マニアック…「雨の森」を五感で楽しむ方法 雨の日だけの非日常の魅力があった【森に行こう#3】
「北海道は梅雨がない」と言われていましたが
最近は6月頃になると雨の日も増えてきています。
「雨の日は外に出ないで家でのんびりコーヒーでも飲みながら読書がいい」「雨の日にわざわざ外に出たくない!」と思ってる方はたくさんいるかも知れませんが、実は雨の日に森に行くと晴れた日には見れない光景がたくさんあります。
今日はそんなマニアックな「雨の森」の楽しみ方をお伝えします!
連載「森に行こう! ~身近な自然におもしろさが詰まっている~」
「滝野すずらん丘陵公園」の「滝野の森ゾーン」から、森の住人KENTAが、自然の魅力や楽しみ方を伝える連載です。
まず、必要なものは?
まず雨の森を歩くために必要なのは雨具です。
街なかだと傘をさして歩くのが一般的ですが、森を歩くときはやっぱりレインウェアを着るのがオススメ!
晴れた日と違って足元が滑りやすいので、両手が空いてた方が安心です。
お気に入りのアウトドアブランドの性能を満喫しながら歩くのはもちろん楽しいですが、最近は作業着のお店などでも、防水性の高いものや汗を逃がす透湿性の高いものが売られています。
雨具は派手な色も多いので、お気に入りのカラーを探してみましょう!ちなみに筆者のお気に入りは「オレンジ」です!
装備が整ったらいざ雨の森へ!## 雨の日だからこそ、美しさが増すもの
雨の日は太陽が出ていなくて薄暗いんですが、その分、森の色は濃くなります。特に色の濃い花はその美しさが増します!
ちなみに雨の日は虫があまり飛ばないので、花粉を濡らさないように閉じてしまう花があります。滝野の森の春の主役のシラネアオイがまさにそう。雨が降ると花が閉じてしまいます。
でもこれも花の戦略。そしてこのふてくされたような顔?が見れるのは雨の日ならでは。実は雨の日が続くと花は閉じたままなので開花期間が長くなりがちです。
雨が降ったときに見られる特別な花
そして雨が降ったときに見られる特別な花と言えばサンカヨウ。
弱い雨が長時間続くと、花びらが透明になります!
実は白い花は「白」という色がついてるわけではなく、中の空気が反射して白く見えているんです。なので、雨に濡れると中に水がしみ込んで反射しなくなり、透明に見えるんです。
ちなみに滝野の森にはサンカヨウは無いんですが、白い花は同じように透明になることがあります!(公園内のカントリーガーデンにはサンカヨウが咲きます)
雨の力を使う花も
植物の種の飛ばし方は様々で、風や昆虫や鳥の力を借りる花もありますが、森の中には雨の力を使って種を飛ばす花があります。
そのうちの一つがネコノメソウ。
春先に地面を這うように広がって黄色くて小さな花を咲かせますが、花が終わると小さな船のようなものを作りその中に種ができます。
この様子が「猫の目」に見えるので「ネコノメソウ」と呼ばれてます。
ネコノメソウは雨が降るとその振動で船から種がこぼれ落ちて広がっていくんです。
風や鳥だけじゃなく、雨も使うとは、植物たちの生存戦略は個性的ですね。
じ~~~っと眺めていると、雨が当たって種がはじけ飛ぶ瞬間に出会えるかも知れません!
雨の森と言えば、この生きもの!
そして雨の森といえば「カタツムリ」
雨の日の森を歩いているとあちこちからカタツムリが出てきます。
滝野の森で見られるカタツムリは主に3種類。
左からオカモノアラガイ、サッポロマイマイ、エゾマイマイ。
オカモノアラガイはフキなどの葉っぱの上。
サッポロマイマイは天敵の昆虫から逃げるために、木の幹にいます。
一番大きなエゾマイマイは天敵に襲われても殻を振り回して追い払う能力があるので地面にいることが多いです。
街にいるとカタツムリに出会うことはほとんどないと思いますが、雨の森を歩くと探さなくても簡単に見つかります。小さいころに見たカタツムリを見て「懐かしい!」と思えるだけでも雨の森に来る価値ありです!
一番の楽しみは
このように、雨の日は雨の日ならではの光景に出会うことができます。でも、雨の森の1番の楽しみは、雨の森を五感で感じること。
晴れた日と違って、とても静か、と思いきや実は鳥の声が鳴り響いていたり、葉っぱに雨が当たる音を楽しんだり。また、霧がかかって幻想的な風景を楽しめたり、雨ならではの匂いがしたり、葉っぱについた雨の雫が顔に見えたりすることもあります。
このように、雨の森にはみなさんが想像している何倍も楽しめる要素が詰まっています!
ただ、雨の森を楽しむ上で大事なことは「決して無理はしない」ということ。
山の天気は変わりやすく、天気予報を見ていても予報以上に天気が悪くなることもあります。また、雨の日は気を付けていても滑るような場所があったり、霧で視界が悪くなったりすることもあります。
そして危険なのは「雷」です。滝野の森はところどころに避難所となる建物があり、スタッフが常駐しているので比較的安心ですが、山や公園以外の森に行く際は十分気を付けて、雨がひどくなってきたり雷で危険を感じた場合は、無理せずに避難場所を探すか引き返すようにしましょう!
ということで、今回は知られざる「雨の森」の楽しみ方をテーマにお伝えしてきました。
雨が降ることを「天気が悪い」と言ったりしますが、雨も自然の一部。
悪者にしてしまうのはもったいない!
わざわざ雨の日に出かけることで、いつもの森歩き以上の「非日常」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
連載「森に行こう! ~身近な自然におもしろさが詰まっている~」
文:森の住人 KENTA
国営滝野すずらん丘陵公園 自然環境マネージャー。1978年札幌生まれ京都育ち。約6年間のサラリーマン生活を経て、森についての知識・経験ゼロの状態で滝野の森ゾーンの担当になり、様々なイベントの企画や広報、森づくりなどを担当。公園内にヒグマが侵入した際は専門家と一緒に現場の最前線で調査を担当。滝野の森staffXにて監視カメラを使った野生動物たちのリアルな様子などを発信中。
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は記事執筆時(2025年5月)の情報に基づきます。