり着くが、島内には鉄道駅が存在しない。晴海フラッグからだと、もっとも近い都営大江戸線・勝どき駅まで徒歩15分あまり。そのため主要な公共交通がバスとなってしまい、渋滞の多い東京では「不安定なのでは?」という懸念がぬぐいきれないわけだ。

むしろ、晴海フラッグが注目を集めているのは、価格が高騰している割に交通の問題があり、もしかすると失敗するのではないかネガティブな意見があるからである。

先に記したように最寄りは都営線「勝どき駅」で徒歩15分程度かかる。駅徒歩15分は都会基準だと「便利とはいえない」ため、新しい都営地下鉄の計画がなされている。東京駅から築地・勝どき・晴海を経由し有明まで向かう地下鉄新線がそれだ。有明から先で、JR東日本が計画している路線とも接続し、羽田空港にもアクセスできるという期待の路線である。しかし、その完成は「2040年ごろ」とされていて、まだ駅の位置も決まっていない。まだこんな状態だと、時期がずれ込むかもしれないし、場合によっては幻に終わる可能性すらある。

ここで触れておきたいのが「ゆりかもめを延伸すればいいのでは?」という疑問だ。Googleマップなどでゆりかもめ豊洲駅を見てもらえば一目瞭然だが、すでに線路そのものが、さらに延伸できる形になっている。ここから先、晴海や勝どきを経由して都心に向かえば晴海フラッグの便利なアクセス路線になるだろうが、その計画は進んでいない。これは中央区が「ゆりかもめの輸送力は中途半端」だとして、地下鉄を要求し続けてきた結果でもあるのだが……。

そうなると現時点で、主要な交通手段として期待されているのは、1時間あたり最大2000人を輸送できるバス高速輸送システム(BRT)となる。湾岸と新橋方面を繋ぐこのバスは、晴海フラッグ発も設定され主要な交通機関となる見込みだ。ただ、その行き先は新橋である。銀座・東京駅方面へは晴海埠頭を発着する都営バスを利用することになる。こちらは現在でも混雑している路線なので、快適な通勤とはいかないだろう。

赤い自転車は救世主となるか?

3月にオープンした「ららテラス HARUMI FLAG」

ただ、今回歩いてみて、意外な新発見があった。それは「都心でよく見る赤い自転車」、つまりドコモの展開するシェアサイクルが、とりわけ目立っていたことだ。

都心のシェアサイクルは、新型コロナウイルス感染拡大を契機に利用者が増え、新たな交通手段のひとつとして定着しつつある。その普及の問題点は、サイクルポート設置場所の確保であった。各自治体では担当者が空き地を探してはポートの設置を交渉し設置台数を増やす努力が続いている。

一方で、都市計画によってつくられた晴海フラッグでは、すでにあちこちにサイクルポートが設置されている。ほぼ建物一つにつき、サイクルポートがひとつの割合である。中心に設けられたバス停「晴海五丁目交通ターミナル」横にも、大規模なサイクルポートが設けられている。現在ポート数は23カ所。アプリで確認したところ、168台の自転車が利用可能となっていた。まだ自転車が停まっていないポートもあるので、利用可能な台数は今後も増えていくだろう。

晴海フラッグから自転車を利用した場合、環状2号線から築地大橋、晴海通りから勝鬨橋の二つのルートで都心に向かうことができる。また、都営線「勝どき駅」近くにもサイクルポートがあるため、地下鉄に乗り換えるのも容易だ。そして、自転車レーンの整備もある程度行われている。晴海フラッグ内は、道幅が広く設計されている。環状2号線も新しい道路のため、自転車の走行レーンが十分だ。晴海通りも路側帯には自転車レーンが表示されている。つまり、十分ではないにしても自転車に優しいエリアにはなっている。

これだけ整備されているのだから、通勤通学で自転車を利用しない手はない。晴海フラッグは、場合によっては自転車利用の先進地域になるかもしれない。実際の利用がどうなるのか、いまから楽しみだ。

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