女性ファンが山で野宿?! 川合俊一さん選手時代の伝説
ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。今回のゲストは本バレーボール協会会長の川合俊一さん。
川合俊一さん(Part 2)
日本バレーボール協会会長。1963年、新潟県生まれ。中学からバレーボールを始め、大学在学中の1984年にロサンゼルオリンピックで日本代表として出場。1988年のソウルオリンピックでもチームを五輪出場に導き、1989年からは主将として日本バレーボール界を牽引しました。1990年からはビーチバレーボールの普及にも力を入れ、2022年からは日本バレーボール協会の会長を務めています。
出水:川合さんは新潟県の出身ですが、どの辺りですか?
川合:糸魚川っていう、すぐ川合:富山の辺り。そこに8歳までいました。
JK:じゃあ川遊びとか好きだったんじゃない?
川合:浅いところなら。僕、警戒心が強いんで(^^;)ものすごい慎重で、海にも入らない、川にも入らない。
JK:弟さんはどうしてるの?
川合:弟はビーチバレーボール協会の本部長をやってます。
JK:当時はビーチバレーボールの選手でしたよね。私の時代には弟さんモデルで出てるのよ。
出水:カッコいい~! 目元が涼しげ! お二人とも長身ですが、小さいころから身長は高かったんですか?
川合:中学1年の時僕が160。ちょっと大きい方。でもバレーボールやるって決めた時から、うちの親父が「バレーボールは身長が高い方が有利だから」って言って、朝起きたらまず牛乳1リットル飲んで、それから朝食が始まるんです。うちはとんかつ屋なんで、朝からカツカレー大盛り! 1リットル牛乳飲んだ後ですよ!
JK:朝からとんかつ?! そんなに食べるの??
川合:それで食べて、大きめの焼き魚を食べて、「いってきまーす」って言うと「待て」と言われて、残った魚の骨を焼いたのを食べてから学校に行く。
川合:あと寝てる時しか身長は伸びないから、「寝ろ!」 おやつは煮干し、ちりめんじゃこ、しらすぼし。
出水:うわぁ、カルシウムのオンパレード!
川合:「10時から2時の間は成長ホルモンが出るから、この時間は絶対寝なさい」って言われたし。
JK:もうお父様の作品ね! ラジオ聴いてる人はまず煮干し、まず昼寝(^^)
出水:お父様も高かったんですか?
川合:親父は183。母親は164。おじいちゃんが173で、親父が183、それで子どもが2m05。あと10世代先は3mですよ(笑)だから僕の世代で止めとかなきゃいけないから、僕は子どもがいない(^^)
出水:いつごろから本格的にバレーボールの道に進もうと思ったんですか?
川合:スポーツはあんまり好きじゃなくて・・・動くのがいやだったんです。何も動かず頭を使ってやっていくゲームが好きで、中学に将棋・囲碁部があったから入ろうと思ったら、親父が「だめだ、お前は遺伝で身長が大きくなるからスポーツやりなさい」って言われて。僕の入った中学のバレーボール部が強かったんで、入ったんです。大田区で一番強かった! しかも20連覇ぐらいしてて。めちゃめちゃ運がよくて、たまたま近くの中学がバレーボール強くて、たまたまその年いい選手が集まって全国大会の決勝まで行った。高校もたまたまいい先生が揃って、関東大会に初出場したり。
JK:運命ですね!
出水:日本体育大学に進学して、3年生の時に日本代表に選ばれました。
川合:これも本当に運が良かったんです。その年の秋にアジアのオリンピック予選があったんです。それで6月ごろに日本代表を編成する、と。それで日本代表対学生選抜の試合があって、いい成績を収めた学生は代表に入れると。僕は学生選抜の補欠だったんです。活躍できないから日本代表にはなれないなぁと思ってたら、試合中に僕のポジションの人が肩を脱臼しちゃって、僕が途中から出たんですよ。そしたらいい学生が揃ってたから、日本代表に勝っちゃったんですよ!
JK:あら、本当に!
川合:がんばった学生は日本代表に入れるっていう話なのに、勝っちゃった! その中に僕がたまたま入ってて、たまたま日本代表のレギュラーになった。なんでかというと、流れ攻撃という世界中がやってない攻撃をやってたんです。漫画の「ハイキュー!」見てると似たようなのが出てくるんですけど、普通ジャンプって走って行って真上で打つでしょ? そうすると目の前のブロッカーがうっとおしいから、僕は斜めに飛ぶんです。ブロッカーは真上に飛ぶから、目の前に何もない状態で打てる。膝に負担がかかってリスキーなんだけれど、それをアジア予選でガンガンやったら、ほとんど決まったんです。向こうのチームそんなの見たことないから! そこからガーッとバレー界で注目されました。
JK:でもそれって向こうの人にはバレないの?
川合:ものすごい研究されて、次の年には世界中がやるようになりました(笑)
出水:そこからものすごいファンがついて、バレー界を代表するスター選手になりましたが、今こそ語れる当時の伝説はありますか?
川合:富士フィルムっていう会社にいたので、寮が普通にバレてる。寮の電話番号も電話帳に普通に載ってるから(^^) 南足柄っていう山のふもとで、単線の電車とバスに乗って行くようなところですが、多い時だと1000人ぐらい女の子が来てましたね。
JK:そんな帰れないじゃない!
