“推し” は “旅行” の強い動機に! BEYOOOOONDSのマンホールを聖地・三島市に贈呈したJR東海は “推し旅” で様々なファンを後押し
JR東海は、ハロー!プロジェクト所属アイドルグループ「BEYOOOOONDS」(ビヨーンズ)とのコラボ企画として、静岡県の三島市にオリジナルマンホールを贈呈しました。この三島市で行われた贈呈式のレポートと共に、「推し活」と「旅行」との関係に関しても考察してみましょう。
イチオシを応援する「推し活」のための移動・旅行
ここ2・3年、注目を集めているのが「推し活」という言葉。アーティストやアイドル・アニメやその中のキャラクターなど、自分のイチオシいわゆる「推し」を、様々な形で応援する活動のことで、「推し」の出ているライブやイベントなどを観に行ったり、グッズを買ったり、手作りグッズを作ったりという活動などが行われています。
アーティストやアイドルのライブ・イベントに長距離の移動や宿泊を伴い参加をしたり、映画やアニメなどといった物語の舞台や”推し”に関連する地域を巡る”聖地巡礼”といわれるような旅を伴う行動は、「推し旅行」「推し旅」などと呼ばれることもあります。
JR東海は、コロナ禍で旅行需要が減っていた2021年10月、新幹線の需要を喚起することなどを目的に、自分の推しに会いに行く「推し旅アップデイト」という名称で、様々な企業や団体などとタイアップをした旅行プランの企画・実施を行ってきました。例えば、日本酒推しの方に向けて日本酒を飲んだり学び・酒づくりまでに携われる体験旅や、象推しの方に向けて象を見に行って「象主」となって象の足裏のお手入れなど様々な体験ができる旅、真夜中に行く京都駅のバックヤードツアー、ライトノベルの発売に合わせて聖地で「負けヒロイン総選挙」の実施など、様々なニッチな”推し”を対象としたツアーが多く行われました。また「推し旅」を応援するために、アニメやアーティスト・VTuberなどとのコラボ企画として、東海道新幹線車内で”推し”のスマートフォン用の壁紙がもらえたり、新幹線車内限定の音楽・音声ドラマが配信されたりという多くの取り組みが、現在も行われています。
今回の「BEYOOOOONDS」(ビヨーンズ)とのコラボ企画も、そんなJR東海の「推し旅」向けのコンテンツから始まったものでした。
BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)とJR東海との縁
BEYOOOOONDS (ビヨーンズ)はハロー!プロジェクトに所属する10人組女性アイドルグループで、2019年8月にメジャーデビュー。2024年5月発売の5thシングル「灰toダイヤモンド/Go City Go/フックの法則」の楽曲「Go City GO」には、東海道新幹線17駅の駅名が入っているという事がきっかけになり、JR東海の協力でミュージックビデオの撮影が新幹線内などで行われました。
この縁から、2024年5月29日~9月30日まで、「東海道新幹線17駅Go City GOキャンペーン」が展開されました。JR東海の「推し活」コンテンツとして、スマホを利用して新幹線内だけで聞くことができるトーク番組の配信や、デジタルスタンプラリー、オリジナルポスターのプレゼントキャンペーンなどが実施されました。
この第1弾が好調だったことから、第2弾のキャンペーンとして選ばれたのが、東海道新幹線の駅もある三島市を絡めての「聖地・三島 Go City Goキャンペーン」でした。
BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)の聖地・三島市
2019年にBEYOOOOONDSがメジャーデビューする直前2018年に、グループ名のビヨーンズと、”三島市にあるビヨーンと日本一長いつり橋“とを掛け「三島スカイウォーク」でデビュー取材会が開催されたという縁があったそうで、聖地である三島市を絡めてのキャンペーンが実施されています。(2025年3月2日まで実施予定)
三島駅開業が90周年を迎えることから、新幹線内限定で聞くことが出来るオリジナルボイスコンテンツの再生回数9,000回を目指すということで開始されたこのキャンペーンでしたが、11月28日に目標だった9,000回再生を達成しました。今回は、その記念としてJR東海がBEYOOOOONDS×三島市のオリジナルデザインマンホールを制作し、それをビヨーンズの聖地でもある三島市に寄贈したという事になります。
三島市内で行われたオリジナルマンホールの贈呈式
2024年12月12日、三島市内で行われた「JR東海×三島市MANHOOOOOLE 贈呈式 with BEYOOOOONDS」には、JR東海からは営業本部長の榊原篤さん、そして三島市から豊岡武士市長が、BEYOOOOONDSメンバーからは、島倉りかさん、高瀬くるみさん、平井美葉さんの3名が参加しました。
JR東海の榊原さんは「三島市にはJR東海の研修センターがあるため新入社員は三島から社会人をスタートし、ビヨーンズもデビュー会見を三島で行いました。そんな両者にとっての始まりの地にマンホールを設置できることに、縁を感じています」と話し、豊岡市長は「三島駅開業90周年、新幹線開業60周年という記念すべき時期に、素敵なマンホールを寄贈頂きありがとうございました。最近はマンホールに関心が高まっており、市内にはスカイウォークのマンホールなども設置されています。たくさんの方に町を巡っていただき、ビヨーンズさんの聖地としても多くの方が来て下さるとありがたいと思います。」とコメントしました。
