和也との関係性が深まったからこそ見える千鶴の表情──『彼女、お借りします 第4期』水原千鶴役・雨宮天さんインタビュー|原作で明かされつつある七海麻美の内面を悠木碧さんに演じてもらいたい!
「週刊少年マガジン」で連載中の宮島礼吏先生による漫画『彼女、お借りします』。そのTVアニメ第4期が、いよいよ2025年7月4日(金)よりMBS、TBS、BS-TBSほかにて放送中です。
アニメイトタイムズでは、第4期の放送を記念し、水原千鶴を演じる雨宮天さんへのインタビューを実施しました。
第4期では、第3期で息をひそめているように見えた七海麻美(CV:悠木碧)が再登場。そんな麻美を演じる悠木さんのお芝居が非常に印象に残ったという雨宮さん。収録時の様々なエピソードや麻美というキャラクターの魅力、そして第4期の見どころなどについてたっぷりと語っていただきました!
第3期最終話で雨宮さんが千鶴の心情に入り込むことができたシーンとは!?
──TVアニメ『彼女、お借りします』も第4期が放送となります。現在の心境をお聞かせください。
水原千鶴役・雨宮天さん(以下、雨宮):ずっと定期的に放送され続けて第4期に突入した訳ではなく、少し期間を空けながらのアニメ化でした。それでも第4期をやれるのは、ファンのみなさんの熱量が高いまま持続しているからなんだろうなと。
私自身も『かのかり』ファンのひとりですし、大好きな作品です。『かのかり』はラブコメでありつつ、どんどん人間ドラマを描くシーンが増えていくじゃないですか。そうなると千鶴の色々な表情も見られますし、演じごたえを感じて嬉しく思っています。
──これまでの『かのかり』アニメにおいて、アフレコ現場やイベントなどで印象に残っている思い出を教えてください。
雨宮:八重森みにちゃんのキャスト発表があったスペシャルイベント(「イベントと彼女 -イベカノ- 2nd」)が、実はヒロインたちの声優陣が集まる初めての機会でした。
当日はとても気持ちのいいテンポで進んだことを覚えていて、(東山)奈央さんもりーちゃん(高橋李依さん)もあおさん(悠木碧さん)も芹澤(優)ちゃんも、ワーッと頭を回転させて喋るタイプだからこそ息が合う瞬間があって、その息ピッタリ感が気持ちよかったんです。
あとは第1期の生配信が印象に残っています。コロナ禍の中、リモートで実施されたのですが、その時は私が司会で、the peggiesさんにもご出演いただいて。リモートで生配信をすることも、その状況で司会をするのも初めてでしたのでドキドキでした。ですがみなさんが支えてくださったので、結果的に楽しい配信になったなと思います。
長くやらせていただいている作品ですが、ずっと良いバランス感で和気藹々としている現場で楽しいです。
──前回の第3期では千鶴と和也の関係性が大きく動きました。印象に残っているシーンを教えてください。
雨宮:やっぱり最終話「理想の彼女と彼女-カレカノ-」の、公園で花火をした後に和也の前で思い切り泣くシーンが印象に残っています。
そもそも原作では台詞がほとんどなく、千鶴の表情だけでコマとページが展開されていて、泣いてしまうまでの表情の移り変わりがとても細かく描かれていました。原作ファンの方は印象に残っているシーンだと思ったので、「アニメになったときに、原作ファンの方が思い描いていた千鶴を演じたい」と考えていたんです。
それがある意味プレッシャーになっていたのですが、いざマイク前に立ったらそんなことを気にする間もないくらい千鶴の心情に入り込むことができたので、自分も泣きそうになるくらいでした。自然と生まれた、鼻をすする、涙声になるというようなニュアンスをお芝居として活かして、マイクにのせることができたと思っています。
──そんな第3期を経て、千鶴を演じる際に意識しているポイントはありますか?
雨宮:和也に思いっきり涙を見せたことも関係しているのか、第3期では千鶴と和也の「人としての絆」が深まったのではないかと思っています。第4期の千鶴は和也に対して少し隙を見せるようになっていて、信頼のおける相手への対応になっていると思います。
今までは流されながらも一緒に抱え続けて来たふたりの共通の秘密、それを和也のために守りたいと考えて動くことも増えていくんです。だから、より深まったふたりの信頼関係と人としての好感度は意識して演じていますね。
──そこからの第4期ではスパリゾートハワイアンズでのエピソードが描かれます。七海麻美が再び和也と千鶴に関わりますが、原作漫画を読んだ際の印象・感想はいかがでしたか?