川合:だからみんな野宿ですよ! 周りお墓とかですよ! 山、お墓、バカでかい駐車場! そこに野宿ですよ! コンビニはないです。乾物屋さんがあって、それも6時ぐらいには閉まっちゃうんで・・・朝5時ごろにドアを開けると、女の子たちが50人ぐらいばーっといる。
JK:昔のグループサウンドのファンみたいね。
川合:僕の部屋は1階だったんで、夜に人の気配がするんですよ。カーテンをわっと開けると、20人ぐらい女の子が僕の寝息を聞いてるんですよ。
出水:エーッ!!!!
川合:お互い顔が合うと、こっちもビックリむこうもビックリ(^^;)
JK:うわぁ強烈ね! そこまでファンになるって熱がすごいわね!
川合:昔の試合見たら、今とは全然違うんです。今はみんなで一緒にスティックバルーン叩いたりするじゃないですか。昔は自由に声を出して、一斉に「イケーッッ!」って叫ぶから、迫力が違う!
JK:マサカいっぱいあり過ぎると思うけど、まずひとつは?
川合:まさか、日本バレーボール協会の会長に僕がなるとは・・・! ジュンコさん、「そうそう」ってなんですか!
JK:(笑) でも、今はどう考えてもぴったり(^^) 他にいません。
川合:でも本当にびっくりです。バレーボール界に不祥事があって、会長から全員解雇されて、誰もいなくなったんで、副会長が20人ぐらいに「どんな人が次の会長にいいですか?」って聞いたんです。僕も聞かれた1人だったんですが、結局いろんな人が「河合俊一がいい」って。「いやいや、僕なんか無理ですよ」ってずっと断ってみたんですけど、内情を聞いたら億単位の赤字だし、このままだとバレーやったことがない人が会長になるだろうし、じゃあやるしかないなぁって。内情聞いちゃうと、自分の古巣が堕ちていくなと思って。
JK:そうよね。こうなったら自分の人生かけてやってください! 運命だと思って。バレーボールでここまでやってきたんだから。
川合:若い選手の強化とかね。けっこう2mを越える選手もいるし、すごいジャンプする選手も増えてきたし。日本は身長が低いので、ものすごくジャンプしなきゃいけない。西田選手とか石川君とかものすごいジャンプします。石川君が最高到達点3m50ちょっと。バスケットリングが3m05なんで、あそこから石川君はさらに50㎝ぐらい。
出水:おおおお(@w@)ダンクも余裕ってことですね!!
JK:ネットの高さって?
川合:男子は2m43。石川君だと顔が出ちゃいますね。とくに彼は海外でやってるでしょ? 海外は高さもパワーもあるから、それに対抗するには自分たちで身体を作らなきゃいけない。そういう意味では石川、高橋藍、西田、関、宮内とか主力級がみんなイタリアとかで鍛えて、世界と戦える身体づくりをして帰って来ている。世界と戦っていると何がいいかっていうと、相手がどんな選手か分かる。しょっちゅう戦ってるし、チームメイトだったりもする。
JK:怖くないね!
川合:昔ブラジルにオリビエラっていうひげもじゃの選手がいて、怖くて怖くてしょうがなかったんですよ! そりゃそうですよ、2mで、ひげがモジャモジャで、腕が倍ぐらいで、勝てる気しないじゃないですか! でも今はそういう選手と同じチームでやってるから、「あいつ意外と小心者だよ」とか情報を共有できちゃう! 怖さが昔ほどない(笑)
出水:オリンピック効果で男子も女子もファンがたくさんつきましたね。
川合:そうですね。でも女子は古賀選手が引退してしまったので・・・古賀チームだったんでね。これからの女子で困るのが、大きい選手が減ってる。たぶん大きい選手がバスケットに取られてるんですよ。それと他のスポーツもそうですけど、女子の球技人口が減ってるらしいです。学校の先生に聞いたら、「人口は減ってるけど、ダンスに取られてる」んだそうです。
JK:K-popとかね!
川合:ダンスって2人とか4人とかでやるのもあれば、40人でやるのもあったり。40人だったらほぼほぼ全員レギュラーになれるじゃないですか! バレーは6人しかレギュラーになれないから。そりゃあ僕でもダンス入りますよ!!
出水:これから若い人をバレーボールに引き戻すのも大きな目標ですね。
JK:このオリンピックで取り戻して、次のLAにつなげてください! もう4年しかないから。
川合:いろんなスポンサーの方を回ると、必ず皆さん言うのが「川合さん、長くやってください」って。それまでは2年おきに会長が変わってたから、それだと信用が置けないって。LAはビーチバレーもいいと思いますよ! バリもそうですけど、オリンピックが決まった瞬間に委員会が言うのは「ビーチバレーどこでやる?」 なぜかというとメイン競技だから。めちゃくちゃ人気なんです! だから今回はエッフェル塔。ロンドンの時はバッキンガム宮殿の前だから、観客動員数1位だったんです!
JK:すごいね!
川合:信じらんないでしょ? 日本だとマイナースポーツって見られてますけど。リオの時は大観光地のコパカバーナ・ビーチ! だからLAはサンタモニカ・ビーチじゃないかなと思ってるんです。最高ですよ!
(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)