大人になった“6つ子たち”を描いた21世紀のギャグアニメ「おそ松さん」!7月から第4期がスタート予定!
SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回はメッセージテーマが「21世紀のギャグアニメ」ということで、2025年7月に第4期がスタートすることが発表された『おそ松さん』についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん
藤田監督のこだわりが詰まったリメイク作品
『おそ松さん』はちょうど10年前の2015年にスタートした作品です。原作は『おそ松くん』という赤塚不二夫原作のギャグアニメで、6つ子が出てくるドタバタ作品でしたが、リメイクするにあたって、かなり大胆に変更されました。
6つ子が大人になっていてそれぞれちょっとずつ個性があるんです。さらにテーマカラーも設定されています。『おそ松くん』のときは「顔がそっくりな子供が6人いる」というのがギャグのベースにあったわけですが、そのベースを作り変えちゃったわけです。
キャラクターデザインは、最近だとリメイクされた『うる星やつら』も担当している浅野直之さんが担当。輪郭線を太めに処理するなど、イラスト的なアプローチも取り入れてキャラクターを描いているため、いい感じにかっこよくなっています。
このスタイルのヒントのひとつは、装丁家の祖父江慎さんが漫画『天才バカボン』の装丁をしたときに、輪郭線を少し味のある要素「でこぼこ」を生かしたものにして、きれいに色分けをして塗っていくというグラフィカルな処理をしていたのですが、それをヒントにして『おそ松さん』のキャラクターデザインが出来上がったようです。
初代の監督は『銀魂』の2代目の監督でもある藤田陽一さん。藤田監督が脚本家の松原秀さんを連れてきました。松原さんはかなり異色の経歴で、ハガキ職人から芸人の専門学校に入り、構成作家としてバラエティー番組などの台本を書いていた方です。あるタイミングで縁ができてアニメの脚本を書くようになり、藤田監督と組んでずっと仕事をするようになります。
松原さんはそういう経歴なので、セリフへのこだわりが強く、自分で声に出して台本を読んで、ちゃんと流れができているかを確認していたそうです。おそ松で1回読んでみて、おそ松として間違ってないかを確認したら、次はカラ松で読んでと……6キャラ分通して読むそうです。
さらに藤田監督はテンポを大切にしているため、絵コンテに描く秒数が一般的な描き方に比べて細かいそうです。さらに編集のときに細かく詰めていき、テンポが少しでも悪くならないようにしているというお話をされていました。
ちなみに番組最後にショートのネタを見せるコーナーが入っていることがあるのですが、これは編集でテンポよくしていった結果、放送時間に対し本編が1分短くなった場合、本編を伸ばすのではなく、ショートのネタを差し込むことで本編のテンポ感をキープするというアイデアから生まれたものです。そういうところにも藤田監督の編集へのこだわりが詰まっている作品でした。
ここからは内容の構造の分析になりますが、『おそ松さん』は何が面白かったかというと、『おそ松くん』では名前だけ違って顔は一緒というキャラクターに、個性をつけたところなんです。個性を付けたことで、キャラを生かしたコント回ができるようになりました。
松野家にいる6人のニートという設定だけで展開するのではなく、例えばおそ松が探偵をやっている「なごみ探偵のおそ松」とか、「じょし松さん」といって全員が女子キャラになるものとか、キャラを生かしたコント回などはこうしてうまれて、それが作品の広がりになっています。こういうアプローチは実写ではとても難しいわけですが、アニメの場合は、それが可能になんです。
またニートの6人のキャラクターにも、A面B面がありました。シリアス回のときのリアルっぽい話ができる性格と、奇跡のバカみたいな表面的なキャラ。その二面性を生かしたエピソードも作品に幅をつけていました。
キャラクターに対する切り口が多層構造になっていて、そこを行ったり来たりすることで『おそ松さん』はすごく刺激が強い、面白いアニメになっていました。