雨宮:もう……「(麻美が)怖ぁ……」って思いました(笑)。第3期ではほとんど息を潜めていた麻美さんが、第4期「ハワイアンズ編」では活躍……と言っていいかはひとまず置いておきますが、ガッツリ登場して和也や千鶴に関わってくるじゃないですか。やっぱり麻美さんが動いて怖くないわけがないですし、第4期は麻美さんのおかげで毎回ハラハラするんです。
休みの日にハワイアンズ編の原作漫画を読んでいたのですが、ページをめくる手が止まりませんでした。ずっと麻美さんの登場を待っていた方もいらっしゃると思いますので、ご期待いただければと思います!
──雨宮さんから見た「七海麻美」のキャラクター像は?
雨宮:まずキャラクターデザインが凄く可愛い! ハワイアンズ編だと髪型を二つ結びにすることが多いのですが、私はそれがとても好きだし、めちゃくちゃ可愛い!って思うのですが……怖い(笑)。そのギャップが癖になっていますね!
千鶴を演じる私からすると「怖い」という印象なのですが、読者のひとりとしては「これから何を起こしてくれるんだろう」「どう面白くしてくれるんだい?」というワクワク感があります。
──第3期を経ての第4期ということで、千鶴だけでなく和也の印象も少し変わったように思います。第4期の和也についてもお聞かせください。
雨宮:第3期以降の和也には、なんだかんだで筋を通す人なんだろうなという印象があります。ただ、第4期はかなりドタバタするので、和也のカッコいい姿は見られないかもしれません(笑)。なので、和也というキャラクター個人よりも、千鶴と和也の近づいた関係性を楽しんでもらえればと!
──和也を演じる堀江瞬さんとのコンビネーションも、期を重ねるごとに良くなっていたりするのでしょうか?
雨宮:千鶴は私自身の自然な声のトーンで演じられるキャラクターですし、性格的にも近いところがあるからすぐ役に入れる部分があるかもしれません。だけど、シーズン毎に時間が空くことが多いので、毎回第1話のアフレコは少しだけ緊張するんです。そんな時に和也の声が聴こえると、私も自然と千鶴になれるんですよね。
ですが最近は、ホリエル(堀江さん)と作品の話をあまりしないんですよね。雑談はもちろんするのですが、役についてはもはや話をする機会がないというか。アフレコがあまり直しもなく、あっという間に終わるのでキャスト間で話をする時間がないくらいスムーズなんです。テストをしてそこから調整して、本番でOKという流れになることが多いんですよね。
──そこまでスムーズなのは驚きですね。
雨宮:第1期の途中からすでにスムーズでした。古賀(一臣)監督が、役者の意図を汲んで任せてくださるからという理由もあると思います。
あと、他の方々も含めてみんなハマり役な気がしています。ホリエル(堀江さん)は「自分と和也は似ていない」とおっしゃるのですが、演じていて無理がないといいますか。麻美さんに関してはハマり役とはちょっと言いづらいですが……(笑)。
──(笑)。ハマり役でなくとも、麻美の魅力はやはり悠木碧さんのお芝居があってこそですよね。
雨宮:やはり一筋縄ではいかない麻美さんには、あおさんのイメージが合うんですよね。あおさんも、本当に楽しそうに演じていらっしゃいました。
他のキャラクターに関しても、これまでのキャリアや得意分野を生かしたキャスティングなのかなと思っています。更科瑠夏ちゃんの天真爛漫な雰囲気も、奈央さんがこれまで演じられてきたキャラクターのイメージに近いものがあって。
──先ほど、雨宮さんと千鶴は「性格的に近い」というお話がありました。やはり共感できるポイントがあるのでしょうか?
雨宮:この仕事を10年以上続けてきましたが、「声優になるぞ!」と思っていた頃の自分とまさに重なるところがあると感じています。あの頃は基本的に誰にも頼れないというような気持ちでいて、夢のためにできることは全てやるという感じでした。
今はもう少し上手に生きることができていると思うのですが、千鶴のひたすら真っ直ぐでとことん不器用な雰囲気はその当時の自分を思い出すところがあります。
──なるほど。
雨宮:他のヒロインたちで考えると、瑠夏ちゃんの「私への好意を態度に表して!」という考え方は共感できるかもしれません。私は身近な人からも愛されることをかなり求めてしまうタイプなのですが、事務所のスタッフさんやマネージャーさん、友達にも「もっと私を好きでいてよ!」という気持ちが強くなっちゃって(笑)。
瑠夏ちゃんに対する和也みたいに塩対応されると冷めてしまうのでそこは違うのですが、わかりやすく行動で示してほしいなって思います!