贈呈式では、BEYOOOOONDSメンバー3名もコメントをしました。
平井美緒さん「ビヨーンズにとってゆかりのある三島市に、『Go City GO』という楽曲からのJR東海さんとの縁で、素敵なマンホールを設置いただける事になり、感謝でいっぱいです。マンホール好きの方も、ぜひ足を運んでみてください。」
高瀬くるみさん「ビヨーンズの地元は三島市ですと言うことも多いので、三島市の皆さんが『三島にはビヨーンズのマンホールがあるんだよ』と自慢したくなるようなグループになれるよう頑張りたいです。三島市には、老若男女問わず楽しめるところがいっぱいありますので、一度来ていただくと、皆さん大好きな場所になると思います。」
島倉りかさん「ファンの方にもたくさん三島市に観光に来ていただきたいですし、私もMV撮影時にも、設置されていたマンホールと一緒に撮影をした事もあるので、そういったところも含めて巡って頂きたいです。このマンホールには、三島の魅力がいっぱい詰まっています。」
この贈呈式終了後には、実際のマンホール設置作業が行われました。
場所は、三島駅からほど近い結婚式場「ザ・ラグシエナ」(静岡県三島市泉町9-34)の前の歩道の前になります。
観光資源としてのデザインマンホール
先ほどの式の中で、三島市長やビヨーンズのメンバーがコメントをしていたのが、「マンホール」に関する注目度が高まっているという事でした。元々は「暗い、汚い、臭い」というイメージだった下水道のマンホールですが、全国の各自治体や水道局などが、凝ったデザインの美しいマンホール、いわゆる”デザインマンホール”を設置したことで、そのイメージが一変し、マンホールを旅行を兼ねて巡る人々も現れています。
地元の資源を題材にしたものはもちろんですが、アニメやゲームのキャラクターなどを題材としたマンホールも制作され、ポケットモンスターや機動戦士ガンダム等のマンホールは、関連する企業からの発信で全国各地に設置されており、その他の全国各地においては、設置する地域にゆかりのある原作者や作品に関連するものを題材としたマンホールが設置されています。
三島市では、日本一長い歩行者専用つり橋「三島スカイウォーク」のものが市街地の三嶋大社近くの数カ所に、「三島桜」がモチーフのデザインのものが三島市生涯学習センターに、そして三島市在住の絵本作家「宮西達也さん」と「えがしらみちこさん」の書き下ろしデザインのものが三嶋大社近くに、えがしらみちこさんの「水の都三島で子育て」の蓋が三島市中央町等、その他にも複数のものが設置されています。
このようなデザインマンホールは、推しているファンにとっては、一度は行って撮影をしてみたいというものになっているようですし、近くに行ったなら見ようかという人も一定数は居ると思われます。最近は、日本各地にこのような美しいマンホールがあるということは、世界中にも伝わり、日本国内外を問わず、多くの人がその場所を訪れるという姿も珍しくはありません。
“推し” が旅をするための原動力に!
このマンホールは、マンホール事態を見学するための目的とする人もいれば、描かれているゲームやアニメなどのキャラクターを目的とする人などが、見学に訪れ、一緒に写真を撮るなどの行動を起こす原動力になっているといえるでしょう。
数をたくさん揃えるJR東海の「推し旅」キャンペーン
先ほども紹介をしたように、JR東海が実施している「推し旅」では、BEYOOOOONDSとのコラボ以外にも、様々な「推し」の対象となるような物・人・作品などと提携してのコンテンツの提供を行っています。現在実施されているもでも、例えばゲームの「アイドルマスターシリーズ」や「ようこそ!ポケモンカフェ ~まぜまぜパズル~」、スポーツ漫画「レッドブルー」、アニメ映画「REDLINE ALL THE FINAL」、漫画やアニメなど多メディア展開の「ラブライブ!サンシャイン」、5人組男性アーティスト「Da-iCE」、女性アイドルグループ「日向坂46」、「愛知県の博物館 明治村とアニメ・文豪ストレイドッグスとのコラボ企画」、お城の魅力を伝える音楽コンテンツなど、様々な切り口のファンが集まるようなものを、数多く実施しているのが分かります。音楽ライブなど、多くのファンに移動をしてもらって実施をするイベントは、元々、旅につながることが多いのですが、移動の選択肢として新幹線を使ってみようという理由には、なっているように感じます。(詳しくは、JR東海の「推し旅」ページをご覧ください。)
少し前までは意識されていなかった「推し」という概念ですが、アーティストやアイドル、アニメなどにとどまらず、様々なジャンルの趣味にまで広がっているようです。
少し前までは旅行目的としては、多くの人が訪れる観光地だったり大規模イベントなどがメインでしたが、「推し」ジャンルの多様化やSNSでの情報発信の活発化により、少し様子が変わってきているようでもあります。
三島市などの自治体などが主行っているデザインマンホールなどのPR活動や、何かの聖地としての魅力を伝えてく取り組み、JR東海が行っている多ジャンルのファンに向けての「推し旅」キャンペーンなど、それぞれを推す人の数は少人数であっても、多くのジャンルの様々なものを対象にして継続的に情報発信を続けていく事は、「推し」を持つ人々が「旅行」に出かけるという行動を起こすきっかけになっているようです。
鎌田啓吾(鉄道チャンネル)