廃材にいのちを吹き込むアーティスト「加治聖哉」がつくる動物の躍動感。
家を建てるときに余った木材や、役目を終えた看板、コルクなどのいわゆる「廃材」を利用して、原寸大サイズの動物をつくり出すアーティストがいます。長岡市栃尾で創作活動をする加治聖哉さんは、廃棄されてしまう木材を使い、これまでいくつもの作品をつくり上げ、「大地の芸術祭2022」でもその作品が展示されました。今回は栃尾にあるアトリエにお邪魔し、作品づくりに関することなど加治さんの想いに触れてきました。
加治 聖哉 Seiya Kaji
1996年村上市出身。長岡造形大学美術工芸学科に入学後、廃材を使った作品づくりをはじめ、作品を地域へ提供するなど、まちおこしの活動に携わる。大学卒業後はアートスタジオ「カイカイキキ」に就職。2019年に栃尾に移住し、「大地の芸術祭2022」にも参加した。2023年より自身のアトリエ「sokoso-ko(ソコソーコ)」をオープンし、アーティストとして活躍中。趣味はスノーボード。
廃材そのものの味を活かした作品をつくる。
――動物たちの迫力がすごいですね!
加治さん:かっこいいでしょう(笑)。全部等身大サイズでつくっています。馬や狼は人が乗っても大丈夫なんですよ。
――へえ、丈夫なつくりなんですね。作品に使っているものはすべて廃材ですか?
加治さん:つなぎのビスやグルーガン以外はほぼ廃材ですね。ポージングの関係や安全面を考慮して鉄筋を入れているものも一部ありますが、骨格から再生しているので、木材だけでもしっかり強度のある作品がつくれるんです。
――なるほど。加治さんはどんな動物をつくることが多いですか?
加治さん:動物なら何でもつくります。大きいものだと20メートルくらいのクジラをつくったこともありますし、一番小さいものだと蚊をつくりました。8ミリくらいですね。
――サイズの幅が広いですね。大きいものはつくるのにどのくらい時間がかかるのでしょうか?
加治さん:比較的大きいサイズの狼や麒麟で3~4週間程度です。飽き性なのでなるべく2週間とかで仕上げたいとは思っています。
――このジンベエザメは黒っぽいですが、塗装されているんですか?
加治さん:基本的に塗装はしません。このジンベエザメも材料の元の色味を活かして制作しました。たとえば廃材を提供してくださった方たちが、作品を見たときに「これ、うちの廃材じゃん」って言ってくれるのが嬉しいんですよね。そうじゃないと廃材を使っている意味が薄れてしまうような気がして。ものによってはバーナーを使って焦がすことで色味を出すことはありますが、どうしても色を塗ってほしいという要望がない限りは素材をそのまま使っています。
廃材アートのきっかけは「もったいない」から。
――廃材アートをはじめたきっかけについて教えてください。
加治さん:大学在学中、自分はジュエリーの専攻でしたが、建築学科では椅子をつくる課題がありました。木材を切ったあとの余った端材がコンテナの中にいれられるのを見て、「もったいないな」と思いました。これで何かできるんじゃないかと考えて、動物のアート作品をつくってみようと思ったんです。
――木材の加工が専門ではない中で、はじめられたのですね。ちなみに、最初は何の動物をつくられたのでしょうか?
加治さん:シカです。建築学科の友人と一緒につくりました。1作目なのでもう作品自体は残っていないんですが、12月21日に発売した作品集に載っています。
――加治さんにとって、廃材を使う魅力はなんですか?
加治さん:一から切り出すより加工が楽なところです。これが合うかなって考える時間も楽しいですし。何より、一度はいらないものとして捨てられた材料が役目を持ち、動物の一部となって生き返ることにロマンを感じます。だから、かっこいい動物たちをつくりたいと思いますし、躍動感や動物らしい骨格、力強さが表現できるように心がけています。
――まさに、作品に現れていますね。今にも動き出しそうに見えます。
加治さん:廃材のひとつひとつにストーリーがあります。何の変哲もない1枚の廃材は、誰かにとってこだわり抜いてつくった自宅の一部だったものかもしれません。そういうのを引き継いでつくるものなので、気持ちが入りますよね。
――つくっていて一番楽しいと感じるのはどんなときですか?
加治さん:オオカミで言えば、毛を生やすときですね。最初は骨組みしてそこに板を張るので、いわゆる夏毛みたいな状態なんです。そこから毛流れをつくっていくんですが、どうしたらかっこいいかなとか動きが出るかなと考えながらつくるとだんだん息づかいが聴こえてくるというか。デッサンでいうところの、書き込みするときが楽しいって感覚に近いです。あとは手に取った廃材が、そのまま置きたい場所にシンデレラフィットする瞬間もテンションが上がりますね。
人情味のある土地柄に魅力を感じ、栃尾を活動拠点に。
――加治さんは2019年に地域おこし協力隊として栃尾に移住したと伺いました。栃尾にはどのようなご縁で?
加治さん:長岡造形大学の学生時代から栃尾の地域にお世話になっていたんです。おそらく100回以上はイベントスタッフやボランティア活動に参加しました。そのときお世話になった方に栃尾の人が多かったというのが最初の理由です。大学を卒業したあとも「協力隊っていう仕事があるよ」と知り合いが教えてくれて、栃尾の地域に呼んでもらったんです。
――加治さんの思う、栃尾の良さを教えてください。
加治さん:まずは食ですかね。雪解け水が美味しくて、米も酒もなんでも美味しいから食に困りません。僕、栃尾に来てから20キロくらい太ったんですよ(笑)。あと冬は寒くて不便ですが、人がいつでも温かいです。だって、何かよく分からない若造が急にきて「この地域を盛り上げますよ!」って言ってもよそ者扱いせず、分け隔てなく接して応援してくれました。すごく素敵だと思います。
――今はどのようなかたちで地域の方と交流されているのでしょうか?
加治さん:イベントで作品の展示をしていただいたり、毎年コミュニティーセンターでワークショップを行ったりしています。保育園にも出張して、次の年の干支の動物をつくりました。
――へえ、子どもたちが楽しめるものづくり体験も行っているんですね。
加治さん:どういうふうに栃尾に関われるかは常に考えています。学生の頃から本当によくしていただいたので、皆さんの役に立ちたいという気持ちが強いです。いちばんは、僕自身が大きくなって名前を知ってもらうこと。そうすれば、この地域に人を呼べるだろうと思っています。メディアに取り上げてもらうときは、絶対「栃尾」という言葉を入れてくれってお願いしています。ちっちゃい恩返しですけど、少しでも僕自身の活動が栃尾を知るきっかけになればいいなと思います。
――加治さんの作品はどこで見ることができますか?
加治さん:僕の作品をまとめて見られる場所は今のところないんです。このアトリエに誰でも来られるようにしたいんですが、まだその体制が整ってなくて。なので、作品を見たいとか興味を持ってくださった方には、個別に連絡をとって対応しています。また、直近ではゴールデンウィーク中にオープンアトリエといって、アトリエを開放して自由に作品を見てもらうイベントの開催を予定しています。当日予約も可能なので、この機会にいろんな方に作品を見てもらいたいですね。
sokoso-ko
新潟県長岡市天下島293-12