──きっと好意をちゃんと表に出したほうが、どんな人間関係も円滑に進みますよね。
雨宮:察する文化で生きていける人って、きっと自分に自信のある人だけじゃないかなって思います。愛されている自信がないと「本当は私のことが嫌いなんじゃないかな」とマイナスに考えてしまうといいますか。だから、私は言葉にしてくれる人としか仲良くできないかも……(笑)。
麻美役・悠木碧さんによる「呑まれていく」ようなお芝居とは
──麻美をはじめヒロインたちの個性が非常に強いのが『かのかり』の魅力のひとつかと思います。雨宮さんが千鶴として掛け合って特に楽しいと感じるヒロインというと……?
雨宮:楽しいかというと違うかもしれませんが、麻美さんですね(笑)。第4期では千鶴と麻美さんが掛け合うシーンが増えるのですが、もうずっと怖いんですよ。そんな麻美と接する千鶴の焦りも見えると思います。
第3期の千鶴は自分の家族と向き合ったり、夢に向かって頑張ったりしていたので、焦りや恐怖心を持って誰かと対峙することはありませんでした。だけど第4期では、その分だけ「ハラハラさせられるな……!」と思いながらアフレコをしていたので楽しかったですね。第3期とはかなり違う感情で千鶴を演じていたように感じています。
──PVで「水原に告白する!」と言っている和也ですが、対する千鶴は麻美に迫られ相談できず抱え込んでいるような印象もあります。
雨宮:そうなんですよ。ご家族が同じ場所にいるという状況なので、秘密をひとつも洩らせない。めちゃくちゃ怖いですよ。
──そんな千鶴に、ある意味で圧をかけてくるのが麻美ですが、雨宮さんから見た悠木さんによる第4期の麻美のお芝居はいかがでしたか?
雨宮:先ほどお話しさせていただいたとおり、本当にあおさんが楽しそうに演じられていました(笑)。本番の収録で掛け合っている間はそんなことはないのですが、もう怖すぎて笑ってしまうぐらいで。テストの時、何回笑ってしまったことか……。
第4期では各話のラストシーンの引きが麻美さんで終わることが多いのですが、そこにあおさんが台詞を入れると怖くて、怖くて……。その場にいるキャストを笑わせようとしているのかと思うくらい、テストでは味付けが濃いめでしたね。
──怖いもの見たさでテストカットも一度聞いてみたくなりますね!
雨宮:大丈夫です! 放送される分もめちゃくちゃ怖いので!(笑)
──(笑)。麻美と対峙する時の千鶴はどんなことを意識して演じられていますか?
雨宮:千鶴は感情や相手に伝えたい意思が一貫しているのですが、対する麻美さんは話している最中でも次々と表情が変わっていくんです。さっきまで笑顔で優しく「千鶴さん!」って話しかけてきたかと思いきや、突然低い声になって雰囲気が変わる。
麻美さんのペースに呑まれていくような感覚がありました。お芝居的には「呑まれていく」のが千鶴としては正解なので、あおさんが吞んでくれるだけ私も呑まれて行って……気持ちよさすら感じていました。
あおさんがとにかく怖く麻美さんを演じてくださるので、私が何をしなくとも勝手に焦らされていくんですよ。私が焦りを補完する必要がないくらい怖かったので、その点も楽しんでいただけると思います!
──麻美の「和くん」「千鶴さん」という呼び方から色々なものを想像してしまうというか……。
雨宮:第1期の頃にあおさんのお芝居を見て驚いたのが、「ひとりのキャラクターを演じるのにこんなに色々な声を使っていいんだ」ということでした。最初のイメージからは想像できないような低い声になることもあるけれど、結局はそれが麻美さんにピッタリでキャラクターとしての個性になっていて。
可愛い時の麻美さんって本当に声から可愛いじゃないですか。そんな可愛らしい声も地獄を彷彿とさせる声も、第4期では様々な声が聴けると思います。だから「麻美さんのこんな声が好き!」という方も大満足なのではないかと!(笑)
──たくさん麻美について語っていただいているので、雨宮さんが麻美に共感できるポイントなども伺ってみたいです!
