話題沸騰『サブスタンス』ほか“観る者のアイデンティティを問う”傑作5選!A24『顔を捨てた男』公開記念
観る者の“アイデンティティを問う”傑作5選!
A24製作×セバスチャン・スタン主演で話題の映画『顔を捨てた男』が7月11日(金)より全国公開となる。
これまで独創的な作品で映画史を塗り替えてきたスタジオA24が、気鋭アーロン・シンバーグ監督の才能に惚れ込み、初のタッグを組んだ本作。『サンダーボルツ*』が大ヒット中のセバスチャン・スタンを主演に、『わたしは最悪。』のレナーテ・レインスヴェ、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のアダム・ピアソンら実力派を共演に迎え、衝撃の異色作を完成させた。
そんな本作の新たな場面写真が解禁されたタイミングに合わせ、この記事では「外見」と「内面」の切っても切り離せない関わりをテーマに、観る者の“アイデンティティを問う”5つの傑作映画をピックアップ。“自分らしさ”とは「外見」からくるものなのか、「内面」から滲み出るものなのか、それとも――? ぜひ『顔を捨てた男』の公開前に併せてチェックしよう。
『顔を捨てた男』
7月11日(金)より全国公開
顔に極端な変形を持つ、俳優志望のエドワード(セバスチャン・スタン)。自分の気持ちを閉じ込めて生きる彼は、ある日、外見を劇的に変える過激な治療を受け、念願の新しい顔を手に入れる。別人として順風満帆な人生を歩み出した矢先、目の前に現れたのは、かつての自分の「顔」にそっくりな男オズワルド(アダム・ピアソン)だった。その出会いによって、彼の運命は想像もつかない方向へと逆転していく――。
このたび解禁された場面写真は、主人公エドワードが辿る「顔」の変化を捉えた3点。エドワードが行う過激な治療についてマスクを使って説明する医者、治療後の自分の顔を鏡で確認するエドワード、そして、外見は変わっているのに不安げな表情を浮かべるエドワードの様子を切り取った場面だ。
外見が変わることで、主人公は幸せになれるのか? という展開だけなら容易に想像できるかもしれないが、本作は、かつての自分の「顔」にそっくりな男が登場するという“ひねり”があるところがポイント。見た目はかつての自分に似ているが、性格は真反対のオズワルドの登場により、もともと卑屈な性格のエドワードは、嫉妬、執着、ないものねだり…といった複雑な感情がないまぜになっていく。シチュエーションは違えども、主人公エドワードの姿に自分の経験を投影する人も多いだろう。運命を変えるためには何が必要なのかを考えさせられる。
重厚感とブラックユーモアが共存する本作は、サンダンス国際映画祭でのワールドプレミアを皮切りに瞬く間に話題となり、第74回 ベルリン国際映画祭最優秀主演俳優賞(銀熊賞)、第82回 ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞(ミュージカル/コメディ)を受賞、第97回アカデミー賞®メイクアップ&ヘアスタイリング賞にもノミネートされるなど世界を席巻した必見作だ。
『顔を捨てた男』は7月11日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
『サブスタンス』全国公開中
(2024年/コラリー・ファルジャ監督)
元トップ人気女優エリザベス(デミ・ムーア)は、年齢と共に容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、新しい再生医療<サブスタンス>に手を出す。接種するや、エリザベスの背中から若く美しい女性スー(マーガレット・クアリー)が現れる。
抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。しかし、ひとつの精神を決められたルールでシェアする存在となったエリザベスとスーは、いつしかいがみ合うようになり……。
若さと美しさに執着したエリザベスを主人公に、ルッキズムとエイジズムをテーマに描いた異色のホラー。デミ・ムーアの名演が、女性の外見に対する根強い風潮を問う。第97回アカデミー賞®メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した話題作。
『エレファント・マン』
(1980年/デヴィッド・リンチ監督)
19世紀末のロンドン。身体的特徴から見世物小屋で働かされていた青年メリックを、外科医のトリーヴスが研究対象として保護。最初は、何も話さず、極度の人間不信だったメリックを周囲は知能が低いと思っていたが、親切なトリーヴス夫妻と過ごすうちに、彼が知的で優しい人物だと分かっていく――。
実在の青年ジョゼフ・メリックの生涯を描いた、鬼才デヴィット・リンチによる不朽の名作。外面だけで内面を判断され差別されるメリックを主人公に、彼を取り巻く人々との交流を通して、人間の内面にある美しさや残酷さを浮かび上がらせる。第53回アカデミー賞で8部門にノミネートされた。
『ミッキー17』
(2025年/ポン・ジュノ監督)
失敗だらけの人生を送ってきた男ミッキーは、何度でも生まれ変われる“夢の仕事”で一発逆転を狙おうと、契約書をよく読まずにサインしてしまう。しかしその内容は、身勝手な権力者たちの命令に従って危険な任務を遂行し、ひたすら死んでは生き返ることを繰り返す過酷なものだった。やがて、ある手違いによりミッキーの前に彼自身のコピーが現れ、奇妙な共同生活が始まるが――。
『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督によるSF作品。全く同じ見た目にも関わらず、性格は異なる“自分の完全コピー”が現れる。主人公は最初こそ拒絶するものの、次第に“異なる自分”を受け入れ手を組むことに。独創的な設定と強烈な現代風刺で人間の、生の実存を問う。
『ザ・ホエール』
(2022年/ダーレン・アロノフスキー監督)
40代のチャーリーはボーイフレンドを亡くして以来、過食と引きこもり生活を続けたせいで極度に健康を損なってしまう。看護師リズの介助を受けながらオンライン授業の講師として生計を立てていたチャーリーは、症状が悪化しても病院へ行くことを拒否し続けていた。やがて死期が近いことを悟った彼は、疎遠になっていた娘エリーに会いに行くが、彼女は学校生活や家庭に多くの問題を抱えていた――。
A24が製作を手掛け、第95回アカデミー賞®︎で主演男優賞(ブレンダン・フレイザー)、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。自己の弱さや脆さを埋めるかのように、272キロの巨体へと変貌を遂げたチャーリーが、痛みを伴いながらも娘や自分自身と対峙し、ラストへと向かっていく姿を描いた傑作。
『ジキル博士とハイド氏』
(1931年/ルーベン・マムーリアン監督)
1886年出版の小説を映画化。舞台は19世紀末のイギリス。人間を善悪の二つに分離する研究をしていたジキル博士は、自身が生み出した薬品を自分に投与。ジキル博士は外見も内面も変化し、自身に潜む悪の要素だけが抽出された怪物ハイド氏となってしまう。善良な紳士だったジキル博士だが、ハイド氏として悪事を働いても元の自分に戻れば罰せられないことに快感を覚えはじめ……。
幾度となく映像化されている有名作だが、『顔を捨てた男』のシンバーグ監督は1931年制作版を、とくに影響を受けた1作として挙げている。