ジュビロ磐田がルヴァン杯で得た確かな成長とここから
ジュビロ磐田はルヴァン杯のプレーオフステージで湘南ベルマーレと対戦。アウエーのファーストレグは3バックが3-5-2の相手にうまく噛み合わない中で、PKによる早い時間帯の失点やゲームキャプテンを務めた中村駿の負傷交代、怪我からの復帰戦だった上夷克典の決定期阻止による退場といったアクシデントが重なった中で、何とか2-0で試合を終えて、ホームのセカンドレグに希望を繋いだ。
ファーストレグから中3日で迎えたセカンドレグは4バック、直近のリーグ戦と同じスタメンで臨むと、サポーターの大声援を受けて、湘南を相手にポゼッション、高い位置でのボール奪取、チャンス数ともに上回る形で攻勢をかけた。その中でセンターバックの江﨑巧朗やリカルド・グラッサが相手のい背後を狙ったボールはGKの上福元直人にペナルティエリアの内外でカバーされたが、敵将の山口智監督も「ジュビロさんが素晴らしいオーガナイズ、プレーテンポの中、守備に回る時間が多い我慢が必要なゲームでした」と認めるように、前半から磐田の勢いが目立つゲームだった。
しかし、湘南も5バックの守備はタイトで、磐田がワイドに揺さぶりながら攻撃を仕掛けても、最後はなかなか突き崩せない。磐田は後半途中から角昂志郎に代えて投入したマテウス・ペイショットを佐藤凌我と縦に並べる形で、前線のターゲットとして使いながら、前進を強めていく。そして70分過ぎにはシステムを4-2-1-3から4-1-2-3に変更し、左ウイングからインサイドに移った倍井謙と途中出場の川合徳孟による2シャドーを形成。中盤のアンカーに上原力也が構える攻撃的な布陣に望みをかける。
インサイドから倍井がドリブルを仕掛けてペナルティエリア手前のFKを獲得すると、上原が鮮やかな右足シュートをゴール左角に決めて、トータルスコアをとした。スタジアムはゴール裏だけでなく、メインやバックのサポーターも巻き込んでチャントや手拍子が鳴り響く。上原も「追いつけるような雰囲気だった」と振り返るが、湘南も負傷退場者や足を攣る選手が出る疲労困憊の状態で、元磐田のDF鈴木雄斗などの粘り強い守備で磐田に180分トータルの同点ゴールを許さなかった。
90分の試合では1-0の勝利も、トータルスコアで無念のルヴァン敗退。フル出場で攻守に奮闘を見せた倍井も「こんなのは言いたくないですけど、今日に関しては勝っていた」と語りながら、悔しさを滲ませた。やはり悔やまれるのはファーストレグの戦いだ。ジョン・ハッチンソン監督はシステムの選択も含めて、戦略的なミスがあったことを認めるが、スタートでうまく噛み合わなかった時に、選手たちがピッチでいかに解決していくのかという部分でも、明確な課題が残った試合でもあった。
リーグ戦にあまり出ていなかったメンバーで、タフな環境で勝ち切ったアウエーのFC大阪戦から清水エスパルスとの静岡ダービー、延長戦で勝利を掴んだガンバ大阪戦、そして湘南との2試合と戦ってきて、磐田は着実に成長してきた。指揮官がアタッキングフットボールを掲げるチームはリーグ戦も1つ1つ成長の糧にしてきてはいるが、J1を相手にチャレンジしながら、チームの競争力と一体感を同時に高めながら、ここまで勝ち上がってきたことは間違いなくプラスだろう。
上原は「ルヴァン杯はJ1相手に、いろんなチームとやりましたけど、ほぼ全員出ましたし、そう言った意味ではチームとして力をつけてきたと思うので。しっかり新しいスタイルだったり、自分たちのスタイルを積み上げていく意味では本当に良いものが積み上がっていると思う」とルヴァンでの戦いを総括した。チームとして貴重な経験を積めたことはもちろん、プロ1年目の川合や加入2年目の川﨑一輝など、ルヴァンでの活躍がリーグ戦の出場チャンスにつながった選手たちもいる。
ここから中2日で天皇杯のSC相模原戦があり、さらにエコパスタジアムで行われるJ2第19節の愛媛FC戦と続くが、ハッチンソン監督が”スモールスカッド”と表現するチーム構成で、ユースの選手も組み込みながら、勝負の後半戦につなげていけるか。ルヴァン杯を含めたシーズン前半戦での成長を証明するのはここからの結果しかない。