雨宮:麻美さんがどうして、あんなに千鶴と和也に固執してハラハラさせるのかは、アニメではまだ描かれていないんですよね。正直、私も麻美さんの心境や目的を理解しきれてはいないんです。
だけど……この答え方で合っているかはわからないのですが、順風満帆そうに見える人に仄暗い気持ちを抱いてしまうのは、きっと誰にでもあるようなことだから、麻美さんは人間臭いところがあるのかなって。
宮島礼吏先生が「自分の中にある感情をキャラクターに割り振っている」というお話をされていたことがあるんです。麻美さんも宮島先生の中にある一面を具現化しているとのことで、私はそのお話がとても印象に残っています。
アニメを見ていても原作を読んでいても、なんとなく「自分の中にもこういう気持ちがあるかも」と感じることがあるんじゃないかなって。キャラクターたちが身近に感じられるのだって、自分の心の中にもそういう部分があるからなんだろうなとも思います。
──千鶴と和也の関係は、麻美から始まったとも言えると思います。
雨宮:そうなんですよね。だから、本来なら自分から振った相手に固執する必要はないはずなんです。和也がその後誰と何をしていようが麻美さんにはもう関係がないはずですし……だけどラスボス感を漂わせて第4期では大活躍するなんて……!と思います(笑)。
──(笑)。第4期序盤の見どころもぜひお教えください。
雨宮:「第3期を経た千鶴」を感じられるシーンがあります。例えば和也の前でお酒を飲んで酔っ払うシーンがあるのですが、もう隙を見せているじゃないですか。しかも機嫌が良くなって大笑いしますし……第3期までは見られなかった表情だと思います。これは一緒に映画製作をして距離感が縮まったからこそではないかと。
後は、和也とふたりきりになった時に「恋愛をするということ」「人と付き合うということ」のような、千鶴の内面に迫った話をするシーンが出てきます。これも今までの和也との関係性では叶わなかったことですし、第3期までに築いたふたりの絆が第4期にも反映されています。このあたりが序盤の見どころです!
──千鶴と和也、麻美を中心にお話しいただきましたが、他のヒロインの活躍についてもお聞かせください。
雨宮:他のヒロインだと、やっぱり色々な意味で活躍をする瑠夏ちゃんでしょうか。彼女らしく周りを盛り上げてくれるし、それがとっても可愛いんです。第1話から可愛さマシマシできていますし、後半になるといじらしいところも見えてきます。元々彼女を推している方はたくさんいらっしゃると思いますが、この第4期でより好きになると思います!
──やはり雨宮さんは『かのかり』ヒロインの中では千鶴が一番お好きなのでしょうか?
雨宮:あおさんが「千鶴と麻美がふたりセットで好き、ふたりの関係性が好きだ」とおっしゃっていました。「このふたりが大人になって、将来再会したらどうなるんだろう?」と想像しているそうで、その考察を聞いて私も「それ、良い……!」と思ったんですよね(笑)。
今はこんな関係だけど、将来再会したらドラマが起こりそうじゃないですか。あおさんとこの話題は何週にもわたって盛り上がっていました! 常に近い距離で話していることが多いふたりですし、千鶴は何回麻美さんに手を掴まれたのだろうかと思います。基本このふたりが一緒になると修羅場ですから(笑)。
──(笑)。そして、第4期で描かれるであろう範囲以降も原作は続いています。今後のアニメ『かのかり』に期待していることもお聞かせください。
雨宮:原作が完結していないので何期まで必要かはわからないのですが、それこそ第5期、第6期とアニメ『かのかり』が続いていくことです! 宮島先生が「『かのかり』はいつまでも描き続けられる気がする」とおっしゃっていたので、私も先生が描き続ける限り千鶴を演じ続けたいと思っています。それに、原作で明かされつつある麻美さんの内面を、ぜひあおさんに演じてもらいたいという気持ちもあります!
──ありがとうございます。最後に第4期を楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。
雨宮:第4期も絵が綺麗なので、みなさんの好きなヒロインたちは可愛らしく描かれていると思います。そこに安心していただきつつ、和也との関係性が深まったからこそ見える千鶴の可愛らしい表情をはじめ、中盤以降は麻美さんの活躍があって目が離せない展開が続きます。見どころだらけです!
そして和也のご家族がたくさん登場するので、人間ドラマの部分もしっかりと描かれていきます。第3期を経てよりその部分が濃くなっていると思いますので、期待していてください!
【インタビュー・文・撮影:胃の上心臓 編集:西澤駿太郎】