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大滝詠一から驚きの電話!伊藤銀次が語る「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」誕生秘話

Re:minder

1982年03月21日 ナイアガラ・トライアングルのアルバム「ナイアガラ・トライアングル Vol.2」発売日

新しい世代のミュージシャン2人がメンバーの “ナイアガラ・トライアングル Vol.2”


大滝詠一さんからうれしい驚きの電話がかかってきたのは1981年初頭。TBSホールで開かれた林美雄さん主宰のラジオ番組『赤坂ライブ』の、1980年度に活躍したアーティストの年間表彰式から1週間ぐらい経ってからだったと思う。

その表彰式で、佐野元春君が年間最優秀男性新人賞に、山下久美子さんが最優秀女性新人賞に輝き、佐野君と僕は “ザ・ハートランド” とともに、そこで晴れがましい演奏をした。確か大滝さんはアルバム『A LONG VACATION』で特別賞に輝き、演奏はされなかったけれど会場に来ておられた。

「ひとつアイデアを思いついたんだけど、銀次にも意見を訊こうと思ってね」

その日かかってきた大滝さんからの電話はいつもとトーンが違っていた。挨拶もそこそこに大滝さんから出た言葉にちょっと驚き!!

「ひさしぶりにナイアガラ・トライアングルをやろうと思うんだけど」

すっかり勘違いした僕は思わず――

「え?また山下君と3人でですか?」

「ははは!いやいや、そうじゃなくて。新しい世代のミュージシャン2人がメンバーの “ナイアガラ・トライアングル Vol.2” だよ」

佐野元春がデビューした時から注目していた


そのメンバーはなんと佐野元春と杉真理。そして、そのメンバーによる “Vol.2” の発想が生まれたのは、なんと、冒頭にふれた赤坂ライブでの表彰式のときだというからまた驚いた。

佐野君の横でギターを弾きコーラスを歌う僕のステージ上の姿を客席で観ていた大滝さんは、

うん? “トライアングル Vol.1” のメンバーの銀次と佐野元春が一緒にバンドをやっている。これはなにかの因縁かもしれない。

―― それは強い印象として大滝さんの中で湧き上がったようだ。

大滝さんは佐野君がデビューした当時から注目していてくださってたようで、僕が関わっていたのもあって関心は深かったとは思うが、やはり目の前で2人が一緒に演奏するリアルなシーンにでくわしたときに、このアイデアにいきなりボッと火がついたようなのだ。

誰よりも何よりも “縁” を大切にする大滝詠一


大滝さん曰く、それから何人か候補を挙げて佐野君以外のもう1人のメンバーを検討した結果、決まったのが杉真理君。

僕はその時点では杉君とは面識がなかったけれど、松原みきさんのバックバンドの “カステラムーン” で、彼がみきさんのために書いた「あいつのブラウン・シューズ」という曲を何度も演奏していたので、その名前はよく覚えていた。その曲は、ちょっとビートルズっぽい、特にポール・マッカートニーっぽい、いい曲だったのでずっと気になっていたアーティストだった。

その杉君を、なぜ大滝さんが選んだのか尋ねてみると、

「佐野君に銀次がいるように、杉君には川原がいるからね」

川原とは、数多くのアーティストを手掛けた音楽プロデューサーの川原伸司さん。あの「イエローサブマリン音頭」の仕掛け人としてもナイアガラ・ファンにはお馴染み。また平井夏美のペンネームで、井上陽水さんの名曲「少年時代」を手掛けた作曲家としても知られる才人。大滝さんとは古くから知己の関係で、大滝さん曰く、なんと杉真理君の育ての親的存在だというのだ。

熱心なナイアガラーならよくご存知だと思うが、大滝さんは誰よりも何よりも “縁” を大切にするアーティスト。Vol.2のメンバー決定にも、大滝さん独特の因縁重視がしっかりと裏付けになっていたのだった。

佐野元春が檜舞台に立つ大きなチャンス


佐野君、杉君とメンバーをほぼ決めた大滝さんは、それから音楽的な相性を確認することも怠らなかった。

「それからずっと佐野、杉、僕のレコードを交互にかけてみてはどんな感じになるのか試してみたよ。悪くなかった。銀次はどう思う?このメンツでVol.2をやるってのは?」

いやはや、こんなにうれしいことはなかった。『Back To The Street』『Heart Beat』と2枚のアルバム作りを手伝ってきた僕としては、佐野元春の知名度がいまいち上がってこないことを考えると、『ロンバケ』を大ヒットさせた大滝さんと組むことで、間違いなく佐野君が檜舞台に立つことができる大チャンスだと感じた。

「やったーっ!!」

と言いながら、もうそこらじゅうを走り回りたい気分だったが、大滝さんの元を離れて、しっかりと一本立ちしたプロデューサー気分でいた僕は本心とは裏腹に――

「いいですね。いい話だと思いますよ」

とクールに答えたのでした。

Original Issue:2022/03/21 掲載記事をアップデート


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