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日本橋『八木長本店』の東京日本橋おでんで、出汁の魅力を再発見

さんたつ

八木長本店の東京日本橋おでん

今回は日本橋にある乾物店の老舗『八木長本店』のおでんを紹介しよう。パック商品ながら出汁にこだわった本格的な味を楽しめる。『八木長本店』といえば言わずと知れた乾物の老舗だ。こちらで販売しているおでんは昆布やかつお節などの出汁、秘伝のレシピなど、乾物屋としてのこだわりが詰まっている。

出汁の魅力を再発見、『八木長本店』の「東京日本橋おでん」

中央区日本橋、多くの老舗が集まるこの地はかつて魚河岸が広がっていた。かまぼこ店も多く営業していたが、現在でははんぺんの『神茂』のみが営業を続けている。鮮魚店もまったく見られなくなったが、乾物店は今も数店が残り続けている。

今回紹介する『八木長本店』は「日本橋三越本店」の向かいに店を構えている。『八木長』のWebサイトによると、元文2年(1737)に伊勢の商人だった初代が日本橋に創業したという。

創業当時は八代将軍徳川吉宗の時代となり、300年近く続いているのはさすが日本橋といったところ。現在は9代目となる西山麻実子さんが代表となっている。

『八木長』といえば、おでんに欠かせない出汁選びの強い味方だ。量販店ではさまざまな種類の出汁をそろえているし、日本橋の本店に行けば各商品の特徴や出汁の取り方を詳しく解説してくれる。

さらに店員の方々は皆フレンドリーに接してくれる。顆粒の出汁など手頃なものがあふれる昨今、一般人は老舗で手に入れようとしたらプロと比べられるんじゃないかと気後れしてしまう。『八木長』ではどんな人でも受け入れてくれる包容力にあふれており、リラックスして買い物ができる。

店内では出汁のほかにもさまざまな商品を販売している。訪れたときはかわいらしい「ひとくちおにぎり」を販売していた。鮭や胡麻、酢飯など5種類があり、店内で味わうこともできる。

おにぎりにはかつお節がたっぷり使われており、具材は細かく刻まれ、お米は出汁で炊いているためどこから食べても最高の味を楽しめる。

今回は梅とハリハリ&胡麻(はりはり漬け、新潟の干し大根漬け)の2種類を購入してみた。かつお節の香りが口いっぱいに広がり、とてもぜいたくな味わいを楽しめる。通常のおかかおにぎりではかつお節醤油を用いるため味がすこし濃く感じることがあるが、こちらのおにぎりはかつお節本来の軽やかで自然な味を楽しめる。

今回の主役である「東京日本橋おでん」もこだわりが詰まっている。代表の西山さんが厳選した出汁の素材と秘伝のレシピで仕上げられており、パック商品ながら満足度の高いものになっている。

通常のおでんは宗田鰹や煮干しなど旨味の強い出汁の素材を用いるが、こちらはかつお節、昆布、椎茸を使用している。そのため口当たりは爽やかでありながら、上品な旨味がしっかり感じられる。おそらくは飲んで楽しめ、さらには冷やしてもおいしいおでんを目指したのだろう。ちなみに日本橋の本店ではカップの冷やしおでんも販売している。

おでん種は大根、玉子、結び昆布、ちくわ、ジャガイモ、丸揚げの6種類となる。「東京日本橋おでん」の名を冠するなら、魚のすじやちくわぶなど東京ならではの種が入っていてもよいと思うが、人気上位の鉄板のおでん種に絞ったのだろう。化学調味料は使用しておらず、素材本来の味を楽しめる。

『八木長』では「東京日本橋おでん」のほかに「国産檸檬をつかった冷たいおでん」という商品を展開している。残念ながら2024年6月時点で販売を停止しているが、さらなる改良を加えている最中だという。ぜひ味わってみたいという方は、青果店でレモンを購入して「東京日本橋おでん」に加えてみるといい。爽やかな柑橘系の香りが食欲をかきたて、さっぱりとした味わいを楽しめる。レモンの搾り汁は味をみながらすこしずつ加えていくとバランスが取れる。

暑い時期におでんを食べるなら、徳島県産の「半田手延べ素麺」を合わせるといいだろう。徳島県半田町のそうめんは腰が強くて麺が太く、しっかりとした食べ応えがある。

通常のそうめんと同じく喉越しもよく、かなりおいしい。『八木長』のオリジナル商品で3束から購入できるので、お店に訪れた際はぜひ購入してほしい。

さて、おでんに話題を戻そう。大根はしっかり中まで味が染み込んでおり、口に含むと汁があふれてくる。大根のほのかな旨味も感じられ、ベストな状態を保っている。

玉子はぷりっとした白身の食感とクリーミーな黄身の味わいが素晴らしい。表面がほのかに褐色に染まっているが、やさしい出汁の調合のおかげでまろやかな味を保っている。

ジャガイモはパック商品では珍しいが、煮崩れせず美しい形状を保っている。ほっこり、むっちりとしたでんぷんのおいしさを堪能しよう。

ちくわはおでんによく使われる牡丹ちくわではなく、豊橋あたりに見られる細いちくわが使用されている。芯までおでん汁が染み込んでおり、からしにもよく合う。

丸揚げはいわゆるプレーンなさつま揚げだ。こちらもちくわと同様に汁がしっかり染みている。

最後は結び昆布だ。すこし太めに巻いてあるので昆布の旨味をじっくり堪能できる。

『八木長本店』の代表である西山さんは、かんぶつマエストロとしてだけでなく、料理研究家の江上栄子さんなどに師事し料理の研鑽を重ねてきた。出汁の素材はもちろん、おでんやおにぎりなどの商品にもその経験や知識を生かし、出汁の魅力を多くの人たちに伝えている。『八木長本店』のおでんを通して、日本食文化の基本となる出汁の魅力を再発見してみてはいかがだろうか。

『八木長本店』の基本情報

『八木長本店』
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-7-2
03-3241-1211
定休日:1月1日~1月2日
営業時間:10:00~18:30

取材・文・撮影=東京おでんだね

東京おでんだね
東京のおでん種・蒲鉾・練り物の魅力を紹介
「おでん種やさんでおでんを買って、家で調理して食べる」文化を盛り上げるべく、都内各地を奔走中。ビジネスでなく趣味でちまちま活動しています。

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