「動機はデリヘルですか」生活保護受給者の53歳男〝靴を5足窃盗〟GW中の裁判
ゴールデンウイークの最中の平日は公判はおのずと少なくなる。この日も張り出しの紙はわずか4枚。このうち、札幌簡易裁判所で行われる公判を傍聴してみることにした。
デリヘルに行きたくて…スポーツショップで靴を5セット万引きの生活保護受給者
法廷に現れた男は年齢53歳。顔の半分は白髪交じりの髭に覆われているため、年齢よりも高齢に見える。くすんだ緑色のジャージのトップスに、下はよれよれのジーンズ。ベルトがないため、歩くたびにジーンズがずり落ちるため、トランクスが丸出しになっていた。
男が問われている罪は「窃盗」
・札幌市内の大型スポーツ店でスポーツシューズ5点をリュックに入れて外に出ようとする
・防犯ゲートのセンサーにひっかかり、店員がかけつける
・4点だけ返して帰ろうとしたが、返してもらえるわけもなく、そのまま逮捕され、リュックに残っていた1点もみつかる
男は生活保護受給者。犯行が行われた冬期間は月12万円が支給されている。保護費の使い方は褒められたものではなかったようだ。
被告人質問 デリヘル・タバコ…生活費の範囲を超えた支出の数々
弁護士:動機はデリバリーヘルスに行くための金が欲しかったということで間違いありませんか?
被告:(うん)
弁護士:マイクで答えてくださいね。
被告:はい
弁護士:デリバリーヘルスというのはいくらくらいかかるのですか?
被告:1万1000円とか
弁護士:このとき月2回くらい使っていたので、そうするとひと月で2万2000えんくらい使うことになりますね。生活保護で月12万円程度もらっていたんですけど、家賃であるとか食費であるとかそういったものを支払ったうえでデリバリーヘルスに行く余裕がある生活なんですか?
被告:余裕はありません
弁護士:あなたが吸っていたタバコは1箱450円程度。ちょっと細かいところも含めて、あなたの生活に必要なお金をきちんと把握できていましたか?
被告:できていない
弁護士:お金が足りない時はどうしていましたか?
被告:靴を盗んでお金にしていました。
弁護士:やってはいけないことだということは知っていましたか?
被告:はい
弁護士:どうすれば盗まずに済みましたか?
被告:少しでも働いたら…
弁護士:いま働くことはできますか?
被告:無理かもしれない
「デリヘルを我慢できますか?」の問いに対し被告は…
検察官:今回スポーツ●●店で8万8000円相当の靴5足を窃盗。店を出ようとして防犯ゲートが反応して店員さんが来たんだけど、男性か女性か覚えていますか?
被告:女性でした
検察官:そのとき5足全部返しましたか?
被告:4足だけ返して、1足だけ持っていこうとして逃げた
検察官:どこに売ろうとしていた?
被告:●●●(大手リサイクルチェーン)
検察官:どうして靴だったんですか
被告:盗みやすかった
検察官:靴以外のものを万引きしたことは?
被告:ないです
検察官:靴はなんかいくらい盗みましたか?
被告:10回くらい
検察官:お店の人にみつかったときはどう思いましたか?
被告:ビックリした
検察官:留置場や拘置所の居心地はどうですか?
被告:居心地はよくない
検察官:生活保護の範囲内で生活していかなきゃいけないことはわかりますか?
被告:はい
検察官:タバコとかデリヘルとか我慢する生活はできますか?
被告:します
「趣味が多いですね、ジャグラーって何ですか?」裁判官の質問に対し…
裁判官:窃盗が悪いことだということはわかっていますか?
被告:(うんとうなづく)
裁判官:あなたは趣味が多いんですね。趣味や特技のところに「ジャグラー」ってありますが、「ジャグラー」ってなんですか?
被告:パチスロです
裁判官:………はい、それでは終わりましたので元の席に戻ってください
…………………
被告人質問が終わり、論告求刑に。
検察官は、被告がバッグを複数用意し、前日に被害店舗の開店時間を調べるなど、計画的な犯行だったとして、懲役1年6か月を求刑。
弁護側は被告が捜査に協力しているとして、罰金刑を求めた。
判決はおよそ3週間後に言い渡される。