【輝く!昭和平成カルチャー】マニア垂涎!斉藤由貴「卒業」のテレホンカードは30万円
リレー連載【輝く!昭和平成カルチャー】vol.4:テレホンカード
計8種からスタートしたテレホンカード
1982年12月23日に当時の電電公社(日本電信電話公社、現:NTT)から発売開始された公衆電話機専用のプリペイドカード『テレホンカード』は、その目新しさと、小銭に煩わされずに済む便利さからたちまち普及する。略して “テレカ” 。ちなみに世界では1976年にイタリアで発行されたものが最初だったらしい。
日本におけるテレホンカードの第1回発売分は、50度、100度、300度、500度の通話度数のみが表記されたシンプルなデザインのものと、岡本太郎によるデザイン文字が表記されたものでそれぞれの度数、計8種からスタートした。このいわゆる全国版は、翌1983年にはペンギンのデザインと、原田治、矢吹申彦、灘本唯人、山城隆一によるイラストシリーズ、1984年には浮世絵やつくば万博のデザインなどが発行されている。ほかにも郷土色豊かな地方版もあり、1985年4月のNTT発足に伴いさらに数を増やしてゆくのだが、俄然面白くなるのは、個人や企業が自由にデザイン出来る “フリーデザインカード” の登場からである。
画像提供:鈴木啓之
専門雑誌「テレコレ」創刊
第1号となったのは、1984年8月に高島屋が出したピエール・カルダンの販促品。顧客や関係者に配られる非売品がほとんどであったため、実用性よりも収集の対象として注目される。コレクショングッズとして切手商や専門店で売買され、評価額が記された年度毎のカタログや『テレコレ』をはじめとする専門雑誌も創刊されてコレクションの1ジャンルとして認識されるようになったのだった。
まだコレクターの数も少なかった初期のものは高値で取引された。フリーカードでは、コミック、アニメやキャラクターもの、スポーツ、自動車、アダルトなど様々なトピックに分類される中、最も活況を呈したのはやはり女性タレントが刷られた華やかな図柄のカードで、殊に旬の人気アイドルにプレミア品が数多く見られた。
画像提供:鈴木啓之
斉藤由貴のデビュー曲「卒業」のカードは30万円!
一時期は30万円もの値がついて話題になった、斉藤由貴のデビュー曲「卒業」のカードは有名な1枚。NTT発足の直前で、電電公社時代の品である。手元にある1987年版のカタログを見ても評価額が18万と、この時点で8700種出されていたというフリーカードの中でも突出したプレミア価格が付いている。ほかにも、若林志穂「テレフォン・キッス」が4万6千円、石野陽子「テディボーイ・ブルース」が4万2千円と、ヒットの有無に関係なく高評価が続出しているのが面白い。企業のPRものでも、東レの松本伊代が5万6千円、カルピスソーダの伊藤麻衣子が4万2千円、月星化成の岡田有希子が4万7千円などアイドルものは軒並み高かったのだ。
世はバブル前夜、音楽の世界はアナログからデジタルへと移行しつつあった。全盛だったアイドルたちは様々な企業と広告の契約をしていたから、テレホンカードが作られる機会も実に頻繁だった。それはもちろん男性タレントも同じだが、コレクターには圧倒的に男性が多かったことから、女性タレントものに人気が集中したのは当然のこと。レアなテレカを持っていれば、周りに確実に自慢出来る平和な時代だった。
その後、携帯電話の普及で存在理由が薄れ、コレクション品としてのブームもすっかり去ってしまったテレカだが、誰しも家の引出しなどを探せば1枚や2枚は出てくるはず。特に当時マスコミ関連の業界にいらした方々はテレカの貯蔵量も多いのではなかろうか。今さらの利殖は難しいにしても、話のタネに今一度手持ちのテレカを発掘してみては? 使用済みのいらないカードも捨てないでください。今でもしぶとくテレカをファイルしているアーカイヴァーが引き取らせていただきます。
画像提供:鈴木啓之