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マイク・ポートノイ「“不可能”から“不可欠”になったんだ」ドリーム・シアター『PARASOMNIA』インタビュー前編

YOUNG

マイク・ポートノイ

ドリーム・シアターの最新作『PARASOMNIA』に関するトピックとして決して見逃すことができないのが、バンドの創始者の1人であり、2009年作品『BLACK CLOUDS & SILVER LININGS』以来の復帰となるマイク・ポートノイ(dr)の存在だ。YGでもそんな彼の最新の言葉を伝えるべくインタビューをオファーしたのだが、ヤング・ギター3月号のP.23に記した通り、締め切りまでの実現が叶わず…。しかし、本の完成から発売までの間に無事インタビューが成功し、ここにお披露目することが可能となったので、早速その模様を以下にお届けしよう。なお長尺のため、前・後編の2回に分けての掲載とさせていただくことをご了承願いたい。

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お膳立てをしたのはマイアングの奥さんだった

YG:まずはバンド結成40年おめでとうございます!

マイク・ポートノイ(以下MP):ありがとう!

YG:このタイミングであなたがバンドに在籍しているとは、5年前には想像できなかったことなのではないですか?

MP:そうだね、できなかったよ。5年前に「DTに戻りますか?」と君に訊かれていたら、俺はおそらく「あまり見込みはない」と言っていただろう。こんなことは予測していなかった……でもどうかな、長年の間に、ここに至るまでに一歩ずつ進んできたんだ。そうして関係がよみがえり、修復されていった。“不可能”から“不可欠”になったんだ。そうして今、こうしてここにいるわけさ!

YG:2010年にあなたがバンドを離れて以降も、ペトルーシらとはビジネス面や家族ぐるみの付き合いがあったそうですね。

MP:ジョンと俺は、個人レベルで付き合いが戻ったんだ。7〜8年前になるかな。それがきっかけになった。個人的な付き合いが戻ることが、俺達にとっては一番重要なことだった。その時点では、音楽のことは一切考えなかったよ。あれは、互いの家族に負うところが凄く大きかった。互いの妻や娘のおかげだったんだ。彼女達が「ディナーに行こうよ」とか「休日を一緒に過ごそうよ」とせがんだから…。それが口火を切ったんだ。そして、個人的な付き合いが戻ると、他のことは徐々に落ち着くべきところに落ち着いていった。

それから数年後、2020年にパンデミックのせいでロックダウンになると、俺達は家に閉じ込められてツアーができない状況に陥った。そんな時、彼から「ソロ・アルバムに参加してくれないか」と頼まれたんだ。そしてそれが凄く上手く行ったんで、リキッド・テンション・エクスペリメントを再結成させて、3枚目のアルバムを作ることにした。そういった一歩一歩のおかげでここに至ったというわけだ。

YG:そして2022年3月にあなたはDTのニューヨーク公演を表敬訪問しました。あの出来事で事態が大きく進展した感じだったのでしょうか?

MP:あれは、俺とジェイムズ・ラブリエの仲が戻るきっかけになったんだ。あの時点でジェイムズと俺は10年くらい話をしていなかったんで、俺があのライヴに行ったことで、彼と俺の仲が戻ったんだよ。でも、そうなることは分かっていた。2人が同じ部屋にいた瞬間、どんなネガティヴな気持ちもすぐに洗い流されることが俺には分かっていた。そして、まさしくそれが起こったんだ。俺達はすぐにハグして愛を感じた。旧友と再会できて、2人とも嬉しかった。そういうことだったんだ。

YG:ちなみに前出の表敬訪問はペトルーシがお膳立てした部分もあったと伺っていますが、実際にはどうだったのでしょう?

MP:いいや、実はジョン・マイアングの奥さんだったんだ。マイアングは文字通り、うちから1ブロック先に住んでいるんで、彼の奥さんとウチの妻は親友なんだよ。だから、彼の奥さんはしょっちゅうウチに来ているんだ。その彼女に、「今度、DTのライヴを観にニューヨークに行くんだけど、一緒に行かない?」って言われたんだよ。俺は考えた。そして、少なくとも(ジェイムズ以外の)他のメンバーとの関係は良かったから、今なら行ってもいいんじゃないかと思ったんだ。というわけで、お膳立てをしたのはマイアングの奥さんだった。

YG:その際に、当時バンドのドラマーを務めていたマイク・マンジーニと話をしたりしましたか?

MP:ああ、ちょっとしたよ。あの日は、全員と時間を過ごしたんだ。とてもとても良かった。

YG:36年目にして初めてDTのライヴを観たわけですが、どんな気分でしたか? 変な気がしましたか?

MP:変だったよ。でも、みんなのおかげですぐにアットホームな気分になれた。バンドも、大昔から知っているクルーも、会場にいたファンも、みんな俺がそこにいるのを見て喜んでくれた。最初は変な気がするんじゃないかと心配していたけど、かなりすぐに居心地が好くなったね。俺のいないバンドを観るのはシュールなことだったけど、でもとっても素敵な体験だったよ。

YG:マンジーニのプレイに関してはどのような感想を持ちましたか?

MP:物議を醸す質問をしてくるね(笑)。もちろん、彼は素晴らしいドラマーだ。それには疑いの余地がない。それに俺は、彼がDTに加入するずっと前から彼と友達だった。DTの他のどのメンバーよりも先に俺とすでに友達だったんだ。その関係は、’90年代にまで遡る。

YG:バンド復帰当初はあなたが他のメンバーにかなり気を遣っている部分もあったように感じましたが、どのような心構えで関係を再構築しようと考えていたのでしょう?

MP:何の行動も必要としなかった。すべてが物凄く自然かつ系統的に行なわれたんだ。まるで時間が過ぎていなかったかのようだったよ。ニュー・アルバムの制作のためにスタジオ入りした初日、『BLACK CLOUDS & SILVER LININGS』を作ってからまるで数ヵ月しか経っていなかったかのように感じられたんだ。実際には15年も経っていたのに、すぐにくつろげたし自然に思えたんだな。

YG:ペトルーシからは「今のバンドは君が去った時のバンドとは違う。物事の進め方が違う」とも言われたそうですが…。

MP:そう、それは至って明白だった。俺には分かっていたことだ。戻ってきたら、今のバンドが2010年に俺が辞めた時のバンドとは違うものになっていることは分かっていた。俺が辞めた時点では、俺がリーダーの役割を担っていて、バンドのありとあらゆる面を監修していた。それが、俺がバンドを辞めると、彼らはやり方を再編成しないといけなかった。それは音楽作りであったり、ビジネス上の決定であったりといったことだったんで、バンド全体の構造を変えないといけないのは当然のことだった。だから、戻ってきた時にそのことをとても尊重しないといけないことが、俺には分かっていたんだ。そして、実際にそうした。

バンドを辞めた時の俺は40代前半だったけど、今じゃ50代後半だ。長い時間が過ぎたんだから、今のバンドの関係性はかなり変わっている。違う人間が違う役割を果たしているんだ。俺が監修していた役割の大半はバンド内で分担されていたから、俺が戻ってきた時は、どの役割を俺がまた引き継いで、どの役割から身を引いたらいいか、考えないといけなかった。だから、ちょっとした学習プロセスだったよ。昔と違って今、物事がどんな風に委任されているかを学ばないといけなかった。でも、すべて良しだ。全員がとてもオープンな気持ちになっているし、大人だから、そういう決断にちゃんと対処できているよ。

YG:バンド復帰のアナウンスからすでに1年以上が経過し、今では現在の関係性にすっかり慣れましたか?

MP:そうだね。アルバムはこれから出るわけだから、世間は今やっとリユニオンを目の当たりにするわけだ。ツアーも始まったばかりだしね。でも俺達にとっては、リユニオンはもう1年以上も前から始まっていたんだ。この1年間は毎日のように会って、今回のニュー・アルバムを作っていたんだから。俺達にとっては、新しいことでは全くないわけだ!(笑)

(インタビュー:平井 毅 Takeshi hirai Pic: Mark Maryanovich)

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