「ゲノムを編集する」って実際何をする?【眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話】
「ゲノムを編集する」って実際何をする?
ねらった遺伝子を切って変える
ゲノムを知って病気や体質に関係する遺伝子がわかれば、理論的には、ゲノムを編集することによって、病気の予防や治療、体質改善につなげることが可能です。植物や動物なども、弱点を補ったり、よりよいものに変えることができます。
編集は、まずゲノムの中の変えたい遺伝子を切り取ることから。ハサミの役目をするDNA切断酵素を細胞に入れ、ねらう遺伝子を見つけ出して、切り取って破壊します。こうすれば、切り取られた遺伝子は働かなくなります。破壊した遺伝子の一部を置き換えたり、良い遺伝子を組み込んだりもできます。こうして、ゲノムを希望する性質に変えていくのです。
医療に応用すると、病気の原因になる遺伝子を修復し、修復した細胞を患者に戻して治療することができます。患者の細胞を使って、難病の原因になる遺伝子を修復することも可能です。ゲノム編集によって実験マウスに特定の病気を発症させ、新しい治療法や副作用の少ない新薬の研究も進んでいます。
ゲノム編集は動植物の品種改良などにも利用され、育てやすい養殖魚、日もちがする野菜や栄養価の高い野菜などがつくられています。産業の分野でも、微生物や植物を使って環境にやさしい燃料をつくる取り組みが始まっています。
ゲノム編集のしくみと応用
ゲノムを直接操作するゲノム編集。ノーベル賞を受賞した「クリスパーCas9(キャスナイン)」という酵素のハサミを使って、ねらった遺伝子を正確に切り取り、遺伝子配列を変える。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子