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通訳するヤングケアラーの実態と通訳派遣

TBSラジオ

きょうは、「ヤングケアラー」について。

家族の介護や世話に追われている子ども、いわゆるヤングケアラー。家の中の話なので見えづらく、なかなか表面化されてきませんでした。

家族の通訳をする子ども

そうした中、長野県では、さらに特殊な状況に置かれている子どもたちに対して、去年から新たに支援を始めたそうです。長野県社会福祉協会の、平塚 直也さんに聞きました。

社会福祉法人長野県社会福祉協会・総務企画部・主任 平塚直也さん

県の方でですね、「ヤングケアラーの実態調査」とうものをしたときに、だいたい1000人以上の方が「私はヤングケアラーです」ということをお答えいただいていると。

そうした方々の中で、大体100人ぐらいの方が、「親の通訳をしています」というふうにお答えになられた。

いわゆる親御さんは外国籍の方で、子どもさんは日本の教育を受けているので日本語が話せるという中で、例えば病院に行ったりとか、役場に手続きをしなければいけないっていったときに、学校を休んで通訳をせざるを得ない場面っていうのが多々あったと。

そうした負担を軽減するために、通訳者を派遣するという事業を行っております。

親に付き添って通訳をしている子どもが多いことが、アンケートで明らかになりました。

例えば、長野県箕輪町(みのわまち)は、ブラジルなどから仕事で移り住んでくる人が多く、住民の「30人に1人」が外国人と言われています。そうすると、職場もブラジル人同士でポルトガル語で、家庭内もポルトガル語。結果的に、日本育ちの子どもが頼られてしまう構造です。

病院や行政機関は平日しか開いていない為、学校を休んで手伝う子どもも。そうした家庭に専門の通訳者を派遣しようという取り組みで、1回5時間まで無料で利用できます(事前予約制)。

正確に伝わる

対象は、「日本語を解さない家族の世話をしている小学生~大学生(専門学校等含む)」ですが、中でも小学校高学年~高校3年生が、多く利用しているようです。

でも、そもそも小学生が通訳できるのか?この事業にポルトガル語の通訳者として協力している、川西 ケンジさんに聞いてみました。

株式会社 PUTZ Network(プツ・ネットワーク)・代表取締役社長訳者 川西 ケンジさん

「あれ、そんな子供があんまり日本語わからないんじゃない?」ってなるんですけども、重要なのは、子供がどれだけ日本語話せるかじゃなくて、親よりどれだけ話せるかなんですよね。

親より話せてしまえば、親からすると「通訳者」にはなる。

親も当然子どもには、すごく期待してるわけじゃない。ある程度訳してくれれば、大人として何とかしようっていう前提で考えてはいるんですけれども、それ自体が「罠」なんですよね。

正直通じなかったらまだいいんです。通じなかったら進まないだけなので。問題なのは、間違った形で通じてしまったときなんです。どちらも言いたいことは言えた。言われたことは理解した…のつもりでいて、場合によっては治らないから患者さんはお医者さんを諦めてしまったり、逆にお医者さんもこの患者は面倒くさいね、言うことをちゃんと聞かないねと。だから、患者さんのことを諦めてしまったり。

そういったことをたくさん、何度か感じました。

<ブラジル出身の通訳者 川西ケンジさん>

医者とうまくコミュニケーションがとれず、治療が遅れたり、相性が合わないと思って、いろんな病院を転々としていた人もいたそうです。

さらに、病院だけではなく「確定申告」や「携帯電話の契約」は手続きが複雑。また、子どもにとって精神的な負担が大きい「離婚調停」などの依頼も、実際にあるそうです。

この取り組みでは、川西さんの他にも、およそ100人の通訳者が登録。ポルトガル語、英語、中国語やタガログ語など、18の言語に対応した通訳者が、これまでに17世帯にのべ70回ほど派遣され、想定を大きく上回る数だそうです。

<川西さん「自動翻訳機能は限界がある」>

進路指導で可能性を狭めない

こうした通訳の支援制度、もっと広がるといいなと思ったんですが、このサービス、子どもたちの通う学校でも重宝されているようです。

社会福祉法人長野県社会福祉協会・総務企画部・主任 平塚直也さん

「進路指導」でこの制度を使いたいというふうなお話をお聞きすることがある。

当然、進路指導なので子どもさんも同席をしながらなんですが、例えば親の経済状況が高所得の方ではなかった場合に、子どもは「進学したい」と言っている。でも親御さんとしては、「お金があまりないので進学させたくない」って言ったときに、それを子どもを介して「『進学させたくない』って言ってます」っていう通訳をしなきゃいけなくなるんですね、子どもとすると。

そうすると、「いや、お金がないんで働きます」ということで、進路指導なのに、自分の進路が狭まってしまうっていうことがあると。

もし経済的な課題がある場合があるって話であれば、例えばいろんな奨学金がありますよとか、いろんな支援の方策がありますよ、とお話もできるんですけれども、意見がその場で変わってしまう。

やっぱりその第三者が通訳をするっていうことの意義はそこにあるのかなと。

「進路指導」の三者面談で活用。通訳のお陰で子どもが本音をちゃんと口にできるようになり、子どもの可能性が広がります。家族を含めたその世帯全体をどう支援をしていくか。支援を継続できる仕組みが必要です